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第四ステージ 軍用ライドライダー

 俺は航空機の中のコンテナでライドラに乗っている。

 いわゆる降下作戦だ。

 ライドライダーにそんな仕様があるかと言われればそんなものは無い。

 それというのも今の俺はテストプレイヤーでもゲームのではない。軍需産業の軍用VRに招待されてしまった。

 機体はライドラだが色々と仕様が違う。

 ゲームとは違って腕を背面に折りたたんだ状態だ。実用性重視でコンパクトにまとめられている。

 俺がここに転んだのもこのせいだ。

 リアル重視のライドライダー。それが軍用サーバーで動かせる。

 これに心が動かないライドラ乗りは居ないだろう。


 まずタイヤの仕様が違う。

 なんでも永久機関だとか胡散臭い話が始まった。

 起動キーはゼンマイ。なんでもこれぐらいの微細な動力でないと永久機関がオーバーロードして破損してしまうという事だ。

 ゼンマイをくるくると回し戦闘出力に上げる。

 永久機関というだけあって常に動いているが、それは常に負荷をかけてオーバーロードしないようにしている。ゼンマイでその負荷を解放して出力が上がるそうだ。

 ゼンマイを撒くとしばらく上がり続け20分が限界出力。その後は減速の為に出力を抑えた状態を続ける。1時間ほどで元に戻るので再度のゼンマイが使用可能。

 つまりゼンマイ撒いたら20分ほど性能が上がり続ける。再使用は駆動時間合わせて80分後。という事らしい。

 ・・・その設定要る?

 ゼンマイの二回巻きは禁止。それをすれば永久機関が減速できずに出力が上がり続ける。最後には自壊するそうだ。

 やるなよ。絶対やるなよ。という事らしい。

 つまりこの設定を守れるかどうかっていうテストだろうな。


 性能にしてもジャイロ機能が搭載されている。地軸に沿って機能する様だ。なんでも永久機関まただよの効果でそれが出来るらしい。これをオンオフすることでゲームよりも多彩なトリックが使いやすくなるだろうな。これはSAが使えない事への救済かもな。


 そして永久機関の効果もうええわであらゆるものを遮断できる。

 物理は勿論、光や音に重力も無効化できる。これで降下作戦をノンオプションで可能だ。唯一の欠点は重力を無効化するほどの遮断を使うと、光も遮断して黒くなってしまうという事だ。だからこそ降下作戦は夜に決行される。

 これもSAが使えない事への救済だな。先のジャイロと重力無効で代わりにしろって事だろう。

 一応防御にも使えるらしいが機体が完全停止で黒い球体に呑まれてしまう。仮に防御が成功しても暗幕の中で身動きができないのは、解いた瞬間に後悔しかないだろう。

 

 そしてそれ用の酸素マスク。

 むせる。

 そしてヘルメット。

 むせる。

 残念なことにゴーグルは無い様だ。

 むせる。


 SAのない仕様で体が剥き出しなのはリアルな軍事仕様としてはどうなんだ?

 これなら棺桶の方が安全な気がするが。

 まあ、だからこそのVRなんだろうな。

 しかし軍用サーバーは解像度が高いな。異常な程にリアルに拘っている。

 よくもこれで動くものだ。ゲームサーバーじゃこの機内だけでも落ちてしまいそうだぜ。


ーーー


「準備は良いかにゃタイガ?」

 ミネギシサンの声が聞こえる。音声オンリーだ。なんでもアバターがリアルすぎて微妙な出来を見られたくないらしい。この人がここに居るのは昔取った杵柄だと言っていたが、相変わらず謎な人だ。

「いいすよ。いつでも。それにしてもライドラはどうなったんすかね」

「新仕様のライドレールが実装されたらしいニャンよ」

「マジすか」

「ハァ、聞いてがっかりするにゃよ。今のライドラじゃタイヤでビートルやフォートレスとドッキング出来ない連中で溢れてるにゃ。その対策としてドッキング位置まで誘導してくれるレールを呼びさせるニャンね」

「便利でいいじゃないすか」

「その程度も出来ないプレイヤーで溢れてるニャン。そのレール、ライドレールにタイヤで乗れば自動で導いてくれるにゃ。これが逆に大当たりにゃ。操作するよりライドレールでレースゲームの方が人気が出て来たにゃん」

「あーそりゃわかるわー。人間、楽になったらそっちに流れますもんねー」

「タイガもそうかにゃ?」

「いやでもフォートレスに自力で登るのはめんどくさかったすよ。毎回あれはちょっと。訓練じゃなくてゲームすから」

「にゃー! 軟弱だニャー! それに命を懸けるにゃー!」

「楽しくなかったら誰もやらないすよ。もとのゲームはどうなんす?」

「ガチな奴らが消え始めたにゃんね。ライドラはプレイヤースキルが大きすぎたにゃん。協力プレイのジャイアントのほうが人気出て強化、ライドラは伸び幅を削られた感じにゃんね」

「あーそりゃ、面白くないすね」

「それでライドレールも実戦使用にゃ。トリックを誰でも使えてライドラ乗りになれる補助輪にゃ」

「いやでもプレイヤーの底上げが出来れば上々っしょ」

「そうかにゃ? この初心者救済をガチ勢が使ったらどうなるにゃん?」

「ライドレールトリックすね」

「それでレースゲームになるわけにゃん。ライドレールの実戦での制限は厳しくなったニャンね」

「俺もそれやりたかったすね」

「タイガがいたらゲームにならないニャン。そういう連中をレースゲームにいれたらどうなるにゃん?」

「タイムアタックで即終了すね。対人はどうすか?」

「妨害アリのそれカートでやれにゃん。変なのだけが残ったにゃん」

「あーガチならあれは駄目すね。ライドレールトリック専用ステージで遊ぶのはどうすか?」

「プラクティスでやってる奴らは居たニャンけどそれゲームになるかにゃ?」

「いや、VRでスノボでしょう。スポーツだと思えば」

「そんニャン何が面白いニャン! もっと! 熱くなれニャン!!!」

「いや、ゲームは楽しくないとやらないすよ」

「それ楽しいのかにゃん?」

「俺はライドレールトリックの練習だけでも半日潰せそうす」

「イマイチ今の世代はわからにゃいにゃー」

「いや楽しいことするだけすよ。夢中になれれば何でもいい。そういう世界を作りたいって俺は思ったす」

「タイガを見てるとそれも悪くないって思えてくるニャン」

「すね。軍需VRは俺にはあわないかもすね」

「ここで実績上げていけばいいにゃん。下手な開発よりも軍でのトップテストプレイヤーの方が拍が就くにゃ」

「すね。日本に軍が出来ていい事は権力だけは自力で手に入れられる事すかね」

「たまに恐ろしい事言うニャンねタイガは。軍のトップが抜けられるわけないニャン。ボクがいい例にゃん。昔取った杵柄が今でも追いかけてくるニャン」

「ミネギシサンてホントに何者すか?」

「それを語り合う中になりたいニャン?」

「聞かない間柄で居ようと思います」

「賢明な判断にゃん。権力が自分の思うがままになるなんて思わない方が良いニャン。タイガはもっと自由な生き方が合ってるニャンね」

「たとえばスローライフとかすか?」

「それ現実で一番難易度が高い奴ニャン。タイガには向いるにゃんかもだけどニャ」


ーーー


 雑談が終わり降下準備に入る。

 永久機関のジャイロと遮断で減速して降下。

 川が流れる森。日本じゃないな。ジャングルか?

 タイヤの接地面が濡れている。遮断の重力遮断で機体を軽量化。ジャイロもあれば機体は滑らないだろう。きちんと考えられてはいるんだな。

 それにしてもなんだ? 匂い立つような映像美だ。心なしか本当に匂いを感じる。

 泥の質感。木の質感。水の流れ。全てが物理演算の極限に達している。

 もう現実でやれ。これほどのサーバーを動かせるなら実際にライドラ作った方が安くつくんじゃないか?

 VR訓練機が現実の兵器より高くついてたら本末転倒だぜ。

 俺が乗っているVR筐体もむしろそれをコクピットにしろと言いたくなるような豪華な代物だった。あれをこの実用的コンパクトライドライダーに乗せるのは不可能だろうけどな。


 俺は作戦の内容を伝えられていない。仮想敵も聞かされていない。

 ただ降りて、ついてくる。いかにも訓練なシチュエーションだ。現実では起きないことが起こるんだろうな。


ーーー


 何かに撃たれている。

 俺達は森に身を潜めながら敵を確認しようとするが見えない。

 これだからリアル志向は。暗すぎて見えねぇんだよな。暗視ゴーグルはむせるが視界の確保がないとライドラは動かせない。そもそも森で上半身の展開は自滅行為だ。ある程度開けた場所でないと反撃も出来ねぇぞ。

 ヘルメットディスプレイには味方が捉えた敵の情報は写し出される。つまり味方が捉えてない敵は映らないという事だ。表示も発射位置の予測だけだ。

 リアル志向はゲームとして楽しませる気が全くねぇな。

 俺は機体を森の剥げた斜面に出すと上半身を展開する。頭部が起動し、機体の両手が背に括り付けられたダブルマシンガンを装備する。

 頭部の起動でようやく視界が見えて来た。俺は数発敵の発射位置に打ち込むと機体を踊らせる。

 食いついた。

 敵は3機。こちらと同じ軍用ライドラだ。味方の表示は出ない。牽制マシンガンを撃ちながら空中でトリックを極める。

 空中でのジャイロで姿勢制御し射撃。遮断の仕様で落下速度のコントロール。ライドラを舞わせる事で滞空もできる。敵の頭上を取れば一方的だ。俺の指示した敵をライドラの上半身が自動で射撃してくれる。ここはゲームのままだ。

 ただ射撃指示は姿勢制御をした後だな。常時撃てると無駄玉が増える。

 ジャイロ、遮断、射撃指示、この辺のオンオフがリアルライドラの明暗を分けそうだな。

 ファーストアタックを極めた俺は上半身を格納すると遮断を強めて隠蔽に入る。

 一度味方に合流してセカンドアタックだな。

 

 止まっている味方が居るがなんだ?

 俺が近づくと止まっているんじゃない。撃破された味方か。

 そのアバターがグロイ。

 俺が視線をやると視聴制限の表示がアバターを隠す。

「ミネギシサン。アバターの中身までモデリングしてるのかコレ。道理で重いわけだよ」

 俺は独り言を漏らす。

 これだからリアル重視は。アバターの中身なんて空で良いだろ。

 本当にVRゲームじゃなくて実戦シミュレーターVRなんだな。

 これだから軍は金食い虫なんて言われるんだよな。

 俺ならもっと軽くして視界の確保。

 リアルVRのダメ出しだと思えばこの作業も苦にはならないかもな。

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