第77話 毒
マジで吐きそう……。
でも吐けない……。
めっちゃつらいよ……。
「アシトたちに何したの!」
ルイナが女を睨みながら言う。
「見えない? この文字。『毒』って書いてあるんだよ」
女は左手の甲をルイナに見せつけるように、左手をブラブラと揺らす。
毒、か……。
じゃあ毒に侵されてるのか……。
「でもそこのネコちゃん、すごいね。毒が効かないみたい。野生動物には効かないのかな?」
「アシトをもとに戻せ……!」
「バカなの? 敵の頼みなんて、聞くと思ってんの?」
「じゃあ殺す!」
ルイナはその場から女のところまで高速移動する。
やっぱり速い。
多分俺、セトオギロ、マユ、キトナの中では一番速い、きっと。
ルイナは女に殴りかかる。
女は腰から短刀を出す。
刀身が紫色。
いかにも『毒』って感じ。
女は短刀をルイナに向ける。
ルイナは女の右胸を殴ろうとする。
当然女は右胸の前に短刀を構える。
しかしルイナは短刀に触れる瞬間に、女の後ろに超高速で回り込む。
女は急いで振り向く。
それでもルイナはそれと同時に、今度は女の背中に超高速で回り込む。
よく見ると、女の周りの地面に火がついていた。
女を囲むように、火の線。
多分、ルイナが通ったあとだと思う。
ルイナが超高速で移動するから、地面と擦れて火が出てる。
「……ネコさんには無理、か……」
女はルイナを追うのを諦めて、止まる。
そして掌を俺に向ける。
「毒砲紫」
女が言い終えると同時に、俺の身体が女と逆の方向に吹っ飛ぶ。
そして右腕から感覚が消えた。
地面に転がる俺。
受け身を取ってバランスを取ると、俺は右腕を見る。
右腕だけが、肌の色が紫色になっていた。
痛みも苦しみも感じない。
ただあるだけの存在、って感じ。
これは……右腕切断したほうがいいやつかな……?
「やっぱり鬼でも毒には弱いんだね」
女はルイナの攻撃を躱しながら俺に言う。
でもそろそろ慣れてきた。
気分が悪いことは変わらないけど、さっきよりも大丈夫になった。
これなら戦うことぐらいはできる。
剣炎で攻撃するか……?
そしたらあいつは俺に毒の攻撃をしてくる。
毒って多分、液体だよな?
それで毒を俺が蒸発する。
毒は気体になる。
気体になった毒って、無害なのか……?
俺が気体にさせちまったら、毒を周辺に撒き散らすことになる。
気体になると、体積は膨張するから。
それだと意味ねぇな……。
じゃあみんなを逃がして、俺が黒発射炎を喰らわせるか?
そうすればこの女ごと――
――いや、それで女が死ぬとは限らねぇな……。
チルタだって、あれに耐えたからな……。
「あ、もう動けるみたいだな」
俺の後ろから男の声がする。
急いで振り向くと、そこには右頬に紋様がある男がいた。
しかも、左手の甲に『闇』と刻まれていた。




