第85話 『リュウ』の操者
「! その姿……!」
ルイナの姿を見た女が目を見開く。
そんなルイナは、自身の右腕を見ている。
「……変な感じ。身体の中で変なのが流れてるみたい」
ルイナは右手を握りしめる。
爪は手袋を貫通して、掌に刺さって、血が流れる。
でも次の瞬間、変化が起こった。
ルイナの右手から流れてる血が、さっきの液体みたいになった。
まるで意思があるかのように、女に向かう。
女はその血を急いで躱し、血はそのまま女を通り越した。
「でも悪い感じじゃないね」
ルイナの右手から『シュー……』という音がする。
ルイナの右手についていた血がなくなってて、傷もなくなってるみたいだった。
「……まさか! まさかお前が!」
女が何かを思い出したような表情をする。
ルイナを怖がってるみたいだ。
「お前が『リュウ』の操者か! お前が! お前なんかが! そんなはずない! ゼルロ様が封印したはずだ!」
女は大声でそんなことを言いながらルイナに斬りかかる。
それと同時に、俺たちの体内にある毒も強くなったみたいだ。
今までの比じゃない。
そしてなんで俺は……こんなに落ち着けてるんだ?
ルイナに向かう女。
ルイナは一歩も動かず、女を細い目で見ている。
女の握ってる短刀がルイナに当たる寸前だった。
どう考えても、この距離で躱せるわけがない。
すると女が突然、ルイナから離れるように吹っ飛んだ。
女は地面に片膝をつき、急いで顔をあげる。
それと同時に、ルイナの前に赤色の液体が現れた。
それは女に向かう。
さっきと同じように、まるで意思があるように。
女はその液体を躱す。
そしてまたルイナに斬りかかろうとした。
するとまた女が吹っ飛んだ。
今度は右側に。
女は短刀を地面に刺し、それを握ってその場で止まる。
「嘘だ嘘だ! そんなはずない! なんでここに『リュウ』の操者がいるの!? なんでよ!」
女は声をあげて泣き出す。
そうしながらまたルイナに斬りかかる。
さっきよりも動きが速くなってる。
でも、また女はルイナから離れるように吹っ飛ぶ。
「なんで私が……! なんで私が――」
女が言ってる最中、今度はルイナのほうに吹っ飛ぶ。
その先には、赤色の結晶を持ったルイナがいた。
先がとがってて、きっと簡単に女の身体を貫通するだろう。
「嫌だよ! こんな死に方――!」
女がそう言ったとき――
女は結晶に刺さった。
しかも左胸に。
女は動かなくなり、力が抜けたようにダラリとなる。
そして、握っていた短刀がゆっくりと手から地面に落ちた。




