第4話 自己紹介
「よーし、みんなようこそ!」
そう言って入ってきたのはタヌキみたいな男。
今気づいたけど、全員刀を背負っている。
この世界は刀を背負うことが義務なのかな……?
「僕は担任のナラヤだ。担任になったからには、君たちが立派にするよ! そして、君たちをタハから護るよ!」
……はい? タハ……?
なにそれ…… この世界の専門用語?
全く分からないんだけど。
「じゃあ自己紹介しよっか! じゃあ……出席番号の逆からいこっか。ヲスホラくんからね!」
ヲスホラ……!
すげぇ名前……!
そんなことを思っていたらゾンビみたいなやつが立ち上がり、皆の前に立つ。
「ヲスホラです。ゾンビです。好きな食べ物はリルテナです」
リルテナ……!
なにそれ! 俺知らないんだけど!
ヲスホラという男はそのまま帰る。
よし。名前、種族(?)、好きな食べ物を言えばいいんだな。
それさえ分かればもう何も怖くない!
「最後、アシトくん」
よし、俺だ!
落ち着いて立って、落ち着いて歩く。
「えっと……アシト……です。鬼……らしいです……。好きな食べ物は……寿司です……」
みんな俺の話聞いてない……
そんなに嫌われてるのか、俺。
「……アシトくん……」
ルイナが控えめに手を挙げる。
質問かな……?
「『スシ』って……何……?」
……え? 寿司知らないの!?
あれだよ!? 米に刺身乗ってるやつ!
「あれだよ……刺身乗ってるやつ……」
「? 『サシミ』……?」
マジか! 刺身もわからないのか!?
この世界に刺身っていうものがないのか……?
ってことはもう寿司食えないの!?
一ヶ月に一回は食べに行ってたのに……。
自分の楽しみだったのに……。
「……もういい、座って」
先生が口調を変えて言う。
先生にまで嫌われてるのか、俺。
座ろ。
自分の席に向かってトコトコ歩いていると、ルイナが心配そうな目で見ている。
普通の精神のやつなら、今までやられてきたことで泣くな。
でも俺は気にしない!
親にすら愛されなかった俺にとってはこんなのカスだ!
威張って言うことじゃないけど。
「教科書は明日配る。今日は解散だ!」
先生が口調を戻して言う。
あ、もう解散なんだ。
みんなが立ち上がった。
学校来た意味が……。
「アシトくん! 一緒に帰ろ!」
ルイナが俺の机に手を乗せながら言う。
優しい……
「あ……ああ……」
「よし! アシトくんの家ってどこらへんにあるの?」
家……どこだろう……
待って、マジで分からない!
帰れないじゃん!
先生にも嫌われるって……かわいそ……