35-1 余韻_庶民の熱狂とティナの視点
## 余韻パート
第一部 庶民の熱狂とティナの視点
双竜盆地の広場は、まるで祭りの夜のように熱を帯びていた。
決勝進出を果たしたナナシィの名は、子供から老人までの口に上る。
「見たかい! あの竿さばき!」
「やっぱり緑の旗は正解だったな!」
屋台の飴細工は翡翠色に染められ、「ナナシィ飴」と名を変えて飛ぶように売れる。
大手の菓子舗までが便乗し、翡翠玉キャンディや翠玉茶饅頭を並べていた。
ティナはその熱気を、釣具屋仲間や商人たちの輪の中で見守っていた。
だが、その耳は庶民の歓声だけでなく、重鎮たちの部屋へと届く回線にも繋がっている。
ひそかに情報を拾い、声を繋げ、しかるべき場に伝える。
――釣具店主の顔をしながら、影では「声の導管」として暗躍していた。
「……これなら、届くはず」
緑の旗を掲げる子供たちを見て、ティナは小さく笑みを浮かべた。
庶民の熱狂が、ナナシィを支える最大の武器になると信じて。




