第33話 本当の子
一瞬、何も感じなくなった。
ただ母さんに見られていた。
どういうこと……?
アシトじゃない……?
「ごまかさなくていいよ。全部わかってる」
母さんが俺の隣りに座る。
俺は母さんの目を見る。
「えっと……」
「多分『転生』してきたよね?」
夢から覚めた気がする。
何を言えばいいのかわからない。
「……本当に……転生してきたんだね……」
母さんがため息をつく。
え……マジで……何すればいいんだろう……。
「……いつから……転生したの?」
母さんが不意に俺に訊く。
「えっと……学校に行く日から……です……」
「……そうだよね……その日からだよね……」
母さんはまたため息をつく。
俺は何をすればいいんだろう……。
「……ってか、すごいね。今までよくこの世界についていけたね。タハとかトルアキナ族との戦闘でよく死ななかったね」
「はぁ……すみません……」
「え……別に怒ってるわけじゃないよ?」
母さんはキョトンとした顔で俺に言う。
「え……でも……」
「……いや……ね……」
母さんの声が小さくなる。
やっぱり怒ってない……?
そう思ってたら母さんが急に俺を抱いた。
「帰ってきてくれて……ありがとう……!」
母さんは、泣いていた。
『帰ってきてくれてありがとう』……?
「えっと……どういうことですか……?」
「あ! そうだよね!」
母さんは俺を放し、俺の目を見る。
目には涙がめっちゃたまっていた。
「…………」
「……?」
母さんは何も言わない。
「……なんて言えばいいんだろう……」
母さんはまた涙を流す。
めっちゃ気まずい……。
「アシトが生まれたすぐにね、悪いやつがアシトに技をかけたの。『アシトの精神を現世に送る』って技で……」
精神を現世に送る……?
俺の心を現世に送るってこと……?
現世って俺が転生する前に住んでたところだよな……?
「それでね、それからアシトはゾンビみたいになんにも興味を持たなくなっちゃったの」
……? 待てよ……考える……。
もともと俺はこの世界にいた。
でも俺の心が現世にいった。
で、俺はどっかの誰かさんの身体に入って、そいつの身体で生活していた。
そのあとなぜか知らないけど、もう一回この世界にきた。
……ってことかな?
「……それとアシト、一つ覚えておいて」
母さんが俺をまた見る。
今度は笑顔だった。
「アシトみたいに転生した人は結構この世界にいるんだけどね、その人たちはみんなから差別されてるの。だからアシトが転生したってことは内緒ね?」
母さんが口に人差し指を当てる。
……転生した人は嫌われる……?
鬼も嫌われてるんだよね……?
ってことは俺、めっちゃ嫌われるやつなの?
「じゃ、ちょっと遅れたけどお祝いしょっか!」
母さんが部屋から出ていこうとする。
「あ……あの!」
俺は立ち上がり、母さんに言う。
母さんは振り向く。
「……俺は……これから……どういう風に生活してけばいいんですか……?」
「……まず、私に敬語使うのはやめて」
母さんは真剣な表情になって言う。
「それと、今まで通りでいいと思うよ?」
母さんは笑顔になって一階へ降りていった。
……転生する前……俺……ゾンビみたいだったんだ……。
なんにも興味持たなかった……。
……? あれ?
おかしくない……?
俺が転生して一日目、学校あったよね……。
そのとき俺が『学校って何?』って言ったとき、母さん『アシトが行きたいって言ったんだろ?』みたいなこと言ってたよね……?




