エピソード2 救世主ギンガ
「私は世界よりも! あなたと一緒に居たい! ギンガ! 私を連れだして!」
その言葉に私は涙を流す。
これが私が望んだ結末。
私が選んだ世界。
私がしたことの意味を私は知った。
ーーー
私はギンガ。救世主だ。
このナーロッパに召喚され邪神を撃ち滅ぼす使命を受けた。
剣を振るう私と、それを補佐する男の子たち。
ありきたりな逆ハーレム。
でも私の興味はそんなところにない。
気高く美しい悪役令嬢。彼女と結ばれる裏ルート狙い。
全ては順調に進んだ。
彼女を仲間に引き入れ、更なる力を得た私達の前に敵は居なかった。
ただ一つだけ誤算が。
聖剣の封印は彼女の、悪役令嬢の存在がある限り、封印が解かれないという事だった。
本来のシナリオは彼女を断罪し、討ち滅ぼす事によって聖剣が真の力を取り戻す。
そんな話だったのだろう。
ただそれが行えない。
封印のカギたる悪役令嬢の死は。
私達は邪神を倒した。
そして聖剣で封印を。
少しの時間稼ぎではあったけれど、少しだけ彼女の時間が延びた。
ただそれは、彼女には知れていた。
邪神を倒す方法を探すという無駄な時間を過ごしながら、その時は来てしまった。
あと一度。あと一度封印に使えば聖剣の力は失われてしまう。
何度となく行われた封印はウィークリー任務にまでなっていた。
これが最後の週。
彼女は言った。
「ギンガ。私はこの世界が好きですわ。だからあなたが、この世界を救う姿を私に見せてくださいまし!」
彼女は最初からそうだった。
自分の命惜しさじゃない。
私を愛してくれていた。
私は世界よりも彼女を選んだ。
ーーー
「それでこの顛末か救世主よ」
「私は、私が望んだ結末を迎えた」
「構わぬよ。それが汝の選択であればな」
「どういう意味?」
「お前の罪は何かわかっているのだろう?」
「私は彼女の望み通り世界よりも彼女を選んだ」
「誰の望みだと?」
「彼女の望み。彼女の言葉。それが全て」
「あの同じ言葉しか言わぬ人形がそうだというのか」
「それが彼女の本心。それを私が引き出した」
「誰の本心だ。罪人よ。誰がそのような言葉を望んだ」
「彼女の言葉。彼女は世界よりも私を選んだ」
「その顛末があの同じ言葉を囀り続けるオウムが如き人形か」
「それが彼女の本心。私と彼女が望んだ結末」
「彼女とは誰だ。あの人形がお前の愛する人間か?」
「そう。あれこそが私が望んだ私の彼女。私を愛する私の恋人」
「お前は彼女を殺した。死体にお前の言葉を喋らせてるに過ぎない」
「死んでない。殺してもない。彼女は生きている。いつ私が彼女を殺したというの」
「同じ言葉しか囀れない人形を、あのオルゴールが人間だと言えるのか」
「・・・神よ。もしも私が邪神を倒したら時間を戻せる?」
「それは出来ん。神の力を超えている。だが前の時間を再現することはできる。邪神を倒し、その前の時間帯の世界を再現すればお前の望みは叶えられるだろう」
「それでいい。それは確約されるの?」
「確約される。だがそれはお前の望みか?」
「・・・私の望みは、彼女がもう一度、私に話しかけてくれること。それは叶うの?」
「叶わぬ。お前のしたことは神の力を超えている。いや、神ですら行わない愚行であった。自分が何をしたのか言ってみるがいい」
「・・・」
「ならば代わりに応えてやろう。お前は魂を穢した。もはやあの娘は死んでも輪廻に戻れぬだろう。延々と同じ魂のままこの世界を巡り続ける。お前は彼女を呪ったのだ」
「違う!!! 私は彼女に助けてと言って欲しかった!!! ただそれだけが私の望みだったのに!!! なぜそれすらも叶わないの!!!」
「あの娘は幾度地獄の炎に炙られてもその言葉は言わないであろうよ。それをお前が書き換えた。神ですら、邪神ですら行わぬよ。そのような下等で愚劣な醜い行為は」
「だったら元に戻して!!! そんなに簡単なんでしょう!!?? だったら戻して!!! 返して!!! 私の悪役令嬢を私に返して!!!」
「簡単すぎるからだ。簡単故に元には戻らない。ならば時を戻してみよ。それが答えだ」
ーーー
私は人形に聖剣を突き立てると邪神を倒した。
ーーー
「私は世界よりも! あなたと一緒に居たい! ギンガ! 私を連れだして!」
その言葉に私は涙を流す。
これが私が望んだ結末。
私が選んだ世界。
私がしたことの意味を私は知った。
ーーー
「助けて。神様。助けて。神様。助けて。神様」
「その言葉をもっとも言うべき相手は誰だ? 魂を穢した罪人よ」
「知らなかった。知らなかった。知らなかった。なんで彼女は私を選んでくれなかったの。なんで世界よりも私だって言ってくれなかったの。そうすれば私は神も世界も敵に回した。全てを彼女に捧げたのに」
「それを言わない事を一番よく知っているのはお前だろう。裏切者の罪人よ」
「知ってた知ったし知た。言う訳ない。彼女がそんな言葉言うはずがない。あなたがそうしたの? 神さま」
「私は選んだだけだ。悪役令嬢たる彼女を操る事など、神である私にすら出来ぬだろうよ」
「あああああああ!!!!! 会いたい会いたい会いたい!!!!! あのまま死なせてハッピーエンドならまた会えたの!!!!????」
「それは無理だ。彼女の魂は己が役目を知り、それを終え、輪廻に帰る。その魂は霧散し元には戻らない」
「なら一緒じゃない!!!!! 結末が変わらないなら!!! 魂を穢してでも!!! 彼女の残滓に触れられればいいじゃない!!!
「・・・」
「なんだ。私は何も間違ってない。私は彼女を人形にした。それは何も間違ってない!!!!」
「残念だ。救世主よ。お前をこれから神に仕立て上げる」
「私が神様? なら私は私の人形でこの世界を埋めたい」
「もはや言葉も届かぬか。哀れな囚神よ」
「お前の望むものなど、何処の世にもありはせぬ。
異世界を巡る魂よ。お前の安住の地は
神々が集まり見守る惑星であり
神を捕らえた牢獄であり
終わった神が確実に死ぬ惑星
囚神監視惑星だ」
ーーー
その場所は天国だった。
私は何人も何人もお人形にした。
とってもきれいな私のお人形。
それを守る私を人々は称えた。
守護君主ガーディアンロードと。
今のお気に入りは男の子。
初めての男の子のお人形。
でも彼が女の子になった時、
私の中で何かが、
喜びが、
こみ上げるのを感じた。




