第74話 再びトルアキナ族の血を、
「今日はトルアキナ族の血を集めてもらうよ」
数日後。
またリビングに集められた。
ここにいるのは俺、ルイナ、セトオギロ、マユ、母さん、キイラ、ムルノ。
ムルノは俺の頭の上に乗ってる。
ツノとツノの間に乗ってくれてる。
「この前はルイナちゃんとセトオギロくんは集められなかったから、その分を集めてもらうよ」
「俺はどうして行く必要があるんだ?」
キイラが母さんに訊く。
母さんは微笑みながらキイラの顔を見る。
「キイラくんも行ったほうがいいよ? トルアキナ族化したほうがフィラン倒しやすいし」
「ならばなぜルイナとセトオギロの分を集めると言った? 俺も行くのなら、俺の分も――」
「それはアシトが集めてくれたよ」
? 俺?
キイラの分まで集めた覚えねぇぞ?
「アシトはあの洞窟に行く前からトルアキナ族化できた。だからアシトにはもうトルアキナ族の血はいらないの」
そっか、あのとき俺が集めたトルアキナ族の血は無意味だったのか。
その分をキイラにしたのか。
「一応全員に注射器渡しとくね」
母さんはポケットから五つの注射器を出す。
よくそんな量の注射器、ポケットに入れられたな……。
「今度はここに行ってもらうよ」
……ここ?
家?
不思議に思ってる俺をよそに、母さんは注射器を机において手を叩く。
するとリビングの空間が歪み、気づいたら俺たちはどっかの草原にいた。
その先には村があった形跡がある。
『形跡』というのは、燃えた跡があったから。
ってか、ここ……。
『そう、覚えてる?』
母さんの声が頭に響く。
ここはだいぶ前に俺たちが来たところ。
あれだよ、あれ、トルアキナ族と戦ったところ。
「……って、母さ――」
俺は母さんを見るために振り向く。
しかし、母さんはどこにもいなかった。
いるのは母さん以外のみんな。
『注射器はみんなの懐の中に入れといたから。それで集めてね』
懐?
服の中をのぞくと、確かに注射器が一本あった。
でも、みんなは懐を見ようとしない。
母さんの声が聞こえるのは俺だけなのかな?
じゃあ教えてあげよ。
「なぁ、母さんが俺らの懐に注射器入れといたって」
俺が言うと、みんな服の中を見る。
みんな一瞬だけ驚いた表情をした。
「やはり貴様の母さん、すごいな……」
でしょ?
同じ種族とは思えないよな、俺と。
いや、『鬼』の普通はこれなのかな?
俺が弱すぎるだけっていう可能性もあるな……。
「とりあえず、あそこに行けばいいんだろ?」
セトオギロがニヤリと笑って鎌を手に掴む。
そして村のところまで高速移動をした。
行動早いな……。




