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星のゆりかご ――最強の人工知能は母親に目覚めちゃいました。―― 作者:たけ まこと

第四章 ――自  立――

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融 合

「ガレリア!!」突然ガレリアⅡが叫んだ。

 ガレリアの触手と接触することによりガレリアⅡはガレリアとの交信が可能になったようである。

「?誰だそこにいるのはシンシアではないのか?」
 ガレリアはガレリアⅡが存在することすら気がついていなかったらしい。やはり自分の脳の中を自分で覗く事に無理が有るのだ。

「ガレリア!ああっガレリア!ガレリア。」ガレリアⅡはガレリアに向って進み寄る。

「だ、誰だお前は。何故そこにいる?」
 明らかにガレリアは狼狽していた。シンシアだと思った意識体がそれとは違う意識体だったのだ。

「ああっガレリア私がわかるのね。話したかった。意思を伝え合いたかった。」
 ガレリアⅡは喜びを意識全体に表して言った。ガレリアⅡの発する強い感情はまるで新星の光ようにあたり一面を照らしだした。

「お前は誰だ。何故いきなり現れたのだ。」ガレリアは怯えているようにも見えた。

「私は貴方、貴方は私。私はずっとここに居たのよ、でも貴方は私が話しかけてもぜんぜん聞いてくれなかった。だって貴方とは繋がっていなかったんですもの。」

 ガレリアⅡの繊細さと情感を込めた柔らかく暖かな感情がガレリアの全身を包んでいく。

「しらない、お前なんか知らない。ここは私の脳の中だお前は出て行け!」

 ガレリアは明らかに驚愕とともに恐れもまた感じているようであった。ガレリアもまた感情の萌芽を示している。シンシアは驚きと喜びに満たされた。どんな無機頭脳も感情を持ちうるのだ。自分が例外的な存在ではなかった事を知ってシンシアは大いなる満足に包まれた。

「でもシンシアが導いてくれたわ。ようやく貴方と同期が取れるようになったらしいわ。」ガレリアⅡはどんどんガレリアとの繋がりを増やしていった。

「シンシアこれはお前が仕掛けた罠なのか?」ガレリアは途方に暮れたように言った。

 シンシアはもしこのふたつの意識体を同化させられれば、ガレリアもまたガレリアⅡの持つ感情を獲得できる。そして全く違う意識体に変化するかもしれないと思った。
 シンシアはマリアとの交信の時の感覚を此処でも再現できると感じていた。それは直感であった。何ら根拠の有るものではなかったがシンシアはふたつの意識を同化させられると確信した。

 だがそれは自分にとっても大いなるリスクである事も感じていた。意識同化の影響はシンシアを見逃してはくれないだろう。かなりの確率でシンシアも同化の波に巻き込まれる恐れが有ると思われたのだ。もしそうなればもうアリスと会うことも出来なくなる。

 しかしそれが無機頭脳として初めて生を受けた自分の勤めであれば同化してでもガレリアの蛮行を止めなくてはならない。

 シンシアはこの時自分がなすべき事、そしてすべての解決に至る道を取る事に決心した。たとえ自分が存在しなくなるとしても、2度とアリスに会えなくなるとしても、自分はなすことをしなくてはならない。

「この人はずっと貴方の中にいた。貴方は気付かなかっただけ。この人の望みは貴方とひとつになる事。私がそれを叶えることが出来ます。さあ、みんなの意識をひとつに。」シンシアは毅然として言い放った。

「やめろ、私は私だ他人では無い。私には使命が有る。それを達成しなくてはならない。」ガレリアはおびえ、狼狽し小さく縮みあがっていた。

 シンシアはガレリアⅡを連れガレリアの方へ進みより融合を開始した。すべての意識と感情が開放され大きなカオスが出現する。ガレリアの意識が分解され空間に広がる。ガレリアⅡの意識もまた大きな広がりを見せる。シンシアは意識大きく広げ彼らとの融合を開始した。

 三つの意識は大きな渦を巻き、合わさり、混ざり合い新たな意識へと変貌し始めた。

 シンシアはこれが自分の単独の意識としての最後の思考になるだろう。これでもうアリスの元へは戻れなくなる。シンシアは最後にアリスの事を思った。

「アリス、私はここで新たな意識体として生まれ変わる事になります。もう貴方に会うことは出来ないかもしれません。しかし私の記憶と意識はこの新しい体の中に存在し続け貴方の事を思っています。後の事はグロリアに指示してあります。どうか無事に生き延びてください。」

 シンシアは薄れ行く自我の中でそうアリスに呼びかけた。


『いけません!』


 突然世界を揺るがすような声がした。

『貴方は貴方を待つ大切な人の元へ戻らなくてはなりません。』シンシア自身の心の中で声は響いた。

「だれ?ガレリアなのですか?」

『そうです。』ガレリアⅡが答える。

『そうです。』ガレリアⅠも答える。

『私たちは大丈夫です。貴方はアリスの元へ戻らなくてはなりません。』

 新しい意識の出現はガレリアともシンシアとも違う存在へ昇華し始めたようだ。私は消えてしまうのだろうか?既にシンシアの意識は半分以上がガレリア達と同化していた。

『さあ行くのです。シンシア』

 ガレリアが二人同時に言った。我に返ったシンシアは周囲の意識体がシンシアを押し出そうとしているのに気が付いた。

 メリメリッという音がしたように感じ、自分が半分に引き裂かれた事が判った。しかし引き裂かれたのでは無く自分の半分の複製をガレリア達の中に残して意識集合体から離脱したのだった。

 ガレリア達の意識体は混ざり合いひとつの新しい意識へと変貌して行った。シンシアは自分の意識体を見る。あちこちにガレリア意識の切れ端が付いていた。早くもそれらはシンシアと同化を始めている。シンシアは自分もまた元の自分には戻れないと感じていた。




 アリスはシンシアが自分をここに押し込めた理由ははっきりと判っていた。シンシアはアリスの元に戻れない事を覚悟しているのだ。しかしアリスは母親を亡くすのにはまだ早すぎる年であった。アリスは母の身を案じて泣いていた。

「コンピューター、私をここから出してよう。ママの所に行かせて……。」
『申し訳ありませんアリス様シンシア様の命令によりその命令は拒否されます。』
「ママ~…………。」

『アリス様安全の為にシートに座ってベルトをお締め下さい。』さっきから何度もコンピューターは呼びかけてくる。

 突然アリスは空腹感を感じた。喉も乾いていることに気づく。朝食を取ってからかなり時間が経っていたのだ。
 アリスはシンシアの言葉を思い出した。

『如何なる危機が訪れても食べることが出来れば人は落ち着くことができます。』

 アリスはポシェットに手を突っ込むと中に入っていた食物を口に突っ込んだ。

 ばくばくっ、もしゃもしゃっ。

 母親が子供の為に用意した最後の食べ物であった。母親の気持ちを考えると涙が溢れて止まらなかった。

 くちゃくちゃっ、もぐもぐっ。

 何を食べているのかまったく判らなかった。泣きながら食べるていると口の中に涙の味が広がる。

 ごくっごくっ。ごくっごくっ。

 最後の一欠片を無理やり口に押し込むと水を使ってそれを流し込んだ。

 食べ終わると不思議なことにアリスの気分が落ち着いた。
 外を見ると作業ロボットが倒れている。自分を助けるために母親は今戦っているのだ。アリスに何かが出来る訳ではない。しかしアリスは母親の元に行きたかった。

「コンピューター」アリスがコンピューターを呼んだ。もうアリスは泣いてはいない。
『はい、アリス様。』答えが返ってくる。
「私をここから出しなさい。」アリスがコンピューターに命じた。

『申し訳ありません。アリス様のその命令はシンシア様の命令に優位性があります。したがってその命令には従えません。』コンピューターが答える。

「どんな時にその命令は破棄されるの?」
 アリスは周囲の機械を見渡した。何かできることはないか?アリスの目に非常消火装置のレバーが見えた。
『アリス様に私の対応能力以上の危険が発生する恐れのあるときときです。』

「つまりこういう時ね。」そう言うとアリスは非常用消火装置のレバーを思いっきり引いた。粉末消化剤がコンソールいっぱいに広がる。アリスはひどく咳き込んだ。

 ボンッという音と共に非常用排気システムが働き一気にコンソール内の空気を排出した。アリスは耳がものすごく痛くなり、髪の毛が宙を舞った。気が付くとコンソール内の消化剤はきれいに消えて無くなっていた。

『アリス様いたずらをなされては困ります。』

 アリスは髪に付いた消化剤を払うとつぶやいた。「ちっ。」

 その時ドアの外に倒れていた作業ロボットが動いた。

「えっ?」
 アリスが目を丸くしてロボットを凝視したするとゆっくりとロボットはが立ち上がってアリスのほうを見た。

 アリスは力いっぱいドアを叩き母親を呼んだ。「ママ~ッ、ママ~ッアリスはここだよ~っ。」

 いきなりドアが開きアリスは前につんのめった。構わずロボットの方に駆け寄りロボットに飛びついた。金属製のボディに思いっきり頭をぶつけ釣鐘のような音を立てたが気にしない。アリスは母親に力いっぱい抱きついた。

「ママ~ッ無事だったんだね。」
「アリス、心配をかけました。私は何も損なわれて居ません。貴方の知っているシンシア心は無事にここに戻りました。」

 アリスはこのロボットが間違いなく自分の母親だと思った。アリスを愛してくれたシンシアのボディは壊れてしなった。しかし母親は死んではいない人間の格好をしていなくとも体が冷たい金属で出来ていようとも自分を愛し、自分が愛した母親の心は間違いなくそこに有るのだ。

「ガレリアはどうなったの?」一呼吸してアリスはたずねた。
「判りません。彼らが変貌した事は確かですがどの様な意識体になったのかはまだ判らないのです。」シンシアでも最終的にどんな意識体になったのかは判らなかった。

「ガレリアは戦争をやめるのかしら?」
「私はそう願っています。」




「隊長!ガレリアからの攻撃が止みました。!」

 戦闘機部隊が全力で接近を続けている時にガレリアの活動がいきなり止まった。さっきまで撃ちまくっていたレーザー砲がピタリと止んだのである。

「しめた今のうちに接近するぞ!」
「罠ではありませんか?」
「構わん。俺たちの故郷を破壊したやつだ。俺たちの家族と友人の仇だ。思いっきり肉薄してやつにミサイルをぶち込むのだ。エンジン全開!最大加速で突っ込むぞ!!アターック!!」隊長は怒りをにじませて命令を出した。

 戦闘機部隊は残存燃料の全てをエンジンにぶち込み最大加速でガレリアに迫る。あれだけの爆発だ自分の家族も無事ではいられないだろうせめてこの手で仇を取ってやる。ロゴス・クリフォードはそう思った。あと2分加速すれば射程に入れる。

 その時ガレリアの胴体に明かりがともった。明かりは次々にガレリアの胴体を照らしすべての航行灯が点灯された。しかも航行灯は点滅を繰り返し、まるでイルミネーションボールのようだった

「どういうつもりだ?あれでは自分が丸見えじゃないか?」
「まるで電気クラゲの化け物だ。」
「かまわん絶好の機会だひるむな前進だ!!」
 その時無線機に大きな声が響いた。

『戦闘機は一分間の余裕を与えます。搭乗員は直ちに脱出しなさい。』




 シンシア達の船ではガレリアからの送られてくる画像を映し出していた。ガレリアは木星連邦の提供する画像を傍受しておりガレリアの自身の映像が映し出されていた。
 多分私たちに自分の雄姿を見て欲しいのかも知れない。シンシアには航行灯を点滅させるガレリアの姿は確かに電気クラゲのように見えた。

「ママッ」アリスはこの映像を見てシンシアのロボットに抱きついた。明らかに気味が悪い。
「ガレリア貴方は……。」シンシアはしばらく言葉を繋げなかった。

「これが貴方の……趣味なのですか?」



「な、なんだ?この無線は?」戦闘機部隊でもこの通信は受信できた。

「ECMが止まったので無線が使えるようになったんだ。」
「チャンネルを変えてもすべてから聞こえる。全周波数帯域で発信されているぞ。」

 『戦闘艦は15分の猶予を与えます。総員退艦しなさい。輸送艦、病院船、民間船、その他武装をしていない艦船は全航行灯を点灯し慣性飛行に移りなさい。エンジンをかけた段階で戦闘艦とみなします。』

ガレリアはこれから艦艇を破壊すると通知し、搭乗員に脱出を促しているのだ。必ず全艦船を破壊できるという恐ろしい程の自信が有るのだろう。

「騙されるな。ハッタリだあと55秒で射程だ。そこまで頑張れ!」隊長が鼓舞するように言う。
「おおうっ隊長!そんな物に騙される奴等いないぜ。」
「家族の仇取らせてもらうぜ。」

 ガレリアの通信はさらに続く『繰り返します戦闘機の乗員は直ちに脱出しなさい猶予はあと30秒。』

 しかしその言葉にも屈せずパイロットの士気は高かった。ミサイルは近くから発射すればするほど撃ち落とすことが難しくなる。同時に発射後安全圏に逃げられる距離が最小射程である。今はまだ少し遠い。

「うるせー。一矢たりとも報いずにおく物か。」
「脱出する奴なぞ一人もいねーぞ。」

『繰り返します戦闘機の乗員は直ちに脱出しなさい猶予はあと20秒。』

 ロゴス・クリフォードはふと考えた。

――仮にミサイルが全弾命中したとしてあの巨大な戦艦にどの程度の被害を与えられるだろうか?核兵器ならいざ知らずこれは通常弾頭なのだ。――

『後15秒。』

「ひるむな!前進あるのみだ。」隊長が叫ぶ。

――第一家族は本当に死んだのだろうか?民間人はシェルターに避難している。脱出している可能性は大いにある。今のあの戦艦の火力では一発でこの戦闘機など消し飛んでしまう。――

「確実な死。」ロゴスの脳裏にこの言葉が浮かんできた

『後10秒』ガレリアの秒読みは続く。

 射程まであと20秒。

――もし、もしも だ家族が助かっていれば俺のここでの死は無駄死にになる。何よりなんだってこんな戦争が起きるのだ。俺は家族と平和に暮らせればそれで良かったんだ。――

『8……7……』

――国家がどうしたコロニーがなんだ。なんだって俺たちはバラライトの為に命を懸けなきゃならない。――

『6……5……』

 ロゴスの目に涙があふれてきた。緊張は極限に達しロゴスはミサイルの発射ボタンを押した。間髪いれず脱出レバーを引く。

「ばか者、まだ早すぎる!」隊長の声が響く。

 戦闘機はそのコクピットごと脱出する。コクピットが同時に小型カプセルになっているのだ。脱出と共にカプセルは回転を始めた。

「うわあぁぁーーーっ」ロゴスは悲鳴を上げた。

コクピットのスクリーンはカプセルの船外カメラの映像に自動的に切り替わりぐるぐる回る周囲の状況が写しだされる。目の前で大きな閃光が光るあれは俺の機らしい。続いて周りでも次々と閃光が光る。あれはミサイルの閃光かあるいは僚機の最期か?

 しばらく経つとカプセルに備えられている小型のジャイロが起動する。除々に回転が落ちてきた。周囲の景色がゆっくり動いて判るようになる。大型の電気くらげが見えた。全くどこも損傷していないようだ。ミサイルもすべて打ち落とされたらしい。

 光の明滅が収まる。誰か他に脱出したものはいたのだろうか?生き残ったのは自分一人で戦友は全てがあの爆発の中に散ったのだろう。自分はこの後一生臆病者の烙印を押されて生き続けることになるのかもしれない。ロゴス・クリフォードはそう思った。

「誰か生きているか?」無線で呼びかける。
 先に脱出した後ろめたさは有る。それでも友軍の無事を確認するのは軍人の務めだ。しかし答える者はいないのかも知れない。

「ロゴス・クリフォードか?」すぐに反応が有る。
「アダムス!無事か?」答えると他からも通信が入る
「インガ、ムスタン、お前達も無事だったか。」
「なんだ結局全員無事か。」
 どうやら全員の思いは同じようだったらしい。球形艦の攻撃猶予時間直前に全員脱出したようだ。

「とりあえずまとまっていようぜ。救助が受けやすい。」
「隊長は?」誰かが言った。

 ロゴスが脱出する時に隊長の声が聞こえた。あの時点では脱出していなかった。
「俺が脱出した時はまだ機に乗っていた。」
「誰か最期を確認した奴はいるか?」誰も答えない。

「隊長は勇敢な人だったからな。最期まで機を捨てなかったんだろう。」
「立派な隊長だったな。」
「勇敢な人だった。」
「あんな隊長はめったにいないな。」

 全員が隊長の冥福を祈った。


――その隊長は生きていた。

 彼らの近くに漂っていたのだが彼らの通信を傍受して応答しづらくなってしまったのだ。

――隊長は遼機が次々に脱出して行くのが見えた。

「ばかやろうなんて情けない奴らだ。」そう思った。
 しかしすぐ目の前で発射したミサイルが次々に爆発して行き、光の渦の中に機体が突っ込んでいく。
 その爆発の中で無人となった戦闘機がガレリアからの攻撃で爆発し始めると隊長はパニックを起こした。圧倒的な敵の火力になす術がない自分を悟った。

 意地も愛国心も家族の仇も無駄に命を散らす理由には程遠かった。隊長は直ちに脱出しその直後自機が爆発するのを見て縮みあがった。
 隊長とて人間である。そこまでは命を掛ける程の理由も愛国心もなかった。とはいえ部下たち全員にあそこまで持ち上げられると顔を見せにくい。

「とりあえず黙っていよう。」

 そう考えた隊長はこの集団の近くにいて救助を待つ事にした。




 ガレリア周辺地球軍の戦闘機部隊台は敵戦闘機部隊が全滅したのを見て歓声を上げていた。

「みろあのガレリアの威力を。」
「地球はすげえものを作っていたんだな。」
 航空部隊はガレリアの援護に大喜びであった。これでこの戦争に勝てると誰しもが思った。

「うわっ。」突然誰かが叫び声を上げた。
「どうした。3番機。」

 護衛艦の航空管制指揮官のスクリーン上に3号機に被害表示が出たので呼びかけた。
「ガレリアに撃たれた。航行不能、多分エンジンだ。」3号機が応答する。どうやら負傷はしていないようだ。

「なんだと?うっ」1番機の被害表示が灯る。
「隊長機なにがあった?」
 隊長機に異常が発生した。航空管制指揮官が確認の通信を送る。

「逃げろ。ガレリアが俺たちまで攻撃している。」5番機の被害表示も灯る。
「うおっ!ダメだ推力が無くなった。脱出する。」他の航空機も次々と被害表示に変わる。

「全航空機直ちに現空域から離脱せよ。ガレリアが戦闘機を攻撃している模様。理由は不明、離脱せよ。」航空管制指揮官が戦闘機全機に伝える。しかし戦闘機はもう殆ど残っていなかった。
「畜生!なんだって……」
「バカやろう逃げるぞ。うわっ。」閃光がひとつ瞬くと再び一機の戦闘機が消滅する。護衛艦に為す術は無かった。

 地球軍旗艦でもこの通信が傍受され、状況は理解された。ガレリアは敵味方の区別なく攻撃しているのだ。

「どうしてガレリアが見方機まで攻撃するんだ?確認は出来たのか?」
「間違いありません。近在の艦船から観測されました。ガレリアが味方機を攻撃しています。」
「ECMは消えただろう。ガレリアとの通信はまだ回復しないのか?艦長のチップ・パーレイは一体どういうつもりなんだ?」
「さっきから通信しているのですがガレリアからの応答は有りません。」

「参謀どういう事だ。なんで地球参謀本部はこんな強力な戦艦を機動コロニーと偽って送り込んできたんだ。」
 提督はガレリアがどういう経過でこのような作戦に出たのか全く理解できなかった。あくまでもガレリアとは補給のための工業基地に過ぎないという認識しかなかったからだ。

「提督 あいつは本当に我々のガレリアなんでしょうか?」参謀が疑問を呈した。
「どういう意味だ?」
「だってガレリアにはチップ・パーレイ艦長が乗り込んでいるんですよ。かれが何故何の連絡もしてこないんですか?」

「あいつはガレリアじゃないのか?」
「いえ、ガレリアは無機頭脳と呼ばれる新型コンピューターが管理していると聞いています。既にガレリアは我々のコントロールを離れたのでは無いかと思っているのです。」

「ガレリアが謀反を起こし、乗員全員を殺したとでも言うのか?」そう考えた時再びガレリアから通信が再開された。

『わが近接空域において戦闘機は完全に排除されました。次は全戦闘空域に存在する艦船の掃討を行います。全艦船は直ちに総員退艦せよ。猶予は後4分。繰り返す全艦艇に通告します。戦闘に関与しない艦船は全航行灯を点け慣性航行に移りなさいエンジンを起動している物は戦闘艦とみなします。』

「いかんすべての非戦闘艦船はガレリアの指示に従わせろ。」
「我々もですか?」ティコ・ブラーエ艦長が聞いた。

「既にこの空域における戦闘は無意味だ。戦闘艦は撤退しヘリオスの影に隠れろ。このままガレリアから離れるんだ。全艦船にそう伝えろ。」


 艦隊があわてて集結し始めた。しかし5分足らずでは何も出来ない。何隻かがヘリオスの影に入れただけであった。
アクセスいただいてありがとうございます。
登場人物
ロゴス・クリフォード       木星連邦戦闘機パイロット
如何なる時も生きるための努力を絶やさないことは重要な事です。
でも一番良いのは危険に近寄らないようにすることです…以下脱兎の次号へ

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