第88話 トルアキナ族化した
さてと、どうやって敵を殺すか……。
この闇じゃ、俺はまともに動けない。
こういうときにトルアキナ族化できればな……。
……?
なんだ?
なんか身体がめっちゃ熱い。
待って、これって……。
トルアキナ族化じゃん!
めっちゃいいタイミング!
そしてあんまり苦しくない!
ありがたい!
前は喘ぐくらい苦しかったけど、今は全然我慢できる!
『さーてと、どこから攻撃しよっかなー?』
男の声が聞こえる。
この調子だと、俺がトルアキナ族化したってことはまだ気づいてないらしい。
それともあんまり驚いてないだけかな?
『トルアキナ族化できるのは想定内』みたいな感じに思ってるのかな?
でもチルタはトルアキナ族化した俺に驚いてたな……。
ま、やってみるか。
……いや、どうやって攻撃するんだ?
どこに男がいるかもわかんないのに。
やみくもにやってみるか?
でもそれじゃセトオギロも燃やす可能性もある。
それだけは避けたいな……。
「――アシト、動くんじゃねぇ」
誰かが俺の肩を触る。
それと同時にセトオギロの声。
うん、こいつ多分セトオギロだ。
……いいこと思いついちゃった。
「なぁ、セトオギロか?」
「ああ、そうだ。あの操者、移動しまくってる。なかなか攻撃してこねぇ……」
「でもお前、あの男がどこにいるのかわかるんだろ?」
「だいたいな。この暗さは初めてだけど……」
「そうか……。あのさ、ルイナたちと結構離れてるよな? 俺たち」
「かなり離れてるぜ」
かなり離れてるんだ……。
その割には俺、一瞬でここまで着いたな……。
「よし……。じゃあセトオギロ、俺から離れるな」
「? 何言って――」
「俺に抱きついてろ」
……何言ってんだ、俺。
『抱きついてろ』って言ったよな、俺。
抱きついてくれるわけねぇか……。
「わかった」
セトオギロ、俺に抱きつく。
うん、素直でよろしい。
そしてこいつ、意外といい匂いするな……。
シャンプーとかリンス使ってないもんな、こいつ。
そもそもこの世界にシャンプー、リンスなんてねぇもん。
でもなぜか脱毛剤はあるんだよ。
そして育毛剤はないんだよ。
面白いな、この世界。
……それより、ここからは集中しなきゃ……!
俺は全身に力を込める。
身体がどんどん熱くなっていく。
「ちょっ、アシト! 熱い!」
「我慢しろ!」
「無理だ! このまま蒸発しちまう!」
……確かに蒸発するかも。
チルタ、俺の拳に触れただけで蒸発したもんな。
あれはすごかった。
「蒸発しねぇように耐えろ!」
俺は根性論を言って、もっと力を込めた。




