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第304話 全ての始まり、邂逅編 〜3〜

 しばらく経ってから、ムルノはムサーナを、キトナに会わせた。

 キトナも少しは仲間の死という絶望から回復していて、少しだけ笑顔を見せるようになった。


 キトナはムサーナを敵だとは思わなかったみたいで、笑いながら家に招いてくれた。

 そこで食事をとり、軽く自己紹介したあとに、例の話になった。


 キトナがその生命体を創造したこと、それをゼルロが悪用していること、そのことすべてをキトナは話した。

 いつも通りの口調だったが、それでも自分の過ちを話すことはつらかっただろう。


 ムサーナはそのことを察した上で、キトナの話をよく聞いていた。


 話が終わったのは、数時間後だった。


 ムルノとムサーナの二人はキトナの家から出て、ムルノの家へと帰った。


 「……ムルノ、ありがと」

 「私はなんもしてないよ」

 「ううん。私を招いてくれて、キトナにも会わせてくれた。それが嬉しいよ」

 「ならよかった」


 ムルノも笑顔になることができた。

 それはムサーナのおかげだった。


 ムサーナも自分と同じ能力を使える。

 『無』にできるのだ。

 もっとも、それには代償が生じるが。


 自分と同じ能力の者と知り合い、仲間意識が芽生えていた。


 だからか、ムルノは気がつくとムサーナのことを『ムサーナお姉ちゃん』と呼ぶようになっていた。


 「――そういえばさ、なんであの力について知りたいの?」


 ムルノが訊く。

 後から思えば、訊かないほうがムルノにとっては幸せだったかもしれない。


 「……あの力、欲しいんだ」


 ここで答えないほうが、ムサーナにとっても幸せだったかもしれない。


 ムサーナの言葉で、ムルノは動きが止まる。

 それでもムサーナは喋り続けた。


 「私は、あの力が欲しい」

 「なに言ってるの……? ちょっと待って、理解できない」

 「理解して。私はあの力が欲しい。あの力を手に入れたい」

 「……つまり……?」

 「ゼルロに、あの力をもらう」


 しばらくは沈黙だった。

 二人とも動かないし、喋らない。

 ムルノにとってはその時間がとても長く感じた。


 「もちろん、仲間になるつもりはない。ただあの力が欲しいだけだから」

 「なんで……?」

 「強くなりたいんだ。私さ、親を目の前で殺されちゃったんだ。私がタハに襲われちゃったときにね、親は私を庇ってくれた。そのときに死んじゃったの。だからさ、強くなりたいの。もうこれ以上、なにも失わないために。だからゼルロのところに行く」

 「自分が何言ってるかわかってるの……? ゼルロになにされるかわからないよ……?」

 「知ってる。実際に私の友達が、ゼルロの手下になった。多分、あの力を手に入れると記憶がなくなっちゃうんだ、大切な。何体もああいうやつらを倒してきたから、わかる」

 「……やめてよ……」

 「……もう、寝るね」


 ムサーナはムルノの顔を見ないまま、寝室へと向かった。

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