スキル判明したけどこれは
2話
俺達がアレクシア王女に付いて階段を登り、その上長く暗い道を歩かされざっと20分。
そんな長ったらしい移動の中俺はーーー篝火におんぶされていた
くっ、何という羞恥……早川さんと新城の生暖かい視線が心にズキズキくるっ……
何故かと言うと、頻繁に転ぶからである。小さくなった影響で靴のサイズが合わなくなった、無論服もだが。サイズの合わない靴、長いズボンの丈、異常に重く感じるブレザー、そして相性が悪いことに階段なのである。ズボンを脱ぎ捨てるのはアウト、靴を脱ぐのもアウト何故かと言うとズボンを脱ぐのは羞恥心が、靴を脱ぐのは危険があるからだ。それに半裸で裸足の幼女が王様に面会できるはずもない。
そんな中
「俺がおぶろうか?」
と言ってきたのが篝火である。嫌だと言ったが無理やり捕まり乗っけられた。いままで平均的身長をしていた俺は気にすることが無かったが、体格差こえぇ、と心の中で呟いていた。
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「もう出口ですわ、皆さん」
しばらく地下に居たせいで光がとても眩しくーーという事は余りなかった。
でかい城の裏(日陰)っぽいところに出た為、目の安全は保たれた。
「なんで召喚部屋がこんな変なところに作られてんだよ?」
そう発したのは五反田である、お前ここに来てからめっちゃ喋るな。という驚きが先に来た
すると王女は少し困ったようにして
「実はよく分からないのです、私も幼い頃父に訪ねましたが『生まれた時からあった、文献も残っていない』との事で……」
ふぅん、と素っ気なく五反田が返していた、お姫様に随分な態度してるけど大丈夫なのか?
王女様はそのまま城(裏側)の所のドアを開き城内へ入った、俺達もそれに続く。
綺麗に保たれた白い内装、豪勢な照明などの家具に見るからに高そうな壺、王城と言われてすっと理解できるような内装だった。レットカーペットの引かれた廊下を歩き、一際大きな階段を上るとーーー
「ふむ、戻ったかアレクシア、とすると後ろの者達が」
「はい、勇者様です」
王冠をかぶり、白い髭を蓄えた初老の男性、王様が玉座に座っていた。
「良くぞおいでくださいました。私がこの国を治めている。アンドレアと申します」
初老の男性改めーーアンドレア王
その自己紹介だった。
「皆様のお名前を聞かせてもらえるかな?」
そうアンドレア王が問いかけると真っ先に答えたのは新城だった。
「新城正樹です、向こうでは学生でした」
「早川蒼です、同じ学生です」
「篝火浩二です」
「尾白井昴です」
「……五反田興毅」
全員が名前を告げた
「新城殿、早川殿、篝火殿、尾白井殿、五反田殿だな、して尾白井殿はとても幼く見える」
奇遇だな俺もだ、じゃない
「あっ、実は俺も皆と同じでそれに男でしたし、それで呼ばれて起きたこんな感じに」
「何か手違いでもあったのかもしれん、アビルドどうじゃ」
アビルドと呼ばれた男はローブを来た、見た目なら王様よりも年上という感じだ。
「……失敗と言うより、事故かも知れませぬな」
「事故?」
「さよう、本来なら文献によれば一度に召喚できる人数は7人、ですが勇者としての力を付与されるのは4人のみ、となっております」
「分かっておる、してそれが尾白井殿とどう関係がある、尾白井殿が勇者としての力を付与されていないだけならば性別が変わるなど」
「その文献の中で1度だけあったとされる事があります、召喚された者、勇者の力を付与されなかった者の事ですな、その者が獣人になり召喚された例があります」
「そうか、空間の悪戯魔女か……」
「さようです」
あまりついていけてないのだがこれ大丈夫かな
「召喚前不思議な声を聞いた、そう記してありました、尾白井殿と申されたか?思い当たることは」
ある、意識が薄れる中聞こえた合成音声、あれの事だろう
「あります、可哀想とか、あげる、とかそんな声が聞こえました」
アビルドは少しの間顎に手をやり悩む素振りを見せ
「魔女の悪戯に巻き込んでしまったのでしょうな、申し訳ない」
アビルドさんは深くこちらに頭を下げた
「あぁ、いえ悪戯したのは魔女みたいなんでそんな」
そうなんとか頭を上げてもらおうと言葉を見繕っていると
「勇者だの、魔女だのの前に俺らが呼ばれた理由聞かせてくれねぇか?」
そう声を上げたのはまたもや五反田
「それもうじゃ、尾白井殿には悪いが」
「いえ、大丈夫です」
「それでは、皆様を呼んだ理由を語ろう、目的は魔王討伐、その為に勇者様を呼んだのじゃ」
「へぇ、そんな命を掛けたことただの学生数人呼び出してやらせようってのか?」
「その事については申し訳なく思う、じゃが異世界から召喚された者は勇者としての力を持ち召喚される、その力は強大で過去魔王を討伐した者も召喚された勇者であったと記されておる」
「強大な力?そんなもの貰ったかなんて分からないじゃない?どう確認するのよ」
遂にここまで空気だった早川さんが声を上げた。キッと、こっちを睨んだ、心読めるのかよ…
「これは勇者だけ、という訳ではなくこの世界全ての人に共通するのじゃが、生まれて15程歳を重ねると、ふと身に覚えのない差出人の無い手紙が枕元に置かれるのじゃ、その手紙の中には自身の持つ能力、先代勇者はスキルと読んでいたらしいが、それの記されたカードが入っているのじゃ」
その説明に五反田が横槍を入れる
「それが俺らにどう関係が?」
「召喚された勇者は皆、それを持ってここに来るのじゃ、無論自分で持った訳ではあるまい、皆のいた世界とこの世界を繋ぐ召喚魔法、その門を通る時に勝手に持たされるとの事じゃ、服の中を探してみてくれぃ」
五反田はしぶしぶ、篝火達は割と楽しげに探し始めた、ん?俺か勇者の能力無いなら貰ってないんじゃないか?
と思いつつ体は正直、ポケットをパンパンと叩いてみたり色々やってみた。
あった、俺だけスキルも無くハブられたら悲しいもんね、悪戯された挙句スキル無かったら泣いてた。
深く濃い深海のような色をした便箋だった。
「見つかったかの?勇者であるなら聖剣士、聖拳士、聖弓士、聖女、のいずれがある筈じゃ」
そしてまとめると
新城 聖剣士
早川さん 聖女
篝火 聖弓士
五反田 聖剣士
だそうだ、俺が勇者という線が完全になくなったわけだが。
取り敢えず自分のスキルを確認して出来ることをやろうか。
尾白井昴
能力 熱地適応
わお使えなさそう、どうしよ
どんな能力だよ
そんな思いに反応したように、能力名の下に詳細が浮かび上がる
尾白井昴
能力 熱地適応
熱地による被害無効、熱地での能力向上
あーつまりあまりの暑さでぶっ倒れることがないってこと?しかも能力向上についても熱地限定とか使い物にならん、どうしよう。
軽くしょぼくれていると
「ん、尾白井どうした」
「篝火か…うん、なんだスキルがゴミ分かるね?」
「あ、うん」
気まずそうな顔をしているちょっと申し訳なかったか。
王様がコホンと咳払いをし
「魔王軍に動きがあり、軍備を整えているそうじゃ、長く見積もって2年、それまでに攻めてくる、という見立てじゃ、まず一年の間この城で基礎的な戦闘技能を学んで頂く、嫌でなければ尾白井殿もな?」
全員異論もないようで、それに賛同した。五反田あたり俺はやらねぇとか言ってどっか行きそうなのにな。