第82話 毒解
女の言葉を俺は聞き逃さなかった。
『毒解』。
どこかで聞いたことのある響きだ。
「――地解!」
……思い出した。
チルタだ。
あいつ、そんなこと言ってた。
それで紋様が消えて、強くなってた。
……じゃあヤバイじゃねぇかよ。
今までもかなり強かったのに、今からもっと強くなるのかよ……。
「どうしたの? かなり驚いてるみたいだけど」
女は落ち着いた口調で言う。
「……あ、見たことある? こういうの。……そういえばチルタと戦ったことあるんだっけ? チルタ、使ったんだ、これ」
女は俺の顔を見ながら言う。
さっきより余裕がありそうな顔してる。
……そりゃそうだな。
絶対強くなってるもんな、あいつ。
普通の状態でも苦戦してたのに、これじゃ確定で負けるじゃん……。
「じゃ、早速喰らってもらうよ。……あ、あと私の毒、さっきよりも強くなってるから」
じゃあもう俺戦えないじゃん。
ルイナしか戦えないじゃん。
その瞬間、また気分が悪くなった。
めまいがして、吐き気がする。
……マジでこれ嫌だ。
やっぱりルイナは全然苦しくなさそう。
なんでルイナだけ?
なんかずるくない?
あの女、ルイナにだけ毒やってないっていうわけじゃないよね?
「あーあ、かわいそうに。私の毒で死ぬなんて。チルタなら即死で苦しまなくてすんだのに。あと、私とアリトール、どうやって離したの? 早くアリトールのとこに戻りたいんだけど」
そう言ってくる女に、ルイナはまた殴りかかる。
女はルイナの拳を余裕の表情で躱し、ルイナの腹を殴る。
ルイナは上に吹っ飛ぶ。
女は跳躍してルイナのところまで行き、またルイナの腹を殴る。
ルイナはすごい勢いで地面に落ちてきた。
俺はまだ毒に慣れない。
そもそも、この毒に慣れることができない気がする。
苦しみを耐えながら戦うか?
それだとルイナの足を引っ張ることになる。
「初めてだよ。こんなに戦えたのは」
女がルイナの隣に着地する。
ルイナは急いで女から離れる。
動き方的に、ルイナの脚の骨が折れてると思う。
「あとさ、勘違いしてほしくないんだけど。チルタと私、同じくらいの強さだと思った? チルタ、最近これできるようになったんだよ? 確か……、『必殺技』とか言ってたっけ? 本当、変だよね」
女はまたルイナに近づく。
ルイナは動かない。
「もう終わりだよ。おやすみ」
女が言い終わったときだった。
突然ルイナが微笑んだ。
「やっぱりトルアキナ族も……ってか操者も必殺技、あるんだ」
「だから、『必殺技』って言ってんのはチルタだけ。私はなんとも思ってない。……で、何が言いたいの?」
「いや、やっはりみんな同じなんだなって」
ルイナ?
「私もあるよ。必殺技」
ルイナは腰を低くした。
よく見ると、口から血を流している。
「じゃ、ここからは、お互い取り返しのつかないくらいになるくらい本気でやろっか」




