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いつかの話

作者: P4rn0s
掲載日:2025/12/05

付き合って一年で別れました。

そんな話、そこら中に転がっているのに、まるで世界で一番の悲劇みたいな顔をして、彼女は会社の喫煙所の前で泣いていた。


僕は正直、理解できなかった。

一年なんて、人生から見ればちょっとした寄り道みたいなもので、その先にはいくらでも分岐がある。

それでも彼女の肩は震えていて、目の縁は真っ赤で、吸い込んだ息が途切れ途切れになっていた。


「一年も一緒にいたのに。」

彼女はそう言った。

まるで一年という時間が、人生のすべてを占めているかのように。

まるでその一年が、過去も未来も押し潰すほどの重さを持っているかのように。


僕は自分が冷たい人間なんじゃないかと思った。

でも、どうしても分からない。

よくある別れじゃないか。

人はいつだって別れては出会い、少し泣いてはまた笑い、繰り返しながら進んでいく。

そんな当たり前の痛みの一つに、どうして「世界の終わり」みたいな顔ができるんだろう。


けれど、彼女が小さく息を詰まらせた瞬間、ふと思った。

僕が「よくあること」と思っているその別れを、彼女は「人生で初めての崩壊」として感じているだけなのかもしれない、と。


人は自分の痛みの尺度でしか世界を測れない。

初めての痛みは、世界一の痛みに感じる。

誰かにとっては日常の中の石ころでも、当事者には足を切る刃のように鋭い。


だから彼女は泣いている。

経験が浅いからじゃない。

弱いからでもない。

ただその痛みが、その瞬間の彼女にとっては、世界のほとんどを占めてしまうほど大きかっただけなのだ。


そう思ったら、僕の中の冷たさが、少しだけ溶けた気がした。

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