24 水晶会館前での小競り合い
# 水晶会館前での小競り合い
ナナシィの勝利に沸き立つ歓声を背に、来賓席を後にする二つの一団。
赤を象徴する衣をまとったレッド派の重鎮たちは、誇らしげに胸を張り、護衛の騎士と共に石畳を進む。
一方、青の紋章を掲げるブルー派は、表情を曇らせ、歩調もどこか乱れていた。
市場から溢れる庶民のざわめきが遠くに響くなか、彼らは同じ目的地である水晶会館へと向かっていた。
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建物前の遭遇
水晶会館の正門。水晶を嵌め込んだ重厚な扉の前に、既にブルー派の数人が立ち止まり、憤懣をあらわにしていた。
「……まさか、あの娘にセイラス殿が敗れるとは」
「レッド派の仕組んだ茶番に違いない!」
そこへ、石畳を踏み鳴らして現れたのはレッド派の重鎮たち。
互いの視線が交差した瞬間、場の空気がぴんと張り詰めた。
「ほう……茶番と申したか」
レッド派の老議員が口の端を吊り上げる。
「裏切り者を拾って英雄と持ち上げたのは、どこの派閥であったか」
「裏切り者? 笑止。見限られた者を救うのは、我ら青の慈悲である」
ブルー派の壮年が吐き捨てるように返す。
「それを利用して晒し者にする貴様らの浅ましさこそ、真の恥だ」
一触即発
両派の護衛騎士が半歩前に出る。
剣にはまだ手を掛けぬものの、視線は鋭く、今にも火花を散らしそうだ。
通りを行き交う庶民が足を止め、ひそひそ声を交わす。
「おいおい、会館の前で始める気か……?」
「やめとけ、こんなところで刃が抜かれたら……」
沈黙が重くのしかかる。
次の一言で、本当に剣が抜かれるかもしれない。そんな気配に、空気が張り裂けそうだった。
時間差での入館
だが、先に動いたのはレッド派だった。
「……我らには祝うべき議題がある。愚痴をこぼす暇はない」
老議員が冷ややかに言い放ち、背を向ける。
重厚な扉が開き、レッド派の一団は悠然と中へ消えていった。
残されたブルー派は苦々しい表情で互いに顔を見合わせ、拳を握りしめたまま扉の前に立ち尽くす。
「……必ず報いを受けさせてやる」
低く呟かれた言葉は、夜露に溶けて消えていった。




