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冒険者ヘルムズの受難

 ――全ては、これが元凶だ。

 

 大暦1313年。

 

 「なぁ、コール地方に出現した迷宮、良かったら一緒に攻略しないか?」

 

 その問いかけは、ヘルムズにとって光明であったのだ。

 ヘルムズは四等級の冒険者で、固有スキルは「耐性」。

 攻撃された回数が増加すればするほど耐性を獲得するというスキルである。

 しかし四等級に分類されるほど素の体力は皆無であるため、攻撃を耐え続けることは不可能であった。

 単独での攻略はほぼ不可能。パーティーを組んでも、どの職にも当てはまらない。

 必定、ヘルムズは孤独だった。

 冒険者を辞めろと何度も責め立てられ、時には上の等級の冒険者にリンチにされたこともある。

 

 ――それでも。

 

 どうせ冒険者から追い出されれば野垂れ死ぬだけ。

 それなら、惨めったらしくしがみついて何が悪い。

 一人で足掻き続けた。

 一人で生き残った。


 「俺はレイズだ。三等級冒険者で、この『黒い女神』のリーダー。短い間だが、よろしくな」


 「ど、どうも。よろしくお願いします。オレはヘルムズです。オレみたいな奴を選んでくれて、ほんとに感謝してます」


 「心配すんな。途中まで入ったはいいが、塞がった岩を持ち上げるのに四人だと厳しくてな」

 

 レイズの他にホームズ、ライト、そしてナガン。

 パーティー編成は四人で、レイズが変則で前衛、中衛、後衛を務める安定したパーティーだ。


 *   *

 

 その結果、罠に嵌められた。


 「そいつが次の餌だねぇ?身体は弱いが、生命力は強そうだ。みんなにはご褒美をあげないと」

 

 淫魔、夢魔、サキュバス。

 ともかく色々な呼び方があるその存在が、群れを成していた。

 亜人すら目にしたことのないヘルムズはこれが現実なのかすらも疑わしく、地獄にも錯覚した。

 背後で他のパーティーの男たちはいいように貪られている。

 餌を誘き出す代わりに、欲求不満を解消しているらしい。

 そして、ヘルムズはそれを縛り上げられながら見るしかできない。

 


 「残念だけど、あなたは餌。そっちの肉壺の中でゆっくり消化されるのぉ」


 「……何あのキモい肉は」

 

 尻尾に首を掴まれ、抵抗するまもなく肉壺の中へと放り込まれた。


 「それは羊水。そこに眠る至高の御方を目覚めさせるための揺籃。あなたは光栄にもその餌になれるのよぉ」


 「普通に迷惑なんですけど」

 

 息が苦しい。

 呼吸ができない。

 サキュバスの高笑いが反響する中、ついにヘルムズの意識は途絶えた。

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