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日常。  作者: 海凪 悠晴
1/11

プロローグ

 華やぎつつある商店街にクリスマス・キャロルが流れている。年の暮れの十二月、いわゆる師走のある日の夕方近い時間。

 今朝は少し冷え込んだので厚めのコートを羽織って来たが、今日は日本海側のこの土地にしてはめずらしい冬晴れの日だったので、昼になって気温が上がってきた。だから、厚めのコートでは下着が少し汗ばむくらいだ。

 今、俺は友人とふたり、男同士でラーメンを食べに行くところである。午後四時に食べるラーメン。夕食というにはかなり早めではあろうし、おやつというにはちょっと重めではあろう。


 この一年も終わろうとしている。今の「日常」を過ごすようになってから三年ばかりの時が過ぎた。あっという間に月日は過ぎていくものだ、と年齢を重ねるたびに思いはする。

 街に出ていると否が応でも仲良しそうな男女のペア、いわゆるカップルを見かけることになる。平日の夕方前なので人通りはそう多くないけれど、高校生同士だとか、そうでなくても学生同士らしい若いカップルを、ちらほら見かける。俺たちもふたりで歩いてはいるものの男同士だ。どうしても、男女のペアを見るとうらやましいというか、嫉妬してしまいそうになる。とはいえ、カップルを見かけるたびにいちいち嫉妬の感情を抱いていては、街歩きなんてとてもできはしない。「日常」の光景のひとつとして、脳内でスルーする以外にあるまい。


 そんなところで、ふと見かけた学生らしき女性。道の脇でひとり、携帯電話の画面を見ながら、今にも泣き出しそうな悲しそうな顔をしている。その人に何があったのかはわからないけれど。なんだか昔の彼女に面影が似ているだけに少し気になる。

 昔の彼女。そういうと聞こえはいいかもしれないけれど、俺にとってそう呼べる唯一の存在だ。


「おい、前原(まえはら)君、何ボーッとしてるんだよ。入るぞー」

 そのとき、友人の声掛けで我にかえった俺。行くつもりだったラーメン店の前まで来ていた。



 その日は結局、夜になっても昔の彼女に面影がそっくりな女性のことが頭の隅から離れられず、遠い過去になりつつあるはずの学生時代を久々に回想してしまった。

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