第41話 また話
「アシト」
母さんが俺の部屋のドアをノックする。
あれから数日後。
特に母さんから何も言われてなかったので、俺らはそれぞれの好きなことをしていた。
まぁ、俺はただムルノと遊んでただけだけど。
「ああ、入ってきていいぞ」
俺が言うと、ドアが遠慮がちに開く。
そこから母さんが入ってきた。
「話があるの」
……またか……。
「今度は何だ?」
「この前さ、『トルアキナ族はアシトの血を欲しがってる』って言ったじゃん?」
ああ、そういえばそんなこと言ってたな……。
「あれさ、ちょっと嘘ついたの」
……実の息子にそんな嘘をつくのか……。
ってかどんな嘘なんだろう……。
『本当はアシトの血なんか誰も欲しがってませーん』ってやつがいいな……。
痛いの嫌だし。
「『血』って言ってもね、正確には『新しい血』なの」
新しい血……?
意味がわからないんだけど。
「アシトも向こうの世界で勉強したでしょ? 血はどこで綺麗にされる?」
血を綺麗にする場所か……。
……心臓だ!
……なんで俺はこんな簡単な問題がわかって喜んでるんだろう……。
小学生でもわかる問題だよな……?
一応向こうの世界で大学受験勉強してたのに……。
「心臓……?」
「正解。だからトルアキナ族はアシトの心臓を食べることが目的なの」
母さんがニッコリしながら俺に言う。
いやいや、母さん。
アナタめっちゃ怖いこと言ってますよ?
心臓を食う……?
それって俺死ぬってことだよね……?
「これだけを伝えたかったの」
「そ、そうか……」
「……アシト、まだわからないこといっぱいあるでしょ?」
母さんが俺に顔を近づける。
……キモイこと言っていい?
めっちゃかわいい、母さんが。
「あ、ああ……」
「へー、例えば『俺の父親って誰なんだろう?』とか『なんで母さんはこんな若いんだろう』とか」
……確かに父さんのことについては疑問を感じたことあるな。
フィランとかいうやつだっけ?
そいつが『恨むならテメェの父親だな』みたいなこと言ってたし。
母さんのことはそんな疑問感じたことないな……。
確かになんで母さん、こんなに若いんだ……?
「まぁ、思ったことある……」
「でしょ? 今度教えてあげるよ」
母さんはクスッと笑う。
しつこいけど言うね、母さんかわいい。
「……それと」
母さんは続けて言う。
「明日から本気で修行するよ。しかも、いつ敵が出てくるかもわからない。用心してね」
母さんはそう言い残し、俺の部屋から出ていった。
明日から修行か……。
急展開すぎるな……。
この世界に来ていきなり学校行って、化け物と戦って、みんな死ぬ。
本当に現実かな……。
俺はそう思いながら刀を触った。




