#10 暗渡
ガシャン!
なんとか気絶してくれた大男に後ろ手の状態で海老名先生謹製の手錠をかける。
どこで役に立つか分からないものだ。
鍵の在り処は知らないが今はそんなことはどうでもいい。
ふうっ。
・・・助かった。
気絶しているとはいえ目の前にまだ大男がいるせいか先程のような安堵はまだない。
横にも大男であるこのデカブツや長物であるバス停はこの狭いロッカールームではむしろ不利という読みが上手いことハマッてくれた。
・・・まあ狭いといっても相撲取りじみた体格のコイツでない限り手狭だが問題なく使用できるロッカールームですよ。ハイ。
視覚を奪えたのも良かった。
狙いをつけられない状態なら攻撃範囲が広く、当たりやすいように横に振り回すであろう事は容易に想像できた。
手狭なこの部屋でそれをやれば必ず引っ掛かって隙だらけになるだろう。
そして現にそうなった。
それにしても不思議だ。
保健室の前にここに来た時には消火器なんてなかった。
あの巨体なら不利だろうと狭いここにとっさに逃げ込んだが消火器があったのは僥倖と言う他ない。
よしっ!
考えても仕方がない。
あるものはあるのだ。
まして結構役に立つ武器になる便利な代物だ。
文句などあろうはずもない。
そんな事を思いながら奥にあるもう1本を取りに歩を進めようとしたその時。
ガリンッ。
海老名先生の手錠が引きちぎられた!!!
デカブツが意識を取り戻したのだ!!
そして間髪いれずに覆いかぶさるように襲ってくる!!!
俺はと言うと背を向けているからかまだこの事態に気付いていない・・。
絶体絶命どうなる俺?!!!
ダッ
「ミリキィーック!!!!!!!!!!」
ガンッ!!!
背を向けていた俺は知る由もないが、飛び膝蹴りがまたしてもデカブツのAGOにヒットし蹴りを入れられたデカブツは吹っ飛んだ。
2秒後音にびっくりした俺はギョッとして振り返るのだが、
そこには千原ミリが立っていた。