第55話 用心
用心って言っても、どうやって用心すればいいんだろう……。
この世界に来て数ヶ月くらいしか経ってないから、どんな戦い方がいいのかわかんない……。
とりあえず斬りかかってみるか。
俺は刀を構え、敵に斬りかかる。
敵は俺の方を見ていない。
ずっとルイナとセトオギロを見ている。
よし、これなら斬れる―――
そう思っていたら、俺の前に巨大な岩が現れる。
岩にぶつかる寸前で俺は止まった。
死亡フラグ言ったからこうなったのかな……?
『これなら斬れる』って死亡フラグ……?
……ってか、こんな岩、切り刻んだり蒸発させたりすればよかった……。
なんで止まったんだろう……。
やっぱり俺、バカなのかな……?
「またボーッとしてるな!」
チルタの声。
その瞬間、俺の下から氷柱状の岩が突き出る。
俺は跳躍して、それを躱した。
空中から斬りかかるか……。
そう思って、空中でチルタに向かう。
チルタは今、ルイナとセトオギロを吹っ飛ばした直後で、完全に無防備だ。
すると、チルタの周りに多量の岩が現れ、それがチルタを覆う。
姿を隠しやがった……。
俺はその岩を全て蒸発させる。
でも、中は空洞になっていた。
あいつ……どこ行った……?
「隙が多いな!」
後ろからチルタの声が響くと同時に、俺の背中に激痛が走る。
俺の背中に氷柱状の岩が刺さっていた。
でも、ギリギリまだ戦える。
俺はとりあえず、チルタから離れる。
しかし、チルタはその場からいなくなっていた。
「だから、隙が多いって」
今度は頭に激痛。
俺の後ろにチルタがいて、俺の頭を蹴っていた。
俺は吹っ飛ぶ。
……痛いな……。
「アシト!」
今度はルイナの声が聞こえる。
俺の前にルイナがいた。
めっちゃ血まみれ……。
しかも、顔まで傷ついてる……。
見た感じ、手の骨も折れてそう……。
「ルイナ……」
「ちょっと待ってて!」
ルイナは腰に手を伸ばし、包帯を出す。
そして俺の背中から岩を外し、包帯を巻く。
「ルイナ……俺はこの程度大丈夫だから……ルイナ……自分のために使え……」
「ヤダ!」
え……『ヤダ!』って……。
今度は黙々と俺の頭に包帯を巻くルイナ。
優しいな……。
こういう人が増えてほしいんだよな……世の中に。
「とりあえず、包帯は巻けたよ! 無理そうならここで休んでて」
「いや、行く」
「……でも―――」
「ヤダ!」
今度は俺がルイナの言葉を使う。
なんか申し訳ない……。
でも、ここは戦場だし、そういうのもいいよね……きっと……。




