桐子の友達 2
今日から一日2回2時と14時に上げていきます。よろしかったらお付き合いください。13話で完結します。よろしくお願いします。
同じ高校に入学しても一学年上の拓海君とは学校内で会う事はほとんどなかった。一緒に高校に通う、という淡い期待も朝夕剣道の鍛錬があるため通学時間は全く合わず、奈々と美咲と通学する毎日だった。最寄り駅での待ち合わせ。電車に間に合わなければ容赦なく置いていく、という決まりを作って。
他の高校の学生、通勤の大人たちでごった返す中同じ車両毎朝使っていれば似たような顔ぶれが揃うようになる。その中で、時折同じ車両に乗り込むイケメン。
同じ高校の須藤先輩。美咲のいとこ。
「いとこで同じ高校って、どうよ。」美咲がこぼす。
美咲は子どもの頃から美咲を利用して須藤先輩に近づこうと子たち、須藤先輩と気軽に口を利きすぎて距離が近すぎて”優しい須藤先輩に迷惑をかけている”と攻撃をしてくる子たちに悩まされている。
「利用するために近づいてくるのはわかるんだよね。でもさ、嫌がらせするのってなんでなんだろうって。どのみち嫌な奴ってことには変わりないけど、嫌がらせされても私が黙って口つぐんでるとでも思ってるんかな?やり返すし、告げ口もする。あいつとだけは付き合うなって。まあ、言わんでも吉蔵人を見る目はちゃんとしてるからいいけど。」
須藤先輩に下の名前は吉蔵ではない。でも、美咲は須藤先輩を吉蔵と呼ぶ。
見た目ははかなげで気弱そうな雰囲気を醸し出す美咲だけど性格はなかなかたくましい。長年の経験からそうなるしかなかったのかな、などと思ってしまう。
「よっ!美咲ちゃん。女前!!惚れ直しちゃう。」と茶々を入れる奈々ちゃん。
美咲を見つけた須藤先輩が軽く胸元まで手をあげて挨拶するのに、美咲が顎をしゃくって返事をする。美少年、美少女、動作が逆!!美咲顎をしゃくるな!!かわいいが台無しになる!!と脳内突っ込みを入れている私をよそに、それを見ていた他校の生徒は小さな声をあげて私たちのほうをちょっと見たかと思うと、こそこそと話し出した。毎度のこと。悪意はなさそうなので気にしないでおく。
イケメンの従兄を持つだけのことはあり、美咲もかなりかわいい系、美少女なのである。女の子の私から見ても かわいい!!! と思えるくらい。だから嫌がらせをされるのはひとえにイケメン須藤先輩のせいだけではないのである。美少女であるがゆえに、ちょっと顔がいいからっていい気になってる、などと言う不届きなことを言う輩は絶対数としては少なくてもある程度はいる。ただ美咲がそこに立っているだけでも嫌味を言う人たち。
どのみちもれなく返り討ちにしてはいるけれど。
それに美咲はちょっと程度のかわいさではない。すごくかわいい。きれいかわいい。そのうえ、性格もすごくいい。かなりの好物件だと思う。
高校一年の入学当初はかなり大変だった。新入生の美少女としてかなりの注目を浴びた上に親し気に話をする二人を見た ”二人が従兄だと知らない” 須藤ファンから反感を買ったからだ。その時に一度拓海君が間に入って助けてくれたことがある。そのあとから、美咲ちゃんは大きな合格ハンコを拓海君に押している。対処の仕方がすごく大人だったと。あの男なら私の桐子を任せられる。と。私の桐子って。といつも思うのだが。脇から「私たちの桐子でしょ。」と訳の分からない横やりが入るのもいつものこと。
確かに、私も私の美咲ちゃん、私の奈々ちゃんと思ってはいるけれどね。
「あ、吉蔵がくまおさんのこと知ってるって言ってたよ。」
くまおさんは奈々がつけた拓海君のあだ名である。私はこの拓海君のあだ名(本人には知られていないと思うけど)が結構気に入っている。熊でも子熊っぽいんだよね、と私は思っているけれど奈々と美咲は
「いやー、あの人は大熊でしょう。長い爪が生えてる手でがーって軽く相手を倒す感じ?」
同じ高校とは言っても、吉蔵さん(本人に向かっては断じて呼べないその名前)と拓海君の接点は全くなさそうなのでびっくりした。キラキライケメンテニス男子の吉蔵さんとがっちりムキムキ筋肉系のくまおさん。
二人とも成績優秀組で、その点では共通点があるがそこから進学希望先と学部が数校かぶっているという事で話が弾み、大学談議からなぜだか一緒に勉強する図書館仲間になったという。
「それって、知ってるっていうレベルじゃなくて友達?になるんじゃない。」と奈々。
拓海君から須藤先輩の話を聞いたことが全くない。なんだか少しばかり寂しいような感じがした。学校ではほとんど交流がないものの、拓海君とはかなり親しくて彼のことはよく知っていると思っていたのに。須藤先輩以外のお友達の話は時々耳にすることがあったのに。
今度夕ご飯に来た時にでも聞いてみよう。もしかしたら美咲の従兄だってことも知らないかもしれないし。共通の知り合いってことになったら話も弾むかも。
そのころから大学受験の追い込みに入り、剣道の鍛錬が減ったものの学校、塾、図書館をぐるぐるとする毎日を過ごすようになった拓海君。夏休み明け、鍛錬を減らしたから、朝は一緒に登校できるかも、と淡い期待を抱いていたある日、偶然同じ時間に駅に向かう拓海君の背中を見つけた。




