Part5:独り剣舞
ちょうどその頃、リンは塾から帰っていた。リンの家の前に黒い影…私たちの見た『怪異』がいた。夜も遅かったけど、街灯の下なのに真っ暗なところがあって、それを不審に思ったらしい。
だけど、リンは常識というものを信じない人で。
「え〜っとありゃ誰だ?まぁ良っか。家に帰りたくないし、ちょっと遠回りするか。」
と、リンは交差点を曲がったのだ。すると、怪異はすーっとリンの方へと近づいてきた。
ーーあれ?あれは零?いや、違う、零は僕の幻覚だ。こんなにも長く見え続けるはずがない。それに、第一、零があんなに醜いはずがない。それは自分が一番分かっている。つまりアレは不審者、あるいは、危険物。ここまでの思考に0.5秒を費やした。
リンは冷静に月光の長刀を構えた。怪異はどんどん近づいてくる。怪異が襲いかかってくると同時に、リンは素早く長刀を振るった。刀は光を放ち、怪異の身体を切り裂いた。しかし、怪異は再生するように立ち上がり、再び攻撃を仕掛けてきた。
「増殖しないプラナリアってとこか。厄介なもんやな。なら、栄養が尽きるまで削るだけだね!」
とリンは全力で敵に向かって突撃し、月光の長刀をブンブン振り回した。怪異は霧散し、今度は完全に消え去った。そして、ふと口をついて出てきた言葉。
「…この影は、一体何を探していたんだ?」
〜〜予告〜〜
新連載「【抗争者】掻き傷だらけの、この世界で。」
09/07、08:10に「Vision1/Part1」を公開予定!
ある日、リンは、一日中作業を続けていた。人差し指と中指しか使っていないのに、タイピング速度が異様に速い。そしてリンは、その中指でEnterキーを勢いよく鳴らした。
「…よし。」
人間がデジタル上で行う全てのことを可能とする"人工知能"、所謂"デジタル限定の人型ロボット"のようなものが完成間近なのだ。その日は、その安全性の試験を行なっていたのだ。
そして今、私はVRゴーグルとヘッドホン(※イヤホンは黒羽に使われてる)、そしてリンお手製の機械(※なんか郵送されてきた)を装着して、"人工知能"とリンが一緒に開発したVRゲームに入ることになった。黒羽は先に入っているみたい。
なんでもリンに言わせると、これで月光の力を扱う訓練ができるのだそう。私たちが月光の力を使うと、"お手製の機械"がそれを検知&吸収して、VRの世界の中に反映されるらしい。
…不可解な出来事は、そこから始まった。