エピソード1 勇者アレス
本編
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僕は勇者アレス。異世界転生者だ。
勇者というジョブと名前を与えられた僕はその勇者パパパワーで超人になれた。
勿論目的は魔王討伐だ。
今では僕も立派なナーロッパ人だ。
最初の仲間は三人。
女戦士。女僧侶。女魔法使い。
彼女たちは仲間であり色々な世話を不満なく行ってくれる。そんな存在だという事だ。
それに不満のある彼女たちは力を見せろと迫る。
そんな彼女たちに僕は惨敗した。
僕の住む異世界では女性に暴力など振るえないからだ。
それを見かねた兵士たちと僕は殴り合う。
勇者パパパワーを使わない模擬戦で、僕は良い成績を残した。
僕は勇者の力を使わなくても強いらしい。
拳で殴り合う戦いはとても楽しかった。
血を流し、荒い息を吐く僕達はすぐに仲良くなった。
そして勇者パパパワーを使った模擬戦。
その力に皆は驚愕していたけど、こんなものは借り物だ。
皆はそんな事は無いと励ましてくれたが、こんな特別な力。
僕は欲しくなかったな。
ーーー
異変が現れたのはそれを聞きつけた仲間たちだ。
僕が実力を隠していたのが気に入らないらしい。
そこで僕は仕方なく勇者パパパワーを彼女たちに使った。
迫る女戦士の剣撃を払いのけ、女魔法使いに迫る。
後衛狙いは定石だ。
女魔法使いの華麗な杖捌きで剣を防がれるが、それを超える剣撃で黙らせる。
その勢いに尻もちをついた女魔法使いが顔を赤らめる。
悔しいのだろうか?
そして次に女僧侶。彼女は弱かった。
寧ろそれを守るために突っ込んできた女戦士から彼女を守る。
彼女もまた顔を赤らめた。
屈辱だろうか?
そして女戦士。彼女は強いが単調だった。
相手が一人なら勇者パパパワーを使う必要もない。
彼女の力を受け流し、後ろから抱き留める。
彼女もまた顔を赤らめた。
これも怒っているんだろうな。
そして僕に嫌がらせが始まった。
最初は女魔法使いだった。僕の世話をするのだから僕に抱けと言って来た。
彼女は負けたその場で子供のように駄々をこね、泣き出した。
それを見た他の二人も代わりに抱けと僕に迫る。
騒動が収まらない中、僕は最初一人という事で女魔法使いを選び、褥を共にした。
そして他の二人も、なまじ美しいからこそプライドが許さなかったのだろう。僕に関係を求める。
女戦士はとても献身的だった。女僧侶は上に乗りたがった。女魔法使いはただ抱かれるのが好きだった。
僕は一番楽な女魔法使いと交わることが多くなった。
ーーー
魔王の手下と戦闘になった。
その魔将軍は強かった。お互いに血を流し傷つきあう。
左腕の折れた僕に魔将軍が問う。
恐怖を感じないのか? と。
僕は答える。
そんなもの。普段からの脅威に比べれば可愛い物さ。
僕は折れた左腕を上げながらおどけてみせる。
彼女たちに比べたらこんなものは恐怖にもならない。
僕は魔将軍の左腕を切り飛ばす。
ようやくイーブンだね。
僕の笑顔に魔将軍が顔を赤らめる。
そして彼は彼女になった。
それは僕に恐怖を与える存在へと化した。
ーーー
魔王城の最深部。
僕は恐怖を感じていた。
魔王は女性だった。
君も僕のものになるのかい?
それは恐怖に怯える僕の喉から発せられた。
魔王とその一派は盛大に笑った。
やってみろ。
その一言で僕と魔王の一騎打ちが始まる。
そして女魔王は顔を赤らめた。
やはり僕の感じた恐怖は現実のものとなった。
もはやアレス・カリバーンと呼ばれるまでに巨大なもので彼女と対峙する。
その場で三日三晩。その対決で魔王は人間に屈することとなった。
ーーー
戻った僕らは盛大に歓迎され、もてなされた。
それには僕の恐怖も含まれていた。
だから僕は一番楽な女魔法使いを選ぶことが多くなっていった。
ーーー
彼女は、女魔法使いは僕に求める物は愛だけだと言って行為は求めなかった。
行為は最初だけで後はただ静かに抱き合うだけ。
僕と彼女にはただそれだけでよかった。
ただ彼女に生傷が増えだした。
この平和な世の中で彼女に傷をつけられる存在など考えられない。
それを問い質しても、ただ、黙って微笑むだけだった。
そして、彼女に会えなくなった。
何故か止められた。
代わりに王女が来るようになった。
久しぶりに会った彼女は震えていた。
だがそれを隠すように気丈に振る舞い、ぎこちなく笑った。
「オレは、お前と会えるだけでも幸せなんだ」
彼女との初めての夜。「オレを抱いてくれ!」と子供の様に泣きじゃくり駄々をこねた彼女の姿がだぶらない。
なぜ、こんなにも心を殺すんだ?
僕は勇者として守るべきものを彼女に見出した。
ーーー
「オレはお前とはいけない」
この言葉を最後に僕は彼女と永遠に会えなくなった。
ーーー
「いったい何人殺したんだ勇者よ」
「なぜ僕の願いは聞き入れられなかった」
「お前は選んではいけなかったのだ」
「魔王を倒し平和になり義務も果たした。その望みが、見返りが、少女一人と結ばれることすら出来ないのか」
「その通りだ。お前はまんべんなく愛さなければならなかった。一人を贔屓してはいけなかったのだ」
「その地獄が、恐怖が、いつまで続く。彼女だけが理解者だった」
「ならばなおの事、なぜ選んだのだ。お前が選ばなければ、かような状況にはならなかった」
「彼女を殺したのは誰だ」
「誰も殺してなどおらぬ。お前が選んだ。それが答えだ」
「僕の望みは・・・。たった一つの我儘さえ許されないのか。彼女が泣きじゃくり子供のように喚いたように。僕もそうしただけだ」
「許されぬ。望みは全て叶えた。あとはその対価だ。お前は勇者であらねばならなかった」
「勇者であるために彼女を選んだ」
「その選択があの娘を死に追いやった。それでも勇者を名乗るか」
「勇者とはなんだ?」
「対価だ。お前の望みの具現化だ。何故自身の願望と向き合わなかった。誰からも愛される。それは誰をも愛さなければ成立しない。選んではいけなかったのだ。お前は既に選択した。皆から愛され皆を愛する存在になると」
「それは呪いだ。神よ。対価などではない。僕の望みは叶えられてなどいない。彼女との時間を。あなたになら出来るはずだ」
「それは出来ぬ。重罪人よ。お前は殺し過ぎた。よってお前を神へと認定する」
「彼女と会えるのか?」
「それは出来ぬ。お前はこれから神を囲う世界へと送られるのだ。力を持ち、御せぬ者を収監する世界にな。そこでその魂をすり減らし、削り取られるのだ」
「彼女はどうなった」
「あの娘は結ばれぬことを受け入れ、魂が霧散した。転生は出来ぬ。それこそその魂は異世界へまで拡散されたことだろう」
「なら、僕はもうこの世界に用はない。この世界に僕の望むものは無い」
「お前の望むものなど、何処の世にもありはせぬわ。
異世界を巡る魂よ。お前の安住の地は
神々が集まり見守る惑星であり
神を捕らえた牢獄であり
終わった神が確実に死ぬ惑星
囚神監視惑星だ」
ーーー
そこは正に魂をすり減らす場所だった。
永遠に続く戦乱。
しかし、魂を削り取られ、疲弊しても、僕の望みは消えない。
僕の望みが消えない限り、この世界が終わる事は無い。
いいだろう。いつまでも付き合ってやる。
僕の魂か。この世界か。
この惑星が潰れた時がこの狂った神の世界の終焉だ。
・・・僕はやはり力を持ってはいけなかったのだろうか。
あの時、無力なままで居れば、
もしかしたら、
彼女に手を引かれ幸せな時間が訪れたのではないだろうか。
そんなことを考えながら次の転生に備える。
次は無力で攻撃手段のない、例えばショタヒーラー。
ただ手を引かれるだけの選択のない世界を楽しもうか。
そして僕の目に信じられない者がよぎった。
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