第5話 鬼の過去
「アシトくん、家こっちの方向なの?」
帰り道、俺はルイナと帰っていた。
ルイナの尻尾がめっちゃ気になる。
どんなふうに身体にくっついてるんだ……?
見てみたい……
……あ、別に変態的な意味じゃなくて。
そんなことよりルイナの質問に答えなきゃな。
家か……分からない……
でも適当に答えなきゃ……
「あ、ああ。変な森みたいなところに住んでるんだ」
「へー! 私の家は住宅地だからなー。そういう自然に囲まれて生活したいなー!」
なんでルイナはこんなに俺と話してくれるんだ……?
この世界では俺は嫌われてるはずなのに……
きいてみよ。
「あのさ、ルイナ。なんでそんなに俺と関わってくれるんだ……?」
「……納得できないんだよね」
ルイナは立ち止まり、下を見て言う。
そんなに重い話なのか……これ。
「なんで『鬼』って理由だけで差別されるの。しかもさ、しょうがないじゃん」
ルイナは怒ったような口調で言う。
普通ならちょっと同情するんだけどさ、俺何も事情知らないんだよ!
「アシトくんもそう思うよね、逆にみんなが悪いって」
「え? あ、あの……」
「? ……まさか、昔鬼に何があったのか分からない?」
「……ああ……」
この世界ではヤバいだろうな。
自分の種族の歴史知らないって。
でもルイナは俺に向かって優しく言った。
「話していい?」
「ああ、頼む」
「昔ね、鬼は食べるものがなかったんだ」
食べるものがなかった……?
貧しかったのかな……
「鬼は昔からなぜか恐れられていて、市場に行っても何も売ってもらえなかったの。住むところも制限されて、暗い洞窟に住んでたらしい。食べるものがなくなった鬼はそこら辺にいる虫とか食べてたの」
確かにそれは酷い差別だな。
俺が転生する前より酷い……。
「そして最近、鬼の差別が問題になったんだ。それで鬼の最低限の食事とみんなのところに姿を現す権利が与えられたの」
最低限の食事とみんなのところに姿を現す権利……
それだけか……!
酷すぎるだろ……!
「みんな『鬼は昔から変なものを食べていた。しかも近づくと菌が伝染るから近づくな』って言ってるの。意味分かんないよね!」
ルイナは拳を強く握り、怒ったように言う。
ルイナ……
「……! 私このあと用事あるんだ! ごめん! アシトくん! 先帰る!」
ルイナはそう言い、腰を低くした。
次の瞬間、ルイナはその場から消えていた。
高速移動したのか……?
まぁ、俺も帰るか……って言いたいけど帰り道が分からない。
異世界ってことは高速移動とかできるんだよな、俺でも。
でもそれじゃあ家見つけられないし……
……あ、そうだ。いいこと思いついた。
俺は足に力を込め、跳躍する。
うお! めっちゃ高く跳ぶ!
上から探す作戦だ。
さてと……俺の家は……あった!
よし! あそこまで一瞬で行ってやる!
俺は地面についた瞬間、家のある方向に向かって走った。
めっちゃ速い。
そのせいで風が痛いんだが……
差別、本当によくないですよね。なぜなくならないんだろう……