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灰色の声の向こう

作者: 一月の山羊
掲載日:2025/11/09

むかし、むかし。

あるところに、お花が大好きな女の子がいました。


街の近くの山には、

一年中、光を放つように咲く、不思議なお花がありました。


誰にも届かない場所で、

ただひとり、静かに咲き続けるその花が、

女の子は大好きでした。



ある日、山を登ると、

その花に、いくつもの小さな種がついていました。


見つめていると、一粒の種が、

ポロン……と、足元に転がってきました。


女の子は思いました。

「この花を、自分の手で咲かせたい。」



街に戻り、女の子は土を耕しました。

けれど、そこに集まった大人たちは言いました。


「どうせ無理だ。」

「あの花は、山でしか咲かないんだよ。」


それは、

かつて諦めた人たちの、

重たく、灰色の声でした。


それでも女の子は、

泥まみれになりながら、種を守り続けました。



月日が流れました。

けれど芽は、出ません。


大人たちの言う通りなのか、

心が冷たくなりかけた、その時。

一匹の黒猫が、そっとやってきました。


「どうして、山で咲くのか。

その理由を、考えたことはあるかい?」


そして、去り際にこう言いました。


「声を塗り替えるのは、花ではなく、君自身だよ。」



それから女の子は、考えました。

水を変え、土を変え、肥料を変え、

何度も山へ行っては、確かめました。


諦めずに、

雨の日も、風の日も、

ただ一生懸命に。



そして――ある朝。


外から、たくさんの声が聞こえてきました。


「ありがとう。」

「よくやった。」


それは、

温かい色を持った声でした。



女の子が外に出ると、

庭いっぱいに、光が広がっていました。


そこには、

あの山の花が――


まばゆい光を放って、咲き誇っていたのです。



灰色の声の向こうに、

ほんとうの色が咲いた朝でした。

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