20-2 第5戦 裏切りの騎士 ~ 後編
# 裏切りの騎士
強烈な引きに竿が軋む。
セイラスは歯を食いしばり、剣で水面を切り裂きながら叫んだ。
「私は旗を信じた! だが旗は私を信じなかった!」
その叫びにナナシィの心が震える。
「でも……私はまだ信じたい!どんなに揺らいでも、仲間や民の声を……」
観客席から「頑張れナナシィ!」と声が飛び、庶民の応援が波のように押し寄せる。
その声は魔術師を介して水晶会館にも届き、レッド派の議員たちの耳を打った。
決着のときが来た。
大魚が跳ね、竿が大きくしなる。
セイラスは剣を突き立て、強引に制御しようとするが、その一瞬に隙が生まれた。
ナナシィの仕掛けが魚を包み込み、翡翠玉がほのかな光を放つ。
水面を割って現れたのは、ナナシィの竿に掛かった勝利の魚だった。
観客席が沸騰する。
「ナナシィ嬢の勝利だ!」
「裏切り者が敗れた!」
その叫びに、セイラスは静かに剣を鞘に収めた。
「……民の声。お前が信じられるなら、それでいい」
そう呟き、青の紋章を胸に残したまま、背を向けて去っていった。
## 余韻
ナナシィは膝をつき、深呼吸を繰り返した。
翡翠玉は静かに輝きを収め、祖母の声が遠のく。
観客席からの歓声は、罵声ではなく、確かな称賛へと変わっていた。
――裏切りの騎士を越えた時、ナナシィは一回り強くなっていた。




