#6 脱兎 (531字)
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そうと決まれば1も2もなく脱出だ脱出!
俺はがらんと空いた外壁の大穴へと駆け出した。
が、2秒後懐かしい感触と対面する事になる。
それはムニュッ。ではなくゴンッ!だった。
いや、ムニュッとかなら良かったんだけど、ホント。
まあ、俺とオッサンしかいないこの空間においてラッキースケベが発生する余地はなく、発生したらそれはそれでおぞましいが、その想像の続きはやめておこう。
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
俺は壁があった辺りの位置で静止し、変顔を無人の校庭にさらしていた。
最初、なにが起こったのかまるで分からなかったが、なんとなく察した。
それはまるで先程の学校の玄関口のガラスの感触だったからだ。
そしてパントマイムのようにぺたぺたと触り、確信した。
・・もし校庭側に人がいて俺を見たら、さぞ優秀なパントマイマーに見えただろう。
何せそこには見えざる壁が確かに存在しているからだ。
ど、どうなってんだ・・・。
ダッ!
うろたえるまもなくおっさんが突撃してくる。
例の青陵高校前と書かれたバス停を振り回しながら。
もう嫌だ・・・。
そう言いつつも、しゃにむにになって避ける。
しとどに顔をうった俺に対して、当然だがこれ好機とオッサンは襲い掛かってくる。
それを必死にかわしてベッドの方に逃げ込む。