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STRONG ALONE  作者: 坂江快斗
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SA 1-7

私が3班陣地に戻ったときには、3人とも怪我はなく意識を取り戻し私と目が合うなり

反省といった表情をしていた。気にすることは無いのにと思いながら陣地を見渡す。激しく争った形跡はなかった。私は、見事に頭を撃ち抜かれた王様を拾い上げ溜息をつく。ここからどう足掻こうと最下位決定は覆らない事実。でも決して彼女たちが悪いなんてことはない。

美鳥蓮・・・。彼はきっと何の躊躇いもなく引き金を引いたのだろう。畑野さんの腹部には青黒い痣が出来ていて、見るだけで痛みが走る。私が瑛梨奈に受けたものとはまるで違う悔しさのにじむ痛みだ。一応応急処置だけ済ませて私は、トランシーバーで連絡を取り合っていた中川さんに詳しい話を聞くことにした。


中川さんによると、私と阿刈君が陣地を飛び出して行ったあと発信機に反応があり、厳戒態勢を取っていたという。


どんよりとした空気漂う中、私たち3班は後片付けをし始める。今回は、仕方がない。というか、戦場ではこうなることもあるのだ。手早く荷物をまとめ私たちは陣地を出る。


とにかく、私はイラついていた。自分の不甲斐なさもあるが美鳥蓮にもその矛先が向いている。

今日は本当にうまくいかないことばかりだったと後悔しながら歩き出した。

途端に気配を感じる。出来れば出会いたくない男がそこに居た。


「やぁ、二見班。お疲れ様。実に手ごたえのない戦闘だったが、これも経験だよ。怪我をさせたのは謝ろう。だがしかし、これも戦場ではよくあることだ。ということで二見、お前の銃を・・・」


私は、彼が最後まで言い終わる前に歩き出す。このまま話をしても意味がない。私たちは、授業が終わり次第学校までマラソンをしないといけないのだ。少しでも体力を温存したい。そう思い、私は美鳥蓮の横を通り過ぎる。

不意に、右手首をつかまれる。痛みと共に怒りも沸いてくる。離せと言わんばかりに腕を振りほどくのだが彼はしつこい。根負けしたのは私の方だった。


「何よ!こっちはものすごくイライラしてんの。敗者の遠吠えってやつよ!いいから離して」

「負け犬の遠吠え、だろう?銃を渡してくれればそれでいい。」

「つくづく癇に障る言い方しかしないわね。絶対渡さないから」


数秒睨み合ったのち、美鳥は意外とすんなり手を離してくれた。そしてふっと鼻で笑って私たちに背中を向けて歩き出した。


「ま、銃は3挺手に入った。怪我しないようにマラソン頑張れよ」


彼の背中が遠くなっていくのをを見届けて私は唇を噛みしめる。なんとも屈辱的だ。私と阿刈君があの時、5班を制圧しておけば・・・。

兎にも角にも、いつまでもくよくよしていたって意味がない。

敗北を認めることも大切なのだろう。戦場では「死」を意味するが、それを学ぶ事、そして繰り返してはいけないということ。彼の言葉は癪だが「いい経験」とやらになったと思うべきか。

マラソンの事も頭に過っているが私たち3班は杉田先生の居る第1班の陣地へと歩く。


*****


現在の戦況


第1班・・・依然、陣地に陣取り鉄壁を崩していない様子。

第2班・・・第5班を制圧。第4班制圧に向かっている模様。

第3班・・・第5班とわずかな差で最下位。阿刈、局部を負傷。

第4班・・・第3班を美鳥の単独にて制圧。こちらも第2班制圧に動いている。

第5班・・・第2班により制圧。運よく最下位を免れるも真城以外の生徒が名誉(?)の負傷。


*****


「一度合流しよう、五堂」


俺がトランシーバーに連絡をしても応答はない。電波の送受信もされていないようだ。

ということは、壊れたか、壊したか…だな。ま、後者だろうけど。

第5班制圧の後、俺は竹原に五堂を探して合流すること、笹野には陣地に戻り守りを固めることの二つを指示し単身、第4班の陣地へと向かう。さっきの放送で美鳥蓮が単独行動をしているという情報は掴んだ。相当に用心深い男だ。恐らく陣地の守りも固いだろう。他の4人を置いているはず。だが、こっちにも秘策はある。ひとつは五堂のハッキングにより俺の居所を伝える発信機は機能していない為、相手には居場所がばれない。もう一つは、美鳥の悪い癖だ。あいつはこういう団体戦の時にまず自分の仲間から弾丸を取り上げる。一発ずつだけ残して。あとは全て自分の物とする。俺が前回のチームマッチで同じことをされたし、確か五堂もやられたと言っていた。(物凄く怒っていた)

それなりに美鳥の戦闘スタイルも分かっているつもりだ。警視局長の息子であるが故のプライドが「敗北」という「死」を許すことは無いだろう。美鳥がチームマッチに置いて2位などに甘んじたことは一切なかった。そして今回も当然1位を狙うだろうが、そうはさせない。それに今回は杉田先生という絶対的守護神もいる。奴にとっても今回ばかりは手強い相手だろう。

俺は残り時間と残り弾数をビル陰で確認し、第4班の陣地である病院を模した建物の中に侵入していく。


中はひんやりとした空気が充満し、病院の雰囲気を出すためか薬品の匂いを感じた。あまり好きな匂いではない。日が高くなってきている為、院内は影を作っている部分も多く薄暗い。俺の足音がどれだけ注意しても大きく音を立ててしまう。俺は靴を脱いだ。銃を構えながら発信機で人の位置を確認。目標の位置は最上階、つまりは5階。当然階段で行かなければならない。

目標を囲むように配置されている4人、やはり守りだけは固そうだ。

意を決して階段へと差しかかろうとした、その時。


!!!!


それは唐突に、突然に、俺の右肩を直撃する。

続いて、2発。それはどうにか転げながら回避し、立ち上がると俺は前を向く。そこに居たのは単独行動をしていたはずの美鳥蓮だった。


「おや、こんな所で会うとは、七瀬君」

「お前・・・っ、なんで!?」


俺の言葉を遮るように今度は左足にもう一発。対面していてもまさか撃ってくると思っていなかった俺はその場に跪く。


「たまには戦法を変えてみたんだけど、どうだろうか?」

「・・・さすがだな・・・」


必死の強がりだったが痛みによる脂汗が止まらない。さすがに距離が近すぎた。

美鳥は俺から銃を奪うと興味が無くなったようで、出口の方へ向かう。


「おい…、どうして、発信機に映らなかった・・・?」

美鳥は俺の問いかけにやれやれと言った表情を俺に向け、見下しながら答えた。


「五堂のようなやり方ではないが、俺も少しはいじれるんでね。彼女のセリフを借りるなら『使えるものは使わないと』だろ?それにネタバラしをすると上に居るのは2人だけさ。他の2人は1班殲滅に向かわせたが、まあ期待はしていない。発信機だけを置いておけば誰しも錯覚するだろう?」


こいつ・・・、トランシーバーの会話までハッキングしている…っ!

全員の動きも、全員の行動原理も把握してるって事かよ…。


「前回だったか、前々回だったか、五堂に裏切られて俺の発信機がイカれたことがあったからな。それで思いついた。これも戦術だよ」


確かにそうだ。戦場では如何なる手段も問わない。

それは生き残る為に必要な事。美鳥はそれを淡々と実行しているだけなんだ。

そして俺はというと、『五堂以外にそんなことする奴はいないだろう』という絵にかいたような油断と、固定観念でまんまと後ろを取られ、2発も食らった。その上、銃も奪われた。完全なる敗北だった。

俺は、その場で動けず敗北を認めることしかできない。美鳥は俺の姿を空虚に見つめた後踵を返し歩き出した、かと思えば、再び戻ってきた。


「なあ、このチームマッチ、もう少しドラマ性があってもいいと思わないかい?」

その顔は、悪意…とまではいかないけど何か良くないことを企んでいる風でもあった。

美鳥はトランシーバーで上の階にいる仲間の一人を呼び出しつつ、医療室から点滴などに使う長めのチューブを持ってくるとそれを俺の手に結び、余った部分をやってきた彼に持たせた。


「捕虜ってことで」

ようやくその顔が満面の笑顔になる。

それは、とてもとても悪意に満ちていた。


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