第89話 アリトール戦、終
「ゔあああぁぁぁぁ!」
男の叫び声が聞こえる。
そしてその瞬間、闇が消えた。
男は俺から結構離れたところにいた。
手と腕が赤い。
火傷してるみたいだ。
「お前……、トルアキナなのか……!」
男はあえぎながら俺に訊く。
多分俺の右頬を見てこんなことを言ってるんだと思う。
……ってことは、今の俺はトルアキナ族化に成功してるってことか。
セトオギロは大丈夫かな?
……うわ、俺の隣で苦しそうにしてる。
熱かったんだろうな……。
ごめんな、本当に。
「質問に答えろ! トルアキナなのか!」
「俺とお前を一緒にすんなよ。俺は正真正銘『鬼』だ」
「クソがよ……!」
男は口から血を吐く。
結構黒い。
……ここで油断しちゃいけない。
早く殺さなきゃ――
――そう思って、男に掌を向けようとした。
すると、背中に鈍い痛みが走った。
鈍器で思いっきり殴られた感じだ。
俺は前に倒れる。
「アシト……、テメェ……!」
セトオギロ……、早くあいつ殺せよ……!
「……ハハ……! ハハハ!」
急に笑い出す男。
「お前も! お前も完全にコントロールできるわけじゃないみたいだな! そうだ! そうだよな! お前ごときがトルアキナの力を操れるわけがない!」
……こいつ、そうとう怖かったんだろうな……。
俺はすでにこういうやつを二人見てる。
本気で怖がってるやつは、強がる。
チルタも、さっきの女――ドララもそうだった!
だから、こいつ――アリトールも!
「俺が……トルアキナ族の力を操れないと……?」
「ああ! そうだ! できないんだよ! 混乱させやがって!」
アリトールは俺に近づいてくる。
俺は頭をあげ、頑張って立とうとした。
でも立てない。
力が入らない。
「……アリトール、お前は……、ゼルロに見放されてるみたいだな……」
「お前ッ……! なんで俺の名前を……!」
「お前は見放されてるんだよ……。まだドララとチルタのほうが信頼されてたみたいだな……」
「なぜ……、あいつらの名前を……!」
アリトールは少し驚いた表情をした。
でも、一瞬で表情を戻す。
「とッ、とっとと死ねよ!」
アリトールは俺に殴りかかる。
……来た!
アリトールが俺にある程度近づくと、アリトールの動きが止まった。
アリトールの下にある地面から紐のようなものが数本伸びていて、それがアリトールの脚をからめている。
「グアッ……!」
アリトールは怯えた表情をする。
これで勝った……。
俺は頑張って立ち上がり、アリトールに近づこうとする。
「――クソがよぉぉぉ!」
アリトールが叫ぶと、突然アリトールの両脚が切断された。
そしてアリトールは叫びながら、煙のように消えた。




