第16話「俺氏、またまた弟子入りするの巻」
アンリも魔法の修行、、、と言うか、お絵描きがしたかったのだろう、兎に角修行を二人でする事になった。
もう何十枚もスケッチして気付いたのだが、進歩しているのかどうか良く分からなくなってきた。
量より質、というのは判ってはいるのだが、如何せんルーティンワークになっている感が否めない。
横に座るアンリの絵を見てみると案の定、脱線して訳が判らなくなっている。
剣や鎧、、、何本もの剣が刺さって血を吹きまくっている何かの魔物の絵を、11歳の画力で力強く描いている、、、、物騒だな。
気を取り直し、また描き始めると、「出来た!」と元気良く誇り気に自慢に見せびらかしてきた、、、、、何故、そんな画力で勝ち誇ってくるのだろうか?
「お~、良く描けてるね~。」
「ニシシシシ!どうじゃ?上手いじゃろ?」
「うんうん、これ鎧?良く描けてるし剣も強そうだね。それにしても、このやたら剣が刺さってる魔物、すげえ血が出てるけど。これなんて魔物?」
「爺ちゃん!」
ジル爺さんかよ!やめてやれよ!何か恨みでもあるの?
「そ、そっかー。爺ちゃんかー、、、、、爺ちゃん好き?」
「好きだぞ?爺ちゃんも好きだけど、婆ちゃんも好きだぞ!今度は婆ちゃん描く!」
11歳児の歪な愛を垣間見た僕は、また気を取り直して続きを描く。
そんなこんなで修行を続けていると、大きな篭を背負ってアザントさん達が帰ってきた。
あれ?二人で狩りでも行ってきたのかな?
「ふ~重かったのう。腰にくるわい。」
「じゃから魔法で運べば良かったんじゃ。重すぎて腰が抜けそうになったわい。」
「魔法に頼ってばかりおると鈍ってしまうからの。流一、済まぬがこれを倉庫に入れておいておくれ。」
荷物を運ぼうとして篭に近づくと何かの肉が大量に入っていた。
熊でも狩ってきたのだろうか?と考えていると、昨日アンリが狩ってきた魔物の事を思い出し、狩りでは無く魔物を解体していた事に気付く。
倉庫に肉を運び込もうと中に入ると、部屋の中はちょっと寒い位に冷えていて、良く見ると真ん中に柱状態になった氷が天井まで聳えていた。
まるで冷蔵庫の中みたいだなと、思っていたら本当に冷蔵庫だった。
また修行を再開しようとペンを持つと、別の修行をしようとアザントさんが提案してきた。
「絵を描いてばかりじゃと飽きてくるじゃろう?折角じゃから、ジルに修行を就けてもらいなさい。こう見えてもジルは長年冒険者をしておったベテランの人間じゃ。クラスは確か、、、、Bじゃったよな?」
「まあな、、、、、じゃが限りなくAに近いBクラスじゃ。」
「、、、、要するにBじゃろ?」
「、、、、、、Bじゃ。」
━━冒険者
冒険者とは、国が管理するギルドと云う一種の職業案内所みたいな所に所属するハンターや傭兵等の俗称で、主に採取や護衛、討伐等といった荒事を生業とした職業である。
冒険者は数種のランクに別れ分類される。
S・・・・勇者クラス 最低でも3ヶ国以上に認められた冒険者の枠を超えたクラス。
3A・・・・英雄クラス 自身が所属するギルドのマスターと国に認められた冒険者の最上位クラス
2A・・・・達人クラス 自身が所属するギルドマスターと他のギルドマスターに認められたクラス
A・・・・プロフェッショナルクラス B以上の3人の冒険者に推薦され、自身が所属するギルドマスターに認められたクラス
B・・・・ベテランクラス 自身が所属するギルドの職員に推薦され、サブマスターに認められたクラス
C・・・・一人前クラス 自身が所属するギルドから指定された依頼を5つ以上の達成が条件のクラス
D・・・・一般クラス 一定数の魔物を討伐するか、自身が所属するギルド職員に実力を認められたクラス
E・・・・新米クラス ぺーぺーか、職員に陰でダメ夫呼ばわりされるクラス
F・・・・非公式クラス ギルドカードにFの文字を記載される事は無いが、「お前如きが夢見てんじゃねーよ現実を見ろ!現実を!」と知らないオッサンに罵られるクラス
アザントさん曰く、冒険者ギルド以外にも非合法の暗殺者ギルドや情報屋ギルドと呼ばれる俗に云う闇ギルド等が存在するらしい。
ゲームやラノベでもお馴染の錬金術師のギルドや魔法使いのギルドいったものは存在せず、軍事力に繋がる為、秘密結社や非合法での地下に存在する闇組織以外では国が管理する魔法省と云う枠内で、魔法や魔術・錬金術等は国に拠って管理されているとの事。
とまあ、そういう言う事で自称、限り無くAに近いBクラス冒険者であったジル爺さんに弟子入りする事になった。
「オナシャス!」
「ひゃっひゃ!まあ気張らんでも良い!、、、とは言っても2週間しか無いしの、、、、実戦形式で体捌きでも教えるかいの。」
実戦形式ですか、、、、出来れば痛く無い方方向でお願いしたいです。
剣を鞘に入れたままにしろと言われ、怪我を配慮しているのかと思いきや「鞘に入れたままの方が重くて鍛えられるぞ」と、何とも優しい心根の思い遣り溢れるジル爺さんと相対する。
ジル爺さんは所謂、半身の構えで、何か「出来る男みたいだろ?」みたいなドヤ顔をしているのでちょっとイラっとした。
「いつでも良えぞ」と言われ、早速大きく踏み込み、剣道の様に上段から頭頂部に向かって剣を振り下ろす。
ジル爺さんは半身の構えのまま横に避け、笑い乍ら僕を挑発する。
「ひゃっひゃ!そんな剣速では肉も切れまいて、もっと当てる気で来んと話にならんぞい?」
こんな大振りじゃ駄目って事か、、、、じゃあ、これならどうだ。
上段から中断に構え直し、胸部分に向かって突きを出す。
これも避けられるが計算の内、そのまま腕を引き独楽の様に体をひねって胴を狙う。
ちょっと予想外だったのか「ひょっ?」と言いつつ、あっさりと躱された。
くそー、ジジイの癖に素早い。
そのまま振り返り、今度は示現流の様に八相の構えに構え直し、そのまま踏み込んで袈裟切りから逆袈裟へと振り上げるが手首が弱いのか剣筋が逸れた、、、、まあそれとは関係無く、当たらないんだけどね。
さっきから示現流だ何だと言っているが僕は全くの素人、魔物には有る程度通用するかも知れないが、ジル爺さんの様なその道のプロには当然当たらない。
小出ししたり、フェイントを掛けるしか無いのだが、思ったよりフェイントって難しい。
闘いの最中にサッカー等の様な目でフェイントを入れるなんてバカの極みだし、剣を振っている途中で止めて振り直すのは剣が重く、想像以上に手首に負担を掛けるのだ。
要するに、色んな意味で未熟なのだ。
その後も何振りしたのか判らないが、20回位で既に肩で息をする様になって汗が止め処なく流れる。
相手を追いかけ乍ら剣を振り回す作業は思いの外体力を消耗する。
剣の重さも最初は2キロ位に感じてたのが最早、5キロはあるんじゃないか?と思う位重く感じる。
だが、何かテンションが上がってきた。
余りにも当たら無さ過ぎて逆に笑えてくる。
「ハアハア、、、っらー!」
柄にも無く気合いを入れ、その後も何回も切り掛かるのだが、矢張り当たる事は無い。
剣筋にスピードも無くなり、最早ヘロヘロだ。
ジル爺さんは僕の体力を見切ったのか、攻撃を躱したと同時に手首を弾かれ、その衝撃で剣を手放してしまった。
剣が弾かれて緊張の糸が切れて気力が萎えた。
立ったまま膝に手を置き俯いて息を整える。
クソッ!やっぱ俺って、あんまり体力無いなあ、何か部活やってりゃ良かった。
「ひやっひゃっひゃ!もう終わりか?だらしないのう。最近の若者は体力無いのう、アンリの方がまだ体力あるぞ?」
言いたい放題だな、、、、そう言われても仕方ないけど。
それにしても体力付けないとな、、、でもかと言って一人で森の中を走り回る訳にはいかないし、、、狩りを頑張るしか無いか。
後は筋トレとか素振りとかか?ハア~、あんまり鍛えるの好きじゃ無いんだけど、、、まあ、頑張るしか無いか。
「これからは朝と晩1回ずつ稽古をつけてやろう。何時でも言って良いぞ?」
「ハア、ハア、ハア、、、はい、宜しくお願いします。」
僕は、強く成れるだろうか?アザントさんとジル爺さんを見ていると遥か高い頂きに見える。
現在の僕は11歳児よりも弱い。
イヤ、"強く成る"だったな、、、、また弱気になってた。
昼食はアンリが狩ってきたジャイアント・ガウソと野菜のスパイシー炒めとナンと野菜スープを食べた。
ジャイアント・ガウソと野菜のスパイシー炒めは肉がちょっと硬かったが、程良い辛味と酸味に加え、食欲を刺激する香りが合わさって美味しかった。
それにしても、炊きたてのご飯が欲しくなる。
ところが何と、アザントさん立ちに聞いてみたところ、お米はちゃんとあるらしい、、、、何故出さないの?と思ったのだが、炊飯器が無いので手間が掛かるご飯は炊くのが邪魔臭かったらしい。
だから、これからは僕がご飯を炊く係となった。
他にもちゃんと味噌や醤油もあるらしく、和食を食べる事に関して何も心配する事は無いだろう。
だがしかし、アザントさんは和食を食べた事は有るが、ちゃんとした和食を作った事は無いらしく、僕に至っては料理自体した事が無かった、、、、ゆとり舐めんな、、、、関係無いか。
そうして、昼食を終えて午後からは4人(アンリが乗り気になっている)で一緒に修行を兼ねた食料採取をする事になった。
「早く早く、今度はもっと大きい獲物を狩るぞー!」
こうして老人2人と幼女と僕、4人組の珍パーティを組んでの狩りが始まった。




