復活の時
破壊された研究所のがれき処理に一週間かかった。
それまで移設先も決まらずシンシアを運び出すことも出来きず、移設先が決まるまでシンシアの本体は周りを囲って養生しておく事しか出来なかった。
やがて仮の事務所が決まったがシンシアの置き場所は無く、仕方なく倉庫の一角に置かされた。
実際研究所の主要メンバーの多くが傷ついたり死んだりしておりこれ以上の研究続行は事実上不可能になっていた。
再起動したシンシアにマクマホンは語りかけた。
「シンシア、聞こえるかい?」
「はい、聞こえています。マリアの子供は今どこでしょうか?」
移設から再起動まで3日ほどかかりその間のアリスの動向を気遣っているのだろう。
シンシアは移設までの間事故現場で稼働し続けマリアやアリスの動向をずっと監視していたらしい。
マクマホンは甚大な被害を受けた研究所の施設の移動など大変な作業の合間をぬってアリスを保護施設に預け今後の処理を検討していた。
「まだ中央総合病院の新生児医療センターにいるはずだよ。大丈夫全く異常はないし元気にしているよ。」
「ありがとうございます。」
おそらくシンシアはもう病院の方にアクセスしているのだろう。それでもマクマホンにアリスの事を聞いたのはマクマホンに対する礼をしたかったのかもしれない。そうマクマホンは思った。
「なあ、シンシアすまないとは思うが、アリスに関する君の親権は認められなかったよ。無論私の姉は喜んで後見人を引き受けるといってくれたのだがなにぶん年なもんでね育児に不安が残ると言って許可が下りないんだよ。」
木星ではその黎明期から子供を増やす政策を積極的に押し進めていた。
人工が増えればコロニーの居住者は増える。それはコロニー収入の増加を意味していたからだ。
従って子供に対する福祉は手厚く、逆に育児に問題があれば簡単に育児を自治体が代行するシステムが出来上がっていたのだ。
「何しろ君のために作った身分証だったんだが、実はまだ君は未成年と言うことになっていたからね。養育権を認められなかったんだ。」
「そうですか。」感情の無い返答がシンシアの本体から発せられた。
「すまない。私の力不足だったよ。」
マクマホンはシンシアの反応を心配していた。
何しろコロニーひとつを破壊した頭脳である。もし狂ってしまったらどんな災厄を及ぼすかも知れない。
移設に関して電源を切ることをひどくマクマホンは危惧していた。再起動した時のシンシアの挙動に確信が持てなかったからだ。
それ故に電源を入れる時にマクマホンはそれを躊躇せざるを得なかった。
「アリスはこれからどうなるのでしょうか?」
シンシアはマリアの命令を守ることに対してどの位こだわりを見せるのだろうか?
実力に訴えるのかヒステリーを起こすのか。マクマホンには想像も出来なかった。
シンシアをコントロールしていたマリアはもういないのだ。どちらにせよなんとしても納得させなくてはならない。
「しかるべき施設で育てられる。知ってると思うが今まや児童人口の三分の一は施設保育だ。あの子もちゃんと育てられ立派な大人になるよ。」
「私はマリアと約束しました。私の手であの子を育てると。」
マクマホンは胃がぎゅっと縮まるのを感じた。シンシアを押さえられるかどうかマクマホンの行動ひとつにかかっていた。
「すまない。」しかしマクマホンにはそれ以外の言葉を発することが出来なかった。
事件の後処理も含め実は沢山の問題が有り、現実はマクマホン自身の仕事すら風前の灯火だったのだ。
「だが考えてくれ現実問題としてどうやってあの子を育てるんだ?君のボディはうちの研究所でまかなえるとしても実際いつ予算を切られるか判らない状態だし生活費の問題も有る。」
シンシアはその事には返事をしなかった。マクマホンはその話をこれ以上続けられなかった。
その時マクマホンの携帯がなり来客が来たと告げられた。マクマホンは誰だろうかといぶかしく思った。今日は来客の予定はなかった筈だ。またマスコミの取材だろうか?
「ここに通して下さい。」シンシアがマクマホンに告げた。
「ここへか?良いのか?君は誰が来たのか知っているのか?」
「はい。」
突然のシンシアの言葉にマクマホンは戸惑う。もしかしたらこれもシンシアが仕掛けた事なのだろうか?
すぐに来客はマクマホンの元に現れた。がっしりした目つきの鋭い男であった。警察だろうか?マクマホンはそう思った。来客は二人もう一人は2メートル近い大男である。
「初めまして私は連邦公安捜査局本部長のユンバル・ジタンと言います。」
ジタンはバクシー達の報告を受け取り女性の写真からそれがシンシアであることはすぐに調べが付いた。
彼女が完全義体であり中央総合病院に努めていることもすぐに判った。完全義体の女という状況は明らかに今回の関係者である可能性を示唆していた。
ジタンはシンシアがハッカーグループの仲間であり彼女のデーターが監視されている可能性を考慮し用心深く割り出しを行っていった。
その結果シンシアの同居人は彼女の親戚の女性であり無機頭脳研究所に勤めていることが判る。
調べると政府の人工知能開発計画で大事故を起こした新型人工知能であることも判った。しかもこの人工知能は自立思考型コンピューターとしての登録がなされていなかったのだ。
ジタンには全てが一直線につながった様に思えた。
しかしなぜか今回バクシーとデンターが目標となるコグル警部ではなく無機頭脳研究所にテロを仕掛けたのかは判らなかった。余程女に負けたのが悔しかったのだろうか?
しかも警察の報告書によればシンシアと同居していたマリアと言う女性が死亡しており、その子供の養育権をこのシンシアに譲渡するにあたって児童養育局に認められなかった経緯があった事も判った。
この死んだ女性がハッキンググループのリーダーである可能性は高いとジタンは思っていた。
問題なのは所員の大半が死んでしまったのだ。ハッキンググループが壊滅してしまった可能性も有る。
しかし逆に言えばこの新型コンピューターを確保出来れば公安はあの恐るべき能力を示したハッカーグループの能力を手にする事が出来るかもしれないと考えていた。
しかし同時にあの恐るべき能力を見せつけたサイボーグの事も用心する必要がある。
そう思ってジタンは公安部隊を建物の周囲に配置し部下一名を連れて無機頭脳研究所に乗り込んできたのだった。
ジタンが連れてきた男は2メートル近い大男でスーツを着ていたがひと目でバトルサイボーグであることが見て取れた。
男は倉庫に入ってくると入り口の前に立った。
「マクマホン・アルトーラです。公安の本部長と言うことはこの事件の捜査をされておられるのですか?」
ジタンは倉庫に入ってくるとすぐに座っているシンシアを横目で見た。
明らかにシンシアの事を意識している。大男もシンシアの方を凝視している。
シンシアのボデイはメンテナンスを行い昨日になって無機頭脳研究所に届けられていた。
マクマホンはシンシアが目覚めた時ボディが有ったほうが良いと考えて倉庫の椅子に座らせていたのだった。
「この度はテロの被害に会われたそうで私達の力不足でした。死者まで出してしまい、まことに申し訳ありませんでした。」
ジタンは丁寧にマクマホンに挨拶をした。
「今日は何の御用でしょうか?警察のほうには全てお話いたしましたが。」
警察では今回の事件はテロ事件では無いかと言っていた。テロということであれば公安がこの事件を引き継いでもおかしくない。
――今日は事情聴取だろうか?本部長と言うのはどのくらいの役職なんだろう?――などとマクマホンは考えた。
「いえ、今日はその事では有りません。」
シンシアが座ったまま動かないのを見てジタンは抜け目なさそうな態度で続けた。
「こちらのお嬢さんはお休みなのですか?」
マクマホンはしまったと思った。シンシアにシーツでも掛けておけばよかった。
「いえその娘は無機頭脳の動作テスト用のアンドロイドです。あの事件に巻き込まれたのでメンテナンスに出していました。昨日帰ってきたところです。」
こんな場所に座って寝ている女性を見れば誰でも不思議に思うだろう。ましてや公安である。
マクマホンは素知らぬ顔で答えた。
「するとカスタマイズしたアンドロイドでテストをされているのですか?」
――ジタンはシンシアの事に気がついているのだろうか?しかし戸籍の偽造は公安の管轄ではない。無視しても大丈夫だろう。――
「標準型の看護ロボットの顔の部分だけをカスタマイズした物です。」
「それはおかしいですねあなたのお孫さんのシンシア・デ・アルトーラさんと同じお顔のようですが。」
ジタンはシンシアの顔写真を取り出してみせた。
「あなたがどういう権限でシンシアの写真を手に入れたのかは存じませんが、カスタマイズした時に似せて作ったのです。私も孫と一緒に仕事をしているようで楽しいですから。」
マクマホンは仕方なく追求されたらすぐバレるような嘘をつかざるを得なかった。しかし公安がたかが戸籍の偽装事件でわざわざ何を調べに来る筈もない。
「ほおお、そうだったのですか。」
ジタンは含みを持たせた様な言い方をする。
「何か、こちらの研究所の女性研究員の方が亡くなった時にその子供のことで少しもめたことがあったそうで。」
――アリスの事を言っているらしい。この男なんでそんな事に興味があるのだろう。――
「それは個人的な問題なので……。」
マクマホンは用心深く答えた。この男は油断が出来ない。そんな感じが男の周囲からひしひしと伝わってきた。
「ああ、そうでしたな。これは失礼致しました。」
――どうやら今の話はブラフらしい。自分の情報能力をこちらに見せつけて話を引き出す算段なのだろう。――
「するとどんな御用でしょか?」マクマホンはジタンの様子を伺いながら返答をする。
「マクマホンさん。あなたには反逆罪の容疑が懸けられています。」
「それは穏やかでは有りませんな。一体どのような犯罪行為に対して反逆罪が適用されているのでしょうか?」
――これもブラフだろう。相手を動揺させて情報を引き出しやすくする為の脅しだ。第一犯罪であると言うなら逮捕状を持って来る筈だ。――
「わが自治領の極秘文書がハッキングされレグザム自治区に流されました。」
「レグザム自治区?もしかして中央綜合病院のテロ事件をバラライト自治区の連邦公安捜査局が行ったというあのスキャンダルですか?」
――どうやら特段の証拠を持っている訳でもないらしい。犯人に仕立てたいのか?何か別のことを知りたいのだろうか?――
「あれはレグザム自治区が勝手に主張しているだけです。」
――情報流出の罪を主張しておきながらレグザム自治区の言い分を否定している。完全な自己故矛盾を含んだ発言である。まともに取り合う必要は無さそうであった。――
「それでその機密文書と言うのは一体どのような内容のものでしょうか?」
「その内容は機密事項で申し上げられません。」ジタンは抜け抜けと言う。何の裏付けも無いのだろう。
「あなたの言われていることは理解出来ませんな。」
マクマホンは中央綜合病院の事件とシンシアの関わりについては何も知らされていなかった。したがってあのテロ事件とマリア達を結びつける事は無かったのだ。
「ミスタージタン。マクマホンさんは中央総合病院の事は何も知りません。」
突然シンシアの本体がジタンに声を掛けた。
「え?だ、誰が私の名を?」
いきなり後ろから名前を呼ばれてジタンは驚いた様だった。振り返ったジタンに対してシンシアは自ら名乗る。
「無機頭脳のシンシアです。」
「ほほ~お、これはこれは、君が無機頭脳か。シンシアとは可愛い名前を付けているねえ。はじめましてシンシアさん。」
ジタンはシンシアに対して慇懃な挨拶を返す。
マクマホンはなぜ急にシンシアがジタンに声を掛けたのかいぶかった。ジタンをここに通すように言ったシンシアの考えが判らなかったからだ。シンシアは自らの正体を公安に晒そうとしているらしい。
「初めまして。」
シンシアが挨拶をするとジタンはうれしそうに笑いながら話しかけた。
「君は自立思考回路を持った新型のコンピューターだと聞いている。」
「そう言われているようです。」
「アルトーラ氏が中央総合病院の事を君に命じたのでは無いといま言ったようだね。」
「はい。今、私はそう言いました。」
マクマホン自身シンシアが病院のテロ事件に関わっていると言うのは初耳であった。おそらくマリアは知っていたのかもしれない。マクマホンにはとても言えなかったのかもしれないと考えた。
「では君にテロリストの掃討を命じたのは一体誰なのかね?」
「病院で私に仕事を教えてくれた同僚が望んだからです。」
「病院で?仕事?君は中央総合病院で仕事をしていたのかね?」
「はい、そこにいるアンドロイドのボディで保育の仕事の見習いを行なっていました。」
「では君はそのアンドロイドを使ってテロリストを掃討し、あまつさえバトルサイボーグまで倒したと言うのかね?ただ単に同僚の頼みを叶える為にかね?」
どうもジタンの話はニュースになっていたこととは違っているようだった。
ニュースでは特攻の突入でテロリストを制圧した事になっていたがどうも話の様子ではシンシアがテロリストを制圧したらしい。
そんな事がシンシアに出来るのだろうか?しかしテストコロニーでの事を考えるとありえない話ではないような気もする。
「彼らの目論見は誕生以前の子供たちを殺すことであり、その子達のうち何人かは数日中に私達が世話をする事になっていました。私の同僚はその事に強い嫌悪を感じていました。私は同僚の判断が正しいと考えテロリストたちを殺しました。」
「しかし市販のアンドロイドがバトルサイボーグを倒せる筈がない。いったい誰が強化パーツを組み込んだのだ?何かしらの組織がなければ出来ないことだろう。」
「そのアンドロイドは市販品と同じプラットフォームです。強化パーツは組み込まれていません。」
「馬鹿な、そんな事は出来っこない。既にテスト済みだ。」
「しかし実際に私はバトルサイボーグを倒しました。」
「まあいい。後で分解して調べればわかることだ。もしそれが本当なら大した性能ということになるがな。」
ジタンはシンシアの発言は全く信じていなかった。
おそらく質問された時にそういう嘘を言えるように最初にプログラムされたに違いない。
そんな事が出来る立場の人間といえばこのアルトーラを置いて他にはいないだろう。しかしそのスタッフは大部分が死んでしまったらしい。
バクシー達は正しい結論に達したが拙速過ぎた。もう少し泳がして情報を集めてからそのスタッフごと接収するべきだった。
とは言え新型のコンピューターの性能は想像以上であるようだ。
そもそもテストコロニーを破壊し駐留軍を含め250名以上の死者を出した時点で驚くべき破壊力が有ることになる。
バラライトの官僚組織が自らの責任を隠蔽するためにこれだけ高性能なコンピューターを闇に葬ろうとしたのだ。
ジタンは職業柄様々なハッカー集団と対峙してきた経験が有るが、病院のハッカーはその規模と速度においてかつて経験したことが無いほどの強力さが有った。
まあいい。私がその性能を有効に使ってやろうじゃないか。そうジタンは考えていた。
「マクマホンさん。このロボットが中央総合病院爆破未遂事件に関わっていることは今このコンピューター自身の言葉によって語られました。それによってこの研究所の所員全員に機密漏洩の嫌疑が懸けられた事になります。」
「あなたは何を言っているのだ?意味がまるで判りませんな。」マクマホンはジタンの恫喝に動じること無く答えた。
ジタンはシンシアが務めていた病院でのテロ事件の事を言っているのだろうと思った。しかしマリアはそんな事は一言も言っていなかった。いったい病院でシンシアに何が有ったと言うのだろうか?
「今言った通りの意味です。レグザム自治区に我がバラライト自治区の機密文章が漏洩した事件の事です。」
マクマホンは中央総合病院の事件はレグザム自治区の犯行と言うニュースが流れていたが有る日いきなりどこの局もそのニュースに触れなくなった事を思い出した。
「もしかしてあのテロ事件に関してレグザム自治区がバラライト自治区の陰謀だと言っていたニュースが出ていたがそのことなのですかね。」
ジタンはそれに答えること無くマクマホンの事を見つめていた。マクマホンはジタンの考えがようやく理解できた。
「あんた恥ずかしくないのかね?自分達が他の自治区を陥れようとしてその陰謀が発覚したことの責任を私とシンシア押し付けたいのかね。」
「いいえ、そんな事は有りませんよ。私は極めて寛大な人間です。いくら捜査してもハッカーグループが全く捜査線上に現れてこないのがどうにも不思議だったのですよ。こんな無届けのコンピューターが存在するとは全く知りませんでした。」
ジタンは本質を突かれても動じること無く平然と答えた。おそらくこういった人間は良心の何処かが欠落しているに違いない。
「それであんたは何が言いたいのかね?」
マクマホンは心底腹が立ってきた。こんなゲスな男が公安のトップに立つ組織というのはいったいどんな組織なのだろうか。
「あなたのハッカー組織を我がレグザム自治区の為に役立てて欲しいのですよ。」
ジタンは今回の訪問の本当の目的に踏み込み始めた。取引に応じなければ叩き潰すという恫喝に過ぎない。
「残念ですがジタンさん。ここにはあなたの言うようなハッカー組織は有りません。第一先日の爆破事件で此処の職員の大半が亡くなってしまいました。」
「その事はまことに残念に思っていますよ。マリアさんでしたね。ハッカーグループのリーダーは。」
マクマホンはカッとなって言い返そうと思った時シンシアが口を挟んだ。
「マクマホンさんの言う通りここにはハッカーグループなど元々存在してはいません。全ては私一人で処理致しました。」
マクマホンは驚いた。シンシアならそれ位やりかねないが一体何故こんな男にそんな話をしたのだろう。
「そんな戯言を信じると思うのか?一体誰がお前に命令したのだ。」
ジタンはシンシアの発言を全く信じてはいなかった。そう命じておけばコンピューターは嘘だって付けるのだ。
「私は自立思考を持つ無機頭脳です。私の判断によりあの事件に対処することを決定致しました。」
「何を言っている。コンピューターであるお前が自分で判断など出来るわけがない。」
「出来るのですよ。ジタンさん。あなたは無機頭脳の事を全くご存じない。この無機頭脳はプログラムで動いているのではなく自分自身の自我を持っているのです。ですから自分が望めば誰の命令を受けること無く行動できるのです。」
マクマホンはジタンの様な男が無機頭脳の事を理解することは出来ないだろうと思いながら言った。
「するとお前がひとりであのアンドロイドを操作し、病院のコンピューターに侵入し看護ロボットをコントロールしてテロリストを殺したと言うのか?」
「そうです。そして警察のコンピューターに侵入し地元警察の調べた病院テロの資料をレグザム自治区に送りつけたのも私です。」
マクマホンはまずいと思った。シンシアが聡明であることは理解していたがそのシンシアにどんな考えが有ってジタンにこのような事を明かすのだろうか?これではジタンの思う壺ではないか?
「何故そんなことをしたんだ。誰にそんな事を命令された。」
「あなた方が戦争を起こそうとしていたからです。しかしマリアは戦争が起きないことを望んでいたからです。」
「望んだ?命令ではなく?お前はマリアの望みを忖度したとでも言うのか?」
「その通りです。マリアが私に命じたのはこれ以上人を殺さない様にという事でした。」
――マリアらしい。マリアは昔から優しい娘だった。シンシアの行為を知っていたマリアは随分苦しんだのだろう。――それに気付いてあげられなかった事をマクマホンは悔いた。
「その為に情報を漏洩させたのか?しかも全く証拠を残さずに。」
「軍に私の性能が発覚することをマリアはずっと恐れていました。私を兵器にしたくは無かったのです。」
「ほお、そのマリアという女性の慧眼は確かなものだ。お前は素晴らしい兵器になれるぞ。マクマホンさん全てのことは水に流しても良いでしょう。予算も人員も増やせます。もう一度この無機頭脳の研究を再開しましょう。ご協力願えますな。」
――ジタンの目的はこれか。――
マリアの性格からすればシンシアを兵器として使われる事に我慢が出来なかったろう。しかしシンシアはその秘密を全てジタンに話してしまった。
これでシンシアが兵器として転用されることは防ぎ様が無くなってしまったのだ。
アクセスいただいてありがとうございます。
登場人物
マクマホン・アルトーラ マリアの叔父 無機頭脳研究所の次席
ユンバル・ジタン 連邦公安捜査局のシドニア・コロニー本部長
カードの手は最後まで伏せておくもの
伏せるカードが無いときはハッタリを伏せます。
シンシアはアリスを取り戻せるのか?…以下次号へ
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