17-2 市場の影響 ~ 後編
## ティナの個人店
そして、通りの一角。木の看板を掲げた小さな店には、人だかりができていた。
「ナナシィ嬢の竿と同じ物はここで買えるの?」
「升仕掛けっていうのを見てみたいんだ!」
子供から大人まで押し寄せ、店の中は身動きが取れないほどだ。
カウンターの奥で、店主ティナは慌ただしくも笑顔を崩さず応じていた。
「はいはい、順番にお願いしますね。升仕掛けは数量限定ですから、一人一本までですよ」
手際よく商品を渡しながら、耳は客たちの噂話を逃さない。
「やっぱり庶民の味方だよ、ナナシィ嬢は」
「オルフェン様の竿? あれは金持ちしか買えないだろ」
「でも技術はすごいんだよな……惜しい人だ」
ティナは小さく頷き、心の中で情報を整理する。
(ふむ、ナナシィは完全に“希望の象徴”として語られてる。一方でバルド様への同情も少し……これ、ブルー派の揺らぎに繋がるかもね)
やがて店の外まで列が伸び、周囲の店員が困惑の表情を浮かべる。
それでもティナは飄々(ひょうひょう)と客をさばき、時折「情報屋」の顔を垣間見せながら商売を続けていた。
大手は冷え込み、中規模は困惑し、個人店は活況を迎える。
一つの試合が市場全体を揺さぶり、その余波は派閥の思惑を超えて広がっていった。
ナナシィという存在が、また一つ大きく民衆に刻まれてゆく……。




