第71話 キイラを家に
「…………」
「…………」
無言で見つめ合う母さんとキイラ。
ここは家。
母さんの手には二本の注射器がある。
二本とも血が入ってる。
俺とマユが集めたトルアキナ族の血だ。
ちなみに俺とキイラと母さん以外のやつはそれぞれの部屋に行った。
「アシト、誰?」
母さんがキイラの顔を見ながら俺に訊く。
「キイラってやつ」
「うん、誰?」
ヤバイ、なんか母さん歓迎する気ない。
あのあと結局、家に帰ることになった。
それでキイラも連れて行くことにした。
これは俺の判断。
なんかトルアキナ族のこと知ってそうだから。
「俺はキイラだ」
「うん、名前はわかった。何者?」
「生き物だ」
「うん、生きてるからね。何しに来たの?」
「あ、母さん。それ俺の独断」
ここでやっと母さんが俺の顔を見る。
真顔だ、なんか圧がすごい。
「こいつ、あの洞窟にいたんだ。それでずっとそこにいたらしい。だからトルアキナ族のことは知ってそうだったから……」
「なるほどね。見た感じ長い間トルアキナ族と戦ってたように見えるけど。操者との戦闘経験はないみたいだね」
「当たり前だ。あんなの、戦ったところで負けが確定だ」
いや、お前ならギリ勝てる気がするぞ?
あの『スカー』とかいう、どこからでも水を出すことができる能力があるやつは無理だと思うけど。
「アシトの話だと、貴様らは操者を積極的に殺しているみたいだな」
「へー、アシト、喋っちゃったんだ」
え、なに?
喋っちゃダメだった?
ここに帰ってくる途中で喋っちゃったんだけど。
「俺も貴様らと共に操者を殺したい」
「ごめんね、操者を積極的に殺しているわけじゃないんだ。殺したいのは一人だけだよ」
? そうなの?
初耳なんだけど。
「『全』の操者、ゼルロを殺したいだけ」
……?
『全』の操者なんていたっけ?
「貴様はゼルロか……。俺はフィランなんだが」
! フィラン……!
『風』の操者……!
「へー、フィランね。なんで?」
「理由は言えん。……で、共に行動したいのだが」
キイラもキイラですごいな。
そこまで俺たちと行動したいか?
フィラン倒すためだけに。
「キイラくん……、だっけ?」
「ああ」
「私たち鬼だけど、嫌じゃないんだ」
「鬼を嫌う理由がわからない。だから嫌わない。それより目的を果たすことが大事だ」
「そっかそっか。じゃ、ちょっとついてきて」
母さんはその場で高速移動して、それにキイラがついていく。
残ったのは俺一人になった。
『全』の操者って言ってたな……。
どういう能力なんだろう……。




