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僕と魔剣と  作者: Make Only Innocent Fantasy
第4章 調査
10/44

4-1 試練の後

Make Only Innocent Fantasyの三条 海斗です。

今回は少し短いですが、その分次の更新を早めにできたらなと思っています。

それでは、どうぞ!!

「もう大丈夫か?」

「はぃ……」

目が赤くなっているアリシアの頭をなでながら、セレナは微笑む。

確かに歳はセレナの方が年上だが、アリシアとは年が離れた姉妹のようにも見える。

「それで……どうしてあんなに取り乱したんだ?」

「うぅ……」

しまったと、セレナが思ってももう遅い。

アリシアの目には大粒の涙があふれ始めていた。

(参ったな)

先ほどから何度か聞きだそうとしているが、聞くたびにアリシアは同じように涙を流す。

(怖い思いを、思い出してしまっているのだろうか……。これは骨が折れるぞ)

内心ではそう思いつつも、アリシアの世話をするセレナであった。


――― ―――


(やっぱり、回復が早くなってる気がする)

先ほどまで体を動かすたびに激痛が走っていたが、今では問題ない。

(これもレーヴァティンの魔力の影響なのかな……)

『前にも話したが……俺の魔力が少なからず、何らかの影響を与えているのは、間違いないだろう』

(やっぱりそうなのかな)

『まぁ回復力が上がったのならばいいことだろう。これで体力も上がれば……な』

(もとから運動は得意じゃないんだよ)

『言い訳はいい。適性はあるだろうが、ある程度やれは基本的な体力はつく』

(言い訳って……)

『ふん、動けるようになったのなら魔女のところへと向かえ。先ほどの様子……どこかおかしかった』

(おかしかったってどういうこと?)

『そういえば気絶していたな。俺に入れ替わった途端、アリシアが怯えて震えていたのだ』

(なにか心当たりはないの?)

『1つだけあるが……仮説の域を出ない上に、可能性としては限りなく少ない』

(どういう可能性なの?)

『魔剣自身を見たことがあるという可能性だ。だが、それは人間では不可能だ』

(不可能?)

『ああ、だが今はそんなことを気にしている場合ではないだろう』

(そうだった、アリシアのところに行かないと)

レーヴァティンを持つと、僕はドアを開ける。

すると、ドアのすぐ横にいた見張りの騎士に、信じられないほど驚かれた。

そんなに信じられないかなぁ。

とりあえず、騎士たちに事情を説明する。

すると騎士は、二つ返事で了承した。

(監視って言う割には結構自由なんだ)

『王宮内にいれば問題ない、ということだろう』

(監視の目がなくなったわけじゃない……ていうことかな)

『王宮内であればこうして自由に動き回れるのだ。文献を調べるいい機会かもしれないぞ』

(……!)

確かに。

王宮内であればきっと、僕が見たことないような文献があるかもしれない。

その中に、カインを救う手掛かりがあるかもしれない。

そんな期待を胸に、僕はアリシアの元へと向かう。

心なしか、足取りが軽く思えた。


――― ―――


「ふぅ……」

セレナは深いため息を吐く。

彼女の膝の上にはアリシアの頭があり、当のアリシアはすやすやと寝息を立てている。

「お疲れさま……であってる?」

「アストラルか……」

「大変だったみたいだね。レーヴァティンから様子は聞いたけど……ごめんね、手伝えなくて」

「構わないよ。それで、もう体は大丈夫なのか?」

「この通り」

胸に手を当てて、大丈夫なことを見せる。

それをみてセレナは、「そうか」とだけつぶやいた。

(やっぱり疲れてるんだろうな……)

「アリシアは僕が貴賓室まで連れていくから、セレナはすこし休んだら?」

「そうさせてもらおう……すまないな」

「謝るのは僕の方だよ、押し付ける形になっちゃったし……本当にごめん」

「いや、そんなことは……なんだか、謝り合戦になってしまっているな」

「あ、本当だ」

それから二人で笑いあう。

「それじゃあ、アリシアを頼むぞ」

「任せて」

僕はアリシアを起こさないようにおんぶする。

セレナはそれを見届けると、建物の中へと消えていく。

きっと、自分の部屋に帰ったんだろう。

(さてと、貴賓室でアリシアを寝かさないと)

廊下をゆっくりと歩く。

背中からアリシアの寝息が聞こえ、体温が服越しに伝わっていた。

(軽いな)

力のない僕でもそう思えるくらい、アリシアの体は軽かった。

こんな小さな体で……。

廊下に差し込む灯りが、僕らの影を作る。

僕、アリシア、そして……レーヴァティン。

どこか魔剣の影だけが、冷たいと……そう思えた。


――― ―――


「ふぅ」

「それでは、また何かありましたら」

手伝ってくれた騎士に礼を言うと、僕は近くの椅子に座った。

騎士はアリシアを起こさないように、静かに扉を閉めてくれた。

(恐怖……か)

目を閉じて思い浮かべるアリシアの姿。

きっと、セレナがなだめなければならないほど、怯えていたんだろう。

学会で発表をするような彼女が、怯える。

(もしかして、僕らこの部屋にいない方がいいじゃないかなって思うんだけど……)

『目覚めたときに一人という状況だが……書き置きでも残しておけば大丈夫だろう』

(そうだね)

僕は机の上にあった紙に、アリシアに向けて書き残す。

(おはよう、僕は図書室に行ってます。 アストラル……こんなところでいいかな)

書き置きを書き終えると、騎士に行先を告げ、部屋を後にする。

(それにしても……結構すんなり見せてくれるんだなぁ)

僕の勝手な考えでは、「王族以外に見せることはできない!」っていう風に言われるものだと思っていたんだけど……。

『本当に大事な文献は宝物庫のような場所で保管されているだろう。図書室……なんていう誰もが触れることができる場所には置かないはずだ』

(そうなのか……)

『それでもある程度は貴重な文献があるかもしれない。行く価値はあるだろう』

(……そう……だね。行く前から無駄とかわからないし)

可能性はある。

そのわずかな可能性にもすがらないと、カインを助けることはできない。

気がつくと、教えられた場所についていた。

「ここが……」

扉に掘られた紋章が、王宮内であることを再認識させてくれる、

「……よし!」

僕は気合を入れると、その扉を開けた。


――― ―――


アストラルたちが王宮内で調べ物をしているころ。

「はいは~い、御用とあればなんでも」

「調子が抜けきっていないぞ」

軽い口調で話す男に苦言を呈す男。

その男は、アストラルもよく知っている顔だった。

「すみませんね~、この方がいろいろと都合がいいもんで」

「それで、”彼ら”の様子は?」

「無事に王都までたどり着きましたぜ。王宮の中まではさすがに見れませんでしたが」

「順調……というところか」

「道中、呪いの解呪をしたりと、寄り道も多いみたいですがね~」

「急を要する……といえど、まだ猶予はある」

「それで今度のお役目はなんしょう?」

「……」

男の顔が曇る。

それでも軽い口調で話す男は笑顔を絶やさない。

「引き続き、監視を頼む。万が一の時は……」

「そこは私にお任せを。ではでは、仕事に戻ります~」

そう言い残すと、その男は一瞬で消える。

まるで最初からそこにいなかったかのように。

「さて……これからどうなるだろうな」

男は空に向かって、そうつぶやいた。

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