【漫才】「キョンシー女子大生の職業適性」
ボケ担当…台湾人女性のキョンシー。日本の大学に留学生としてやってきた。本名は王美竜。
ツッコミ担当…日本人の女子大生。本名は蒲生希望。キョンシーとはゼミ友。
【漫才】「キョンシー女子大生の職業適性」
ボケ「どうも!人間の女子大生とキョンシーのコンビでやらせて頂いてます!」
ツッコミ「私が人間で、この娘がキョンシー。だけど至って人畜無害なキョンシーですから、どうか怖がらないであげて下さいね。」
ボケ「どうも!留学生として台湾から来日致しました。日本と台湾、人間とキョンシー。そんな垣根は飛び越えていきたいと思います。こんな風にピョンピョンとね。」
ツッコミ「いやいや、両手突き出して飛び跳ねなくて良いから!」
ボケ「さあ、蒲生さん!いよいよ春だよね。この時期になるとバイトを探す人が増えると思うんだよ。」
ツッコミ「そりゃ入学や進級などで新生活を迎えるからね。」
ボケ「私も去年のこの時期はバイト探しに駆け回ったなぁ…もっとも死後硬直が解けるまでは、こうやってピョンピョン飛び跳ねていたけど。」
ツッコミ「こらこら、それは掴みでやったでしょ?」
ボケ「だけど日本でバイトを見つけるのはなかなか楽じゃなかったよ。だから私の苦労話を聞いて、新入生の子達にはバイト探しの参考にして欲しいんだよね。」
ツッコミ「おっ!後輩となる新入生の子達に身をもって教えるとは見上げた心掛けだね。」
ボケ「私としてはキョンシーとしての後輩になって欲しいけどね。でないと何時まで経っても全日本キョンシー総会の最若手だもん。」
ツッコミ「キョンシーの後輩って怖い事を言いなさんな。それで貴女は、どんなバイトを探そうとしたの?」
ボケ「手始めにコスメを扱う雑貨ショップに行ってみたんだ。ショッピングモールにテナント入居しているお店。でも研修期間中に自分には合わないと分かったの。」
ツッコミ「どうして?女子大生の子達も割と好んでバイトしてそうだけど。」
ボケ「その店さ、求人情報と実態が違ってたんだよ。」
ツッコミ「あっ、それはいけない。そういうお店は求人詐欺になるから職業安定法や労働基準法に引っ掛かるよ。それで具体的に何処が違ってたの?」
ボケ「具体的には私服可の所だね。『普段着なんです。』って言ったら変な顔をされたよ。」
ツッコミ「それ、お店は悪くないよ!何処の世界に清代の官服を普段使いする人がいるのよ?」
ボケ「はい、ここにいま~す!」
ツッコミ「貴女達はキョンシーだからでしょ!」
ボケ「それで服装については何とか理解して貰ったんだけど、コスメ系アイテムのポップを作ったらまたダメ出しされちゃってね。」
ツッコミ「何か嫌な予感がするけど…一体どんなポップを作ったの?」
ボケ「黄色い紙に赤い筆ペンでサラサラッと…」
ツッコミ「それじゃ貴女の額に貼ってる霊符じゃないの!」
ボケ「バイトリーダーにも苦笑されたよ。『王 美竜さん、それだと中華系の人にしか読めないですよ。』ってね。やっぱり、日本なのに台湾華語で書いちゃったのはいけなかったかな。」
ツッコミ「そのバイトリーダーも何かズレてるな。霊符のフォーマットでポップを作っている事自体は別に良かったの?」
ボケ「おやおや、蒲生さん?蒲生さんには『コスメコーナーのポップはかくあるべし』っていうマインドセットでもあるのかな?」
ツッコミ「そこは『考え方の癖』とか『固定観念』って言いなさいよ!啓発書か何かで仕入れた語彙を無理に使わなくていいから。」
ボケ「それに、私が普段から服の中に入れている丁子の匂い袋にもダメ出しが入っちゃったんだ。『ここには香水も売っているんですから』ってね。」
ツッコミ「西洋風の香水に変える訳にはいかなかったの?」
ボケ「でも、丁子を他の匂いに切り替えたら却って死臭が目立っちゃいそうで…」
ツッコミ「そっか、貴女にとってはオシャレじゃなくてデオドラント目的だったんだね。」
ボケ「だけど今にして思えば、ポップを沢山作る前にバイトを変えて正解だったのかも知れないね。同じポップを何回も手書きで作っていたら、そのうち日本語の文字がゲシュタルト崩壊しちゃいそうで…」
ツッコミ「日本語がゲシュタルト崩壊を起こすまでポップを作り続けられたら大したもんだよ。それだけ長く勤め上げたって事なんだから。」
ボケ「同じショッピングモールに入っている中華料理店にも面接に行ったんだけど、ここも駄目だったの。」
ツッコミ「どうして?キョンシーの貴女なら中華料理店はピッタリだと思うけど?」
ボケ「そこのお店、デザートに桃饅頭を置いてたんだよ。」
ツッコミ「そっか、貴女達キョンシーは桃が苦手だったんだね。桃の木の剣だとダメージが入るから。」
ボケ「同じ理由で青果や桃缶を扱うスーパーや食料品店、それに桃系スイーツを扱う喫茶店やファミレスも駄目だったよ。」
ツッコミ「桃アレルギーも厄介だね、職業選択の幅が狭まっちゃうじゃない。」
ボケ「まあ、喫茶店とかの場合は別の理由で制限があるけどね。照明が暗い店は駄目とか、狭くて見通しが悪い店は駄目とか…」
ツッコミ「そっか、貴女は留学生でもあるから資格外活動許可とか就業制限とかが関わってくるんだ。」
ボケ「だからメイド喫茶もNGなんだよね。話のネタにやってみたかったんだけどな…」
ツッコミ「いやいや、メイド喫茶って…貴女の場合だと『あの世』って意味の冥土になるんじゃない?」
ボケ「彼岸へお帰り下さいませ、ご主人様!」
ツッコミ「そもそも貴女も彼岸側だと思うよ、死人だから。」
ボケ「同じ理由でコンカフェも駄目なんだよね。まるで背後霊みたいに就労制限がついて回って来るんだから。」
ツッコミ「何処にいるのよ、キョンシーに取り憑く物好きな背後霊なんて。そもそも留学生云々関係無しに、貴女にコンカフェは無茶だよ。」
ボケ「どうして?」
ツッコミ「だって服装云々以前に、貴女の存在自体が『キョンシー』ってコンセプトを体現しているんだもの。ナースだろうと巫女さんだろうと、キョンシーが上書きしちゃうんだよ。」
ボケ「この額の霊符に書かれたお経の文字みたいにか…」
ツッコミ「それで納得出来たなら良いけど…ここまで色々と話してきたけど、バイト探しは結局どうなったの?」
ボケ「それが元町の御隠居様に相談したら一発で解決したんだ。」
ツッコミ「その人って確か貴女が日本で御世話になっている古参のキョンシーの方だね。」
ボケ「そうそう!やっぱり身近な知り合いの伝手を頼った方が確実だったよ。バイト探しでアチコチ奔走したけど、青い鳥は直ぐ側にいたんだね。」
ツッコミ「貴女は『青い鳥』というより『青い顔』だけどね。」
ボケ「身近な事って意外と気付かない。これがホントの…」
ツッコミ「これがホントの『キョンシー下暗し』ってね。『灯台下暗しでしょ!』ってツッコミ入れてほしかったんでしょ?」
ボケ「あっ!ボケ潰しなんて禁じ手だよ、蒲生さん!」
ツッコミ「就労制限の禁じ手に触れかかっていた貴女が、それ言っちゃうかな?ところで貴女が紹介して貰ったバイト先って何処なの?」
ボケ「漢方薬や中国茶も扱っている中華系の雑貨店。全日本キョンシー総会お墨付きの店だから安心して働けるよ。」
ツッコミ「まるで貴女の為に誂えたようなバイト先ね。そこなら丁子の匂い袋も中国茶や漢方薬の匂いと紛れて違和感がないだろうし、貴女のクラシックな服装も上手く溶け込みそうだし。」
ボケ「ところが溶け込み過ぎても考えものなんだ。」
ツッコミ「どうして?さっきは『安心して働ける』って言ってたのに…」
ボケ「私が座って店番してたら、『あっ、よく出来たキョンシーの人形だな。誰か店の人はいませんか?』ってスルーされたんだよ。」
ツッコミ「そっか、溶け込み過ぎてお店のディスプレイと思われたんだ。」
ボケ「だから私も言ってあげたんだ。『店の人は居ないけど、店のキョンシーなら居ますよ。』ってね!」
ツッコミ「あのね、『店の人』ってのは『店にいる生身の人間』って意味じゃないから!驚いたでしょ、そのお客さん!」
ボケ「うん、『あっ、日本語上手いんですね。』って驚いてたよ。」
ツッコミ「えっ!そっち?貴女がキョンシーだって事はスルーしたの?」
ボケ「蒲生さん、今はグローバル化の時代だよ。外国人を見る度に驚いていたら身が持たないって。」
ツッコミ「国の区別じゃなくて生死の区別を言ってるの!」
ボケ「日本と台湾、人間とキョンシー。国や生死の垣根は飛び越えていきたいと思います。こんな風にピョンピョンとね。」
ツッコミ「最初の掴みを引き摺らないの!」
二人「どうも、ありがとうございました〜!」




