第307話 終向決戦復讐編 〜2〜
フィランはマユの短刀を躱し、マユの片腕を掴む。
そのまま握り潰すつもりだった。
しかしそれより前にマユは余った片方の手に握っているナイフで逆にフィランのその腕を切断しようとする。
フィランは咄嗟にマユから腕を放してその斬撃を躱す。
マユは双方のナイフを器用に操っていた。
片方に隙が生まれれば、もう片方でその隙を埋める。
どう対処しようか考えているフィランだったが、その思考は中断しなければならなかった。
ハナも戦闘に参加し始めたからだった。
大量の桜の花びらのようなものがフィランに向かう。
これに触れれば肌が切れるということを知っていたフィランはその桜を躱すために、後ろに退く。
マユはそんなフィランを追いかけた。
桜はマユを避けてフィランに向かう。
マユは桜のことを考えずに攻撃できるが、フィランは桜のことを考えた上でマユと戦わなければならなかった。
――厄介だな、この桜
――まぁいい
――マユとか言うこの女は正面から斬りかかってくるが、ハナは違う
――この桜を操ることに集中してる
――直接攻撃してこねぇなら、順番に殺すだけだ
フィランは桜を躱し、爪でマユの首を裂こうとした。
マユはナイフでその腕を切断しようとするが、フィランの行動が唐突だったこともあり、間に合わない。
フィランが勝ちを確信したとき、背後に気配を感じた。
それは今まで感じたことのあるものよりも恐ろしく、今すぐに対処しなければならないと脳が叫んでいる。
フィランはマユを殺すことを中断し、後ろに目をやる。
予想外だった。
ハナが刀で斬りかかってきていたのだ。
桜は消えてるわけではない。
つまり、ハナは桜を操りながら自分も動いているのだ。
フィランは咄嗟に身体を動かしたが、背中を軽く斬られた。
一度二人から距離を取り、背中に手を当てて自らの出血量を確認する。
「……なるほどな、やっぱ成長してるな。ハナが裏切ったってこともこっちとしては痛かったってことか」
「……しないんですね」
マユが喋る。
その声はさっきよりも落ち着いているような気がした。
「超速再生、しないんですね」
「あぁ? なに言ってるんだ?」
「あなたは言ってましたよ、『操者なんだから超速再生くらいはできる』と。私たちが最初に会ったときです。そのときあなたは確かに超速再生をしていました。今はしないんですか? 斬られたんですよ?」
「…………」
「……やっぱりできないんですね。その理由はわかりませんが、安心しました」
マユはナイフの切っ先をフィランに向ける。
このときになってやっと、フィランは目の前にいる少女二人が強い存在だと気づいた。




