第53話 地の操者、チルタ
チルタ……?
ってか、この感じ……どこかで……。
「―――風の操者、フィランだ」
……思い出した。
あのときのこと。
圧倒的な力の差を思い知ったあの日。
俺らはあいつに何回も攻撃したが、あいつは無傷だった。
目の前にいる敵はあいつと同じくらい強いってことだよな?
……正直、勝つ未来が見えない……。
『――ト―――アシト!』
頭の中に母さんの声が響く。
『今、目の前に操者がいるでしょ?』
母さん……この状況がわかるのか……?
「あ、ああ……」
『そいつは『チルタ』。見てわかると思うけど地の操者だよ? 勝つ自信ある?』
「いや、ない……。むしろ負けるかも」
『大丈夫。アシトは五万年修行してるから』
そっか、修行してるから―――
―――って、五万年も修行してないよ!?
『私の技で、時間を狂わせたの。アシトたちの修行している時間を五万年って設定したから、アシトたちは五万年修行したことになる』
ええ……。
そんなこともできるの……?
母さんヤバすぎでしょ……。
『だからさ、技が強くなってるじゃん。村を消し炭にしたし、私の人形を殺した。五万年の成果だよ』
そっか……。
あの技が使えるようになったのは母さんのおかげか……。
逆に五万年修行しないとあの技を習得できなかったってこと?
『今のアシトなら負けることはない。勝つかはわからない。相打ちかもしれない。誰かが死ぬかもしれない。用心して。私は今そっちに――――』
母さんの声が急に聞こえなくなる。
何があったんだ……?
「ボーッとしてたけど、何か考えてたのか?」
チルタとかいうやつが俺を興味のある目で見る。
何も考えてねぇよ……。
「いや、ただボーッとしてただけだ」
「そっかそっか。なめられたもんだなぁ! ムカつくな! そういうやつ!」
チルタはこっちに向かってくる。
めっちゃ速いけど、見えないことはない。
俺は刀を素早く抜き、跳躍する。
「剣炎!」
片方の刀の刀身が炎になる。
その炎を見て、敵は笑う。
「ハハハ! 楽しいな! 俺を炎で殺す気か! 俺に炎が効くと思ってんのか!」
敵は俺に殴りかかる。
「そう思っているなら、喰らってみてください」
俺の頭の後ろからマユの声。
マユも跳躍していた。
「火石」
刹那、チルタの動きが止まる。
すると、敵の右脚が膨らむ。
その隙にマユは短刀でチルタに斬りかかった。
何があったんだ……?
「……バーカ!」
チルタは急に動き出して、マユの斬撃を躱す。
「俺にその技が通用すると思ってんのか!?」
だから何があったの!?
説明して!?




