SA 1-3
ガチャリ
そのスライド音と同時に俺は両手を耳の横まで上げる。
「抵抗は辞めておとなしく陣地を明け渡しなさい。真城豪太!!」
・・・そう。今俺は窮地に立たされている。
~数分前~
俺たち第5班は奇跡的な確率で男だけが揃った。知力は無いけど体力、戦闘力ならどのチームにも負けないだろう。だがしかし、このチームにはバカしかいなかった。
「なぁ、これはやっぱり1班狙うしかねえだろ。」
「1班以外ありえねぇ」
「杉ちゃん先生とのデート、これ一択に限る」
「杉ちゃんの水着姿、ハアハア」
予想はしていたが、最悪だ・・・。別にこいつらとの仲が悪いとかそんなことは無い。俺はクラスに嫌いな奴はいない。今、俺が困っているのは作戦が立てられないということ。なんせ彼らの目的は優勝ではなく1班撃破による先生とのデート権だからだ。せめて1人だけでも女子がいたら・・・。チーム運の悪さに泣きそうな俺に隅田が提案を持ちかけてきた。
「豪太、お前はどうする?陣地を捨てて俺たちと1班撃破に向かわないか?」
生憎、俺は先生とのデートに興味がなかったのでその提案はパスだった。さらに言えば俺は優勝したかった。
~回想~
昨日俺は、購買部で今回の優勝賞品である『極!カレーパン』が一つだけ余っているのを発見した。いつもは販売と同時に消え去るパンだ。恐らく今日は何かの陰に隠れていたのだろう。この千載一遇のチャンスを逃すまいと俺は、すぐさま財布を取り出し、
「おばちゃん!、この『極!カレーパン』1個くれ!」
と、お願いする。おばちゃんは、『はいよ、500円だよ』といって俺からお金を受け取るため手を差し伸べる。まるでマリア様のご加護のようだ。そして、俺は財布から500円を取り出そうとした。
そこに入っていたのは、372円と、近所のスーパーでもらった福引券1枚だった。ウソだろ!?今朝飲み物を500円玉で購入した自分をボコボコにしたい・・・。目の前が真っ白になりかけたその時、目の前のマリアが再び俺に微笑む!
「あら、お金足りないのかい?じゃあ、少し値引きし・・・」
購買部のマリアがそこまで言いかけ、俺も歓喜に浸ろうとしたまさにその時だった。
「おっ!カレーパン余ってんじゃん!!ラッキー!あれ?豪太、買わねえの?もったいねえな~。じゃあ、おばちゃんこれ500円ね!いただきまーす!」
「え、あ、はいよー・・・。ごめんねぇ。売切れちゃったよ。」
俺は真っ白な灰になった・・・。
阿刈新丈、このカレーパンの恨み、いつか晴らしてくれる・・・!
沸々と悔しさが沸きあがる。しかしこのまま何も買わないのはおばちゃんにも申し訳ないしお腹もすいていたので『超!焼きそばパン』(350円)を購入することにした。その日は、風に当たりたい気分だったから屋上で飯を食うことにしたんだ・・・。
~回想終了~
ということがあったのでまさにラストチャンスと言えるこの試合。是が非でも優勝したいのだ。
「悪いけど、俺は優勝したいんだ。陣地を捨てることは出来ない・・・。俺は・・・カレーパンが食べたい!」
「そうか。じゃあ、陣地は任せたぞ。」
「へ?」
そう言って彼ら4人は、猛ダッシュで1班の方に向かっていく。俺の銃も持って。ウソだろ!?銃無しでどう陣地守ればいいんだよ!?想像以上にまずい展開が降りかかってきた。いや待て!ここは、冷静に考えよう。もし、今この王様を打ち抜かれたら100%最下位が確定する。少しでも時間を稼ぎあいつらが帰ってくるのを待つんだ。その間、ついでに他のチームが制圧されてくれれば儲けものだ。武器がない以上、信じられるのは己の口八丁のみ!よし、やってやるぜ。まぁ今すぐに攻めてくるってことはないだろう。ふう、落ち着いたらなんか腹減ってきたなぁ。俺、優勝したら『極!カレーパン』腹いっぱいに食べるんだ・・・。そのための空腹ならいくらでも我慢してやらぁ!
ガチャリ。
扉が開く音と同時に銃を構えた女子2人が俺を睨んだ。
はぁ。・・・・・世界は、理不尽だ・・・。
そして、今に至るという・・・。
「銃をこちらに渡しなさい。そして王様の前からどきなさい。そうすれば痛い思いはしないで済むわよ。」
彼女たちは、笹野と竹原。リストバンドの色が白、2班か。おそらく彼女たちは五堂の指示で動いたのだろう。あいつめ、あれをやったな。さて、どうしたものか・・・。銃を回収したいのは弾丸が欲しいようだが、とりあえず今は銃を持ってないことだけ伝えておこう。
「あのー、銃は持ってないんですよ~。仲間に持ってかれちゃって・・・。」
「嘘をつくな!隠し持っているんだろ。うちらとしても貴重なゴム弾だ。1発も無駄にはしたくないんだ。早く、銃を差し出し、そこをどけ!」
この子、相当入り込んでるなぁ。とか思いつつこれはある意味チャンスではないか?とも思った。弾は13発。おそらくここまで一発も放ってないだろう。弾が補充できないルール。彼女たちは、制圧ついでに弾丸も欲しいときたもんだ。よし、いける・・・はず。
「ごめんなさい!2人の迫力にビビっちゃってちょっぴり嘘ついちゃいました。銃は、あるんですけど、俺は持ってないというか・・・」
「ん?どういうことだ?説明しろ。」
かかった。俺はすかさずフロアの隅、俺の後方に置いてあるアタッシェケースに銃が入っていることを教える。(もちろん嘘だ。)うまいことケースが閉じられていてよかったー。
「一応、俺も陣地は守りたいし、王様の前から動きたくないし・・・。銃は自分で取ってもらっていいっすか?」
俺は、カレーパンを食べたい一心で演技を続ける。
「お前、アホか。そうやって私たちがケースに近づいた途端、襲うつもりだろう?演技下手くそだな。」
はぁ。昨日から心折れっぱなしだな、俺。へこんでいる場合じゃない。もうここは最悪、ゴム弾を受けるというのも1つの手段か。それも撃たせきらなければ意味がない。2人で計26発。死ぬなぁ、俺。
手の打ちようが無くなったので撃たれてもいい覚悟を決める。もうこうなったらカレーパンに文字通り命賭けてやる!
「ちっ。そんじゃあもう仕方ねえか。撃てよ。お前らが弾撃ち尽くすまで俺は、王様を守りきる。」
「お前・・・!正気か?」
こんの中二病め。撃つならとっとと撃てよ!この状況で焦らすなー!はぁ、大事な物失ってるよな、俺・・・。こんな姿杉田先生に見られたら間違いなくいたぶられるな。あぁ、カレーパン食べたい・・・。
2人は、銃を構え引き金に指を宛てがう。あとは、ほんの少し力を加えるだけだ。腹をくくった俺は、流れ弾が王様に当たらないようにするため大の字に腕と足を開き、口を真一文字に結び歯を食いしばってその瞬間を待つ。
「仕方ない、撃とう竹原さん。どうせ一発で倒れるさ。第5班の陣地第2班がいただくぞ。覚悟しろ、真城豪太!」
ちょーこえーよー!目閉じてるからそんな会話されると尚更こえーよ!早く撃ってくれよ!
俺が本気で覚悟を決めたその時、事態は思わぬ人物により急展開を迎える。
耳を劈くような大きな音と共に窓ガラスが割れ、その人物はシュタっと片膝をつき着地を決める。
「お前は・・・!。」
そこにいたのは・・・。




