40 エピローグ「凱旋。緑の海に包まれて」
# エピローグ「凱旋。緑の海に包まれて」
双竜盆地の湖畔を後にしたナナシィを待っていたのは、想像を超えた光景だった。
広場一面に集まった庶民たちが、緑の横断幕や旗を掲げ、波のように揺らしている。
「ナナシィ!」
「優勝おめでとう!」
歓声が渦となり、街全体を包み込む。
ナナシィがゆっくりと姿を現すと、子どもたちが駆け寄り、緑の花飾りを手渡した。
「これ、作ったんだよ!」
「お姉ちゃんが勝つって信じてた!」
その無垢な笑顔に、ナナシィは思わず涙ぐむ。
ティナは群衆の中に混じり、控えめに旗を振っていた。だが目元はしっかりと笑みを浮かべ、彼女なりの誇りを示している。
「……よくやったわね、ナナシィ」
観客席にいたときは硬い表情を崩さなかった重鎮たちも、この場では姿を見せ、庶民と共に拍手を送っていた。
セラフィーナは鮮やかな真紅のドレスで人々を導き、誇らしげに声を上げる。
「レッド派の名に恥じぬ勝者を、皆で讃えましょう!」
そのとき――広場の中央に緑の横断幕が大きく広げられ、群衆全員の手で持ち上げられた。
上空から眺めれば、まるで大海原のように、緑がうねりを描いている。
ナナシィはその光景を見て、胸の奥から言葉があふれた。
「ありがとう、みんなが、“祖母”が、私をここまで連れてきてくれた……」
翡翠玉は、優しい輝きをいつまでも宙に放っていた。
空を仰ぐと、柔らかな風が吹き抜け、翡翠玉がきらりと光る。
勝利の証を胸に、彼女は歩みを進める。
――未来へ。
(完)
茶園メイド、ナナシィの物語はここで完結です。最後までご覧いただき、ありがとうございました(^^)




