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わたし、不良品なんです  作者: 夢想花
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9.アンドロイド仲間

 セリーはやっと自分の部屋に戻ってきた。これで自分のことができる。夜はアンドロイドの休憩の時間なのだ。

 納戸を開けると服がいくつか置いてあった。たぶん、逃げ出したアンドロイドのものだったのだろう。当座はこれを着替えに使わせてもらおう。セリーは今着ている服しか持っていないしカレンの世話をしたのでかなり汚れていた。

 まず、腰のところにある接続口に電線をつなぎ充電を始めた。そしてテレビをつけて、のんびりと椅子にすわった。

 次にメールをサーバーから取り寄せた。ラポンテからメールだ。

 今日も売れなかったらしい、明日から値下げになると言う。セリーが目の前で売れていったのがかなりショックだと書いてあった。

 セリーは励ましのメールを書いた。それとここの様子、ひどい女の子の専属になって大変な事、しかし、その子のために頑張るつもりだと書いた。

 次のメールはバッサラからで、夜十二時から彼の部屋でセリーの歓迎会をしてくれるという。みんないい人、いいアンドロイドばかりで本当によかった。カレンだって本気でぶつかれば分かってくれそうな気がした。

 時々、ネットワークでカレンの部屋のカメラに繋いでカレンの様子を確認した。おとなしく眠っている。今日、会ったばかりなのにカレンがいとおしくてたまらない。あんなひどい子のどこがいいのか、アンドロイドは愛情豊に作られているのだとつくずく感心してしまう。

 テレビは戦争の話をしていた。どうやら世界は二グループに別れて対立しているらしく、今にも戦争になりそうだと解説している。どうして人間は戦争が好きなんだろう。


 夜十二時、バッサラの部屋で歓迎会が始まった。

 アンドロイドが十台も集まると部屋がいっぱいになってしまう。それでも人間のいない楽しいひと時だった。コックのアンドロイドが簡単な料理を作ってきてくれた。それをみんなで食べる。食べても、お腹の袋に入るだけなのだが楽しい気分になれた。

 アンドロイドは味覚がわかるように作られていた。特にコックのアンドロイドには必須だが、いつ人間のために料理をしなければならなくなるかわからないので、アンドロイドには味覚が備わっていた。

 お酒を飲んで酔っ払った気分になるアンドロイドもいた。もちろんお酒を飲んでもお腹の袋に入るだけなので酔っ払うはずはないのだが人間のように酔っ払ってみるのもおもしろかった。

「この家はお金持ちなんですか?」

 セリーは聞いてみた。

「ああ、かなり裕福な方だ」

 バッサラが教えてくれる。

 ここの社会では、働くのはアンドロイドやロボットだった。生活に必要なものは全部ロボットが作っている。だから人間は基本的に働く必要がなかった。だから遊んで暮らす人も大勢いたが、生きがいを求めて働く人もいた。働くといっても芸術や創作など人間がやることに意味がある仕事だ。

 お金は政府が全国民に毎月一定額を配布していた。こうやってロボットが作ったものを全員に平等に分配するのだ。ただし、アンドロイドが発明される以前の資産はそのままだった。資産がある人はその使用料が収入になるし、芸術などが売れるようになればそれが収入になった。だから貧富の差はあって、ラン家は裕福な方になるらしい。

「ここは大きな農園を持っている。その収入が相当な額だ」

 コックが得意になって説明してくれる。

「でも、あたしが逃げたら、もう罰金は払えないんでしょう」

 さっき旦那様が言っていた言葉が気になった。

「あれは、カレンをおどすためさ、充分に払えるよ。なあ」

 コックはバッサラに同意を求めた。

「まあ、払えるな」

 バッサラは頷く。

「しかし、旦那さまには罰金を払うのはもう難しいと伝えてある。だから、さっきのはおどしじゃなくて本心だと思う」

 セリーは目をぱちくりした。

「旦那さまは、自分の家の財政状況をご存知ないんですか?」

「知らない。私が全部管理している」

 バッサラが当然のように答える。

 驚きだった。これじゃあ人間ってアンドロイドに支配されているのも同じじゃないか。

「おい」

 だれかが声をひそめた。

「始めたぞ」

 急にみんなが静になった。ネットワークで何かを見ている。

「ここよ」

 ナシタがアドレスを教えてくれた。繋ぐと、ご主人様夫婦の部屋のカメラにつながった。なんと、夫婦が……

 こんな事をしていいのか、これって盗み見じゃないか。

「これ、いけないよ」

「かまわないわよ、あたしたちは品物なんだから何を見ても関係ないでしょ」

 セリーはすぐに接続を切った。この家にはすべての部屋にカメラが備えてあった。





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