4.5話 前編 とある聖騎士の暴走
「ちょっとユーリシア、みたわよ。もしかしてあの子がずっと探してた子?」
大聖堂に戻ると同僚のブランローズが笑みを浮かべて話しかけてくる。
「あぁ、そうだ。ようやく見つけた」
「やっぱり!あんたの言動、気持ち悪くて笑っちゃったわ。あんた、騎士っぽい言動ができたのね?」
「うるさい」
「それにしてもどうしてこんなに見つからなかったのかしら?」
「『翡翠の天使』の可能性が高いからだろう」
「・・・え?!あの『翡翠の天使』だったの?」
「あぁ。孤児院長が脅威として排除するためだろう」
「まぁ、そうよね。翡翠の天使が見つかったとなれば、大聖女に祭り上げようとする輩もいるわよね。腐敗した貴族たちは自分たちが動かせるお人形がほしいわよね~。」
「とはいえ、あんな古臭い小屋に私のリリを押し込めるのは愚策すぎる。処罰せねば」
「ちょっとあんた火力高すぎよ。」
「いや、これは万死に値する。」
「こわ・・・」
「ようやく見つけた。私のリリ・・・。」
「ちょっと、あんた目がいっちゃってない?大丈夫?」
「とにかく私のリリはあの小屋にすみ続けたいそうだ。買い取ってくる」
「え、まじ?」
「あぁ、当たり前だろう。追い出されるかもしれない恐怖に健気に耐えていた」
「そうなんだ・・・まぁ理由を知らなければそう思うかもね」
「ようやく見つけたんだ。私が守らなくては」
「囲い込むの間違いじゃなくて?」
「・・・。」
「・・・自覚があるだけましと思うことにするわ」
あぁ、私の大好きなリリちゃん。
リリちゃんは覚えてなくても私が全部覚えてるから。
手先が不器用だった私が知っているリリちゃんはもういなくても、あの歌声が教えてくれる。
今度こそ私のすべてをかけて守るからね。