第72話 キイラが家で
「おい、アシト」
家の中を歩いていると、キイラが話しかけてきた。
こいつが家に来てから数日が経った。
その間は特に何もしてなかった。
ただ普通に生活してただけ。
そしてこいつから俺に話しかけてくるなんて珍しいな……。
「貴様の母さん、化け物だな」
「は? 化け物? 見た目がか? 母さんの見た目は文句ないだろ? あんな美女いないだろ?」
「いや、見た目のことは文句はない。気になる部分はあるがな。それよりあの女、めちゃくちゃ強いな」
ああ、そういうこと。
確かに母さんはめっちゃ強い。
本気で俺が戦っても勝てないと思う。
「なんだよ、あの女。俺の技なんてまるで通じてないぞ。全然経験とかなさそうなのに」
「見た目で判断しちゃいけないって教訓になったか? ああ見えて強いんだよな、母さん」
「そもそも本当に貴様の母さんなのか? 若く見えるんだが」
「あ、そうそう! それ俺も思った! 本当に母さんなのかな?」
「生まれたときから共に生活してんだろ? わからないのか?」
……あ、ヤバイ。
そういえば俺みたいに、転生してきたやつって嫌われるんだよな?
じゃあ言わないほうがいいよな、生まれたときから母さんとはいないって。
「いや、生まれたときからそう思ってた」
「……そうか。だからか……」
え、何が『だからか……』?
「貴様、女に強そうだもんな」
……はい?
「マユとかルイナ……だっけか? そういうやつに鼻の下を伸ばさずに話しているから、ずっと不思議に思っていたのだ」
「普通鼻の下伸ばさねぇだろ。女と話して鼻の下伸ばしてるやつなんてアニメでしか見たことねぇぞ」
「……あにめ……?」
? もしかして『アニメ』って単語知らない?
向こうの世界にしかないのかな?
「ま、まぁ、変なやつだ。それで、話したいことってそれだけか?」
「いや、相談がある」
相談?
キイラの表情からして、そんな甘そうな話じゃねぇな。
「じゃあ俺の部屋で話そうぜ? ここだと誰かに聞かれる。あんまり聞かれたくないんだろ?」
「……ああ」
「じゃ、行こうぜ」
俺はキイラに背を向け、歩き出す。
キイラは何も言わないでついてきた。
部屋に入ると俺は、乱暴に服が置かれてあるベッドに座った。
部屋はまあまあ散らかってる。
「貴様……、整理整頓が苦手みたいだな」
「ああ、なんかやる気になれないんだよな。こういう部屋に入りたくないか? それなら今から掃除するけど」
「貴様の家だ。俺に何か言う権利はない」
「正論だけど……」
「それより、相談するな」
キイラは目を閉じ、一回だけ深呼吸をする。
「妹を捜してほしい」




