第91話 負けたのか
「ゼルロ……、樣……!」
とある巨大な岩の前で両脚がない男――アリトールが喘ぎながら喋る。
左手の甲には『闇』と刻まれているが、血に染まっていてよく見えなくなっている。
男の周囲の地面に血はついていなかった。
しかし、男から血がドクドクと流れ出ている。
「も、もうし……わけ……ありません……」
岩に向かって言う男。
『――負けたのか』
岩から男――ゼルロの声が聞こえる。
まるで岩が言葉を発しているみたいだった。
「ドララは……どこにいるのかわかりませんが……!」
『ドララは死んだ。心臓を貫き通されてな』
岩から聞こえてくる声に、アリトールは頭を少しだけ下げた。
『お前も負けたのか。正直、期待していたんだがな』
「申し訳ございません……! ただ……、あの鬼は……! アシトという鬼は……、危険です……!」
『言い訳か。それを聞くのはあまり好きではないんだがな』
「本当に……、あいつは……、ヤバイです……!」
『そんなことは知ってる。だからお前とドララを行かせたんだ』
「では……、ではなぜ……! なぜスカーを共にしてくれなかったのですか……!」
アリトールの言葉を聞いたかのように、岩は黙る。
アリトールの喘いでいる声だけが周囲に響く。
『スカーには別のことをしてもらった』
「スカーがいれば勝てたはず……! せめて他の操者もいれば……!」
『それぞれに役目があった。俺の命令で皆その行動をしていた。しかも、敗因はドララにある。ドララが最初から強力な毒を使用していればよかっただけの話だ』
岩の言葉にアリトールは黙る。
目を細くしていた。
このときには、アリトールは喘いでいなかった。
ただ、静かに呼吸していた。
『お前の体力もないみたいだな、アリトール。こで力尽きるか?』
「…………」
『返す言葉もないみたいだな。疲れたなら死んだほうがいい。今からお前を助けに行けるほど、皆暇ではないのだ。俺が渡した爆弾で死ぬといい。苦しまずに死ねるからな』
『岩』が最後に放った言葉はこれだった。
これ以降、『岩』が喋ることはなかった。
ただ沈黙が空間を支配する。
やがて『ギュルルルル……』という音が聞こえた。
アリトールがその方向を見ると、オオカミ型のタハがアリトールに向かってきていた。
「――なんで俺だけが……。俺だけこんな目に……。ゼルロ様……。みんな……」
タハがアリトールに走ってくる。
そしてタハはアリトールの背中に噛みついた――
作者が学年末考査が近いので、しばらく投稿できません。……中学生最後の定期試験……。嫌だけどやりたい……。というわけで! 3月の初めの方まで投稿できません! 本当に申し訳ありません……。次はテストが終わって元気な状態で投稿させていただきます!




