13 ティナの報せ
ティナの報せ
夜更けの釣具店。表の暖簾は下ろされ、人気も途絶えた頃。
裏口の扉がわずかに軋み、ティナが音もなく滑り込んできた。
腰には見慣れぬ小袋、手には薄汚れた羊皮紙。
「……あんたなら、まだ起きてると思ったよ」
彼女は低い声で笑い、背後の扉をすばやく閉める。その身のこなしは、とてもただの商人とは思えなかった。
羊皮紙を机に広げると、短い走り書きが並んでいる。
《薔薇窓の外に“見えない影”。高位魔術師の迷彩。さらに供給源あり》
ナナシィは息を呑んだ。
「……これ、どこで……」
問いかけかけた唇を、ティナは人差し指で制した。
「聞かない方がいい。市場の裏路地なども、声を拾える場所があるの」
言葉の奥に、暗闇を滑るような気配がにじむ。
ナナシィの胸がざわめいた。
「……じゃあ、私の勝利は……」
ティナは首を振る。
「違う。あんたが戦ったのは本物だ。ただ、上の奴らは“何か”を仕組んでた。それだけのことさ」
ナナシィは震える手で翡翠玉を押さえた。
(私の力じゃ……なかった?)
ティナは一歩近づき、声を潜める。
「でもね、あの時の歓声は、全部あんたに向けられたものだよ。魔力じゃ作れない。人は嘘をつくけど、歓声だけは嘘をつけない」
闇の中、ティナの瞳だけが光を帯びていた。
ナナシィはその眼差しに、不思議と安心を覚えていた。
ただの道具屋ではなく、「シーフ風味」にしたw




