夜は訪れる
まだ夜心要素ない。
「今日こそ!心ちゃんの霊を祓います!!」
「待つのだ!逃げちゃダメなのだ!!」
ああ、いつもこうだ。
少し私がこっちの私に変わるとあの二人がお祓いにやってくる。
それから逃げ回るのもいつものこと。
別に祓われたところで私が消える訳でもないがお札で叩かれるのも鬱陶しい。
…ただの人間が悪魔に勝てる訳もないのに。
不毛だ。とても不毛だ。
そんなことを考えているうちにアパートの外まで来てしまった。まだ冬だ。流石に寒い。
まぁでもここまでは追ってこないだろうし大丈夫か。
「見つけました!心ちゃんを返してください!」
…と思ったらこうだ。あいつら元気だな。
「さぁ!大人しくしているのだ、今すぐ祓う!」
仕方ない。ここはいつもの私に戻っておこう。
…私も、私には変わりないのに。
そんな思いが一瞬脳裏を掠めるが今更だ。もう慣れた。
「…初花ちゃん、佐保ちゃん。落ち着こう。もういいよ。大丈夫だから!」
笑って二人を宥める。このパターンは割と多い。
「心ちゃん…戻ったの?」
「結局今日も祓えなかったのだ…。」
私は、私を祓ってもらっては困る。
いくら二人でも、例え幼馴染みの彼女でも私は私を変える気は無いのだ。
___だって、あの時の様な思いはしたくない。
思わず昔を思い出してしまいそうになって慌てて首を振る。思い出したくない。今が楽しいから余計だ。
しかしそう思っていても過ぎってしまう情景がある。
「心ちゃん、それじゃあ戻りましょう。」
「寒いのだ…。帰ってお茶でも飲むのだ!」
二人にそう言われたが私は頭を冷やすのに少しだけここに残っていると伝えた。
二人がアパートに戻ったのを見送って、私の意識は切り替えられる。
「…私が私を求めたんだ。今更消えてなんかやれない。」
『心は完璧。だから悲しい。優しいだけ、欠点もない。そんな人私は求めてない!』
『心はみんなに優しいから。私を見てくれない。だったら私は私の方法で心を縛ってあげる…!』
"私"にとってはあれは良かった事なのかもしれない。だってそのおかげで私は生まれた。
でも、本当の私は______?
「…悪意、ねぇ…」
私は、心の中の悪意の固まりだ。
私は欠落を望み、今の私になった。
後悔なんてしていない、させない。
___だから、あの二人の私を祓おうとする行動は正しいのだろう。
だって、悪いものはいらないのだろうし。
でも、でも、
"私"の存在を否定されているのだ。
…なんて。
「くっだらねぇな…人間は…」
「やぁ、こんにちは?」




