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街の外

「師匠、ちょっといいか? 孤児院で肉の調達をお願いされたんだ。薬作成の手伝いを後回しにしていいか?」


急ぎ足で店に戻り事の経緯を師匠に話すと、師匠は軽く頷いてカウンターから移動する。


「それなら薬草の素材たちも取ってきな。材料の良し悪しは経験を積まないといけないからねぇ。ちょっと待ってな」


そう言って師匠は小さな本棚にあった紙を適当にまとめた本のようなものを引っ張り出す。

開くと植物のスケッチでそのなかに散々見た薬草のスケッチがあった。


「肉を取るついでにその本に載っている薬草たちを3種類、普通品で10束取ってきな」


「やっぱり雑に取ると品質は下がるのか」


「なに当たり前のこと聞いてるんだい。くれぐれも根っこごと取っていくんじゃないよ。いくら繁殖力が強い種だからといっても根っこがなかったら復活しなくなるからね」


「分かった。根っこ付近で切り取れば良いんだな」


「普通は水の入ったバケツを持っていた方が良いけど、お前さんには空間倉庫があるから大丈夫だね。それじゃあとっとと行っといで」


そう言って見送られ町の案内図を頼りに城門へ向かう。

到着すると近くの衛兵に呼び止められた。


「旅人さんかい? もしかして今から外に出るのか?」


「そのつもりだが、何かあるのか?」


「もうすぐ夕暮れになるから気をつけなよ。夜になると厄介な魔物が湧きやすいんだ。まあ、旅人さんは『リスポーンするから関係ない』って言って外に出ていったけど」


「そうか。忠告ありがとう。ああ、少し聞きたいんだが大丈夫か?」


「なんだい? 特に急ぎの用事はないから大丈夫だよ」


「このあたりで食用の肉が取れる魔物はどんなのがいる? 孤児院に頼まれたんだが、対象を聞くのを忘れてしまってな」


「なんだいそんなことか。このあたりなら『ミニラビット』がおすすめだね。F級冒険者でも狩れるくらい弱い魔物の上、癖のない肉が取れるんだ。ただ小さいから数は必要になるかな」


「分かった。わざわざありがとう」


「どういたしまして。気をつけるんだよ」


その言葉をもらって初めて街の外に出る。

だが、想像した光景ではなかった。


「ログインしてから時間たったから大丈夫だと思ったが......夏休みの観光地かここは」


どこを向いても人、人、人......。

人混みが得意ではない自分から見て即座にUターンして帰りたい光景が広がっている。

それに先程から魔物の取り合いに関する怒号があちらこちらから聞こえてきた。


「魔物の取り合いと放った攻撃がかすりそうになったで揉めてる......少し歩かないと人混みに流されるな」


なるべく人混みが少ない方へ進もうとするがどこからともなく飛んでくる攻撃に気をつけて進まないと行けないからなかなか進まない。

なんとか時間をかけて移動をしたらようやく閑散とした狩り場を見つけてホッと一息つく。

出現率は先ほどの場所より低そうだが、先程の取り合いによる喧嘩は全くなかった。


「さてと、初戦闘だがまあ短剣スキルがあるから戦えないということはないだろう。手頃な獲物はっと......」


周囲を見渡すと小さいウサギ型の魔物と時折ニワトリ型魔物がのんびり歩いているのを見つける。


「多分『ミニラビット』ってのはあれだろうな。ニワトリの方は余裕があれば狩るか」


初期装備『はじまりの短剣』を抜いてできる限り忍び寄り背後から突き刺そうとナイフを振り上げる。

ナイフはきれいにウサギの体にあたりその一撃で戦闘不能になった。


「よし、問題ないな。インベントリにちゃんと『ミニラビット(解体前)』が入ってるしこの調子で夕暮れになるまで狩っていくか」


そうして目の付く範囲にうろついているミニラビットを狩っていく。

時折見覚えのある草を見つけスケッチと見比べて回収をしていくこともしていたら、インベントリにミニラビットと謎の草が溜まっていった。


「これくらいで足りるか? 薬草の鑑定はまだ生えてこないから『謎の草』ってなっているがこれだけあれば課題分クリアしてるだろ」


インベントリを確認してそろそろ帰ろうかと思った時に1羽のニワトリが目の前を横切る。

ふとウサギ肉ばかりでは飽きるだろうと考え最後の狩りと決めてそのニワトリに狙いを定める。

すっかり慣れた忍び歩きで慎重に背後から近づきナイフを振り下ろす。

しかし、その攻撃は躱され次の瞬間には目の前に鋭いくちばしが迫っていた。


「は?」


間抜けな声が自分の口から出たと思ったら一瞬の暗転のあと、復活ポイントである治癒院のベッドで横になっていた。


「あ、気が付きましたか。さすが旅人様ですね。『グラスコッコ』に貫かれた傷をしばらく寝れば跡形もなく消えてるなんて。祭壇前で倒れていたからここに運び込ませていただきました」


「それはありがとうございます。あの『グラスコッコ』とは?」


「あなたそれも知らないで草原に出ていたのですか? 『グラスコッコ』はこちらから手を出さなければ大人しい魔物ですが、一度手を出したのならとても凶暴になる魔物です」


呆れ顔の治癒員にそう説明される。

ニワトリ型は初心者でも狩りやすそうと考えて狙いを定めたが完全に見誤っていたようだ。


「よく突っつきによる目潰しなどでここに運び込まれる冒険者はいますから、初心者のうちは避けるべき相手ですよ」


懇切丁寧に説明され少しバツが悪くなり誤魔化すように笑う。

治療が済んだらさっさと帰れという方針なのかすぐに治癒院から出された。


「デスペナは一定時間のステータス低下とアイテムのランダムドロップだったな。ミニラビットが数体と謎の草しか落としてないな。あと治療費として自動で支払われる所持金減少.......せっかく稼いだのに無駄にしてしまったな。次はちゃんと事前情報仕入れてから外に出るか」


初デスペナにちょっと落ち込みどこへ向かおうか思案する。

移動している間に夕暮れに突入していたため通りを歩く人の数がこころなしか少ない。

よく見ると人の足がまだ行っていない通りに向かっているのに気づく。

気になってそのとおりに向かうとあちらこちらからいい匂いが漂ってきた。


「ここは料理店が並ぶとおりだったのか。空腹度も減ってきているし入ってみるか」


そう思い立って適当な酒場に入る。

そこでは客たちが思い思いに飲み食いをしており、楽しげに言葉を交わしていた。

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