第80話 二人を分ける
「やっぱお前も殺そ」
女の声がなぜかよく聞こえた。
キイラは女を睨んでいる。
そんな女は無表情。
ヤバイ、キイラが狙われた……。
この女、最初にキイラを殺すのか?
いや、それとも目標の俺か?
それとも毒が効かないルイナか?
それとも動けないマユ?
男を助けるために、不意をつくかたちでセトオギロを先に殺すかもしれない。
いや、全員一度に殺す可能性も高い。
きっとこいつは最初、全員に毒を浴びせたんだ。
だから全員にもう一回毒を浴びせてくるかもしれない。
「アリトール、鬼と死神、あとこの男は私ね」
「わかった。女は俺がやる」
男と女は互いに顔を合わせた。
――今だ!
「焔壁!」
俺の技が発動した。
炎の壁が、男と女を囲むように現れる。
「変な抵抗だな」
男の声が聞こえる。
そして、炎の壁が消えた。
でも、これで行動ができた。
男の前にはセトオギロ、女の前には俺、ルイナ、マユ、キイラが立っていた。
それと同時に、男とセトオギロの姿が消えた。
「へー、考えたね。ってか、本当にそれでいいの? 私相手に四人も使って。死神一人じゃ、アリトールは殺せないと思うよ?」
「セトオギロを舐めんな。アイツ、意外と強ぇから」
うん、嘘は言ってない。
アイツは命を吸収でき――
ってか待って。
命を吸気できる?
じゃあこいつらの命吸収しろよ!
確か『生贄が二人必要』とか言ってたけど、ちょうど二人じゃん!
なにしてんの!?
お前の技で一瞬で終わんじゃん!
そう思ってたら、口に血の味が広がった。
俺は口から血を吐く。
興奮したら毒が回ったか……?
「その吐き方、興奮してたでしょ? 何に興奮してたの?」
「いや、それは……、秘密だ!」
「……もしかして、誰かの身体のこと、考えてた?」
ヤバイ!
めっちゃ誤解されてる!
「へ、へー……」
ルイナが俺を引く。
「違うんだルイナ! 俺は別に――」
「まぁ、そういうお年頃ですもんね」
マユにも誤解された!
「アシト……、えっと……、戦い終わったらいっぱい、そういうの考えな? 今そういうの考えてると、斬られちゃうから」
……もういいや。
何言っても無駄な気がする。
いや、まだ希望はある!
せめてルイナなら――
俺は左腕に握っている刀を顔の前に持ってくる。
それと同時に、刃と刃が交わる音がした。
女が短刀で、俺に斬りかかっていたのだ。
……なんで剣炎の炎が消えてるんだよ……。
このまま短刀蒸発させて、女も蒸発できたのに……。
『戦いでは気を緩めるな』ってことか。
「あーあ、面倒くさいけど、やりますか」
女は俺から一度離れ、短刀を俺に向けた。
「ボスの命令だから」




