09 ティナ「揺れる心と決意」
ティナ視点「揺れる心と決意」
第三戦の勝利が告げられた瞬間、広場は歓声に包まれた。
映写幕に映るナナシィの姿を見上げながら、ティナは胸をぎゅっと掴んだ。
「ナナシィ……!」
友人の勝利が嬉しくてたまらない。だが、その喜びに混じって、別の感情が渦巻く。
庶民たちが湧き立つ一方で、上層の薔薇窓からは冷笑が漏れているという噂。
スポンサーたちが次の試合に向け、さらに強引な仕掛けを準備しているという囁き。
そして市場に飛び交う、奇妙な竿や仕掛けの注文書の数々。
ティナの店にも、見覚えのない符丁で書かれた注文が舞い込んでいた。
“ブルー派の技術者が新型の仕掛けを求めている”――そんな噂も耳にする。
「このままじゃ、ナナシィはまた狙われる」
彼女は小さく息を吐き、決意を固めた。
釣具屋のカウンターに腰掛け、ティナは帳簿を開いた。
数字の羅列の中に、ふと不自然な取引先の名が浮かぶ。
表向きは商人だが、その背後にいるのは、やはりスポンサー筋。
「やっぱり。これは、ブルー派の影響」
ティナの鼓動が早くなった。だが恐怖よりも、友を守りたい思いの方が強かった。
ナナシィは竿を握って戦う。ならば、自分は……言葉と情報で戦おう。
「ナナシィ!次の試合では、私が“武器”になる」
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夜、広場の喧騒が遠のく中、ティナは帳簿を閉じた。
釣具店の灯りが一つだけ静かに揺れている。
その小さな灯火が、やがてナナシィの背を押す大きな光になることを、彼女自身はまだ知らなかった。




