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第303話 全ての始まり、邂逅編 〜2〜

 ムルノはとりあえず、手料理を振る舞った。

 気分が沈んでいるため良い料理はつくれないかと思ったが、それでもムサーナは喜びながら食べていた。


 「――ごちそうさまでした。すっごく美味しかったよ」


 丁寧に手を合わせてムサーナは言う。


 ムルノがムサーナに質問をしようとしたとき、ちょうどムサーナが喋り始めた。


 「……ねぇ、このへんにさ、キトナって女の人いる?」


 突然仲間の名が目の前にいる少女の口から出たので、ムルノは驚く。

 そしてこの少女が本当に敵ではないかを確かめたいという衝動に駆られた。


 ゼルロの件もあり、キトナの名が出たということは自分たちの敵かもしれないと思ったからだ。


 『左手の甲に文字が刻まれている』というゼルロの仲間に共通していることはないが、それでもスパイとしてこちらに来たのかもしれない。


 「……知らないけど」


 取り敢えずムルノはそう答えることにした。

 ムサーナはその言葉を来いて残念そうな顔をする。


 「そっか、やっぱり簡単には会えないかー……」

 「その人となにか関係あるの?」

 「ちょっとね。さっきのやつについて聞きたくて」


 さっきのやつ――右頬に紋様が刻まれた男のことだ。


 今のところ敵かどうかはわからないが、間違いなくゼルロには関係しているということがわかった。

 その男もゼルロと関係していたと考えられたからだ。


 「知ってる? あの人ももとはただの人だったんだよ?」

 「……どういう意味?」

 「ゼルロっていう人がね、あの力を与えたの」


 とうとう例の男の名が出た。

 その言葉に反応することは必死に隠したが、表情には出てしまっていると自分でもムルノは気づく。


 「キトナって人がそのことについて知ってるらしいからいろいろと聞きたかったんだけど、いないのかー……。またさがすとしますか」


 ムサーナは椅子から立ち上がる。

 だがそこから動くわけでもなく、ただムルノを見つめた。


 「……知ってるでしょ? ゼルロのことは」

 「……『知らない』って言っても意味ないよね?」

 「気づいてるよ。さっきその名前が出たら表情変わってた」


 とうとう戦闘になるかと思ったムルノは、いつでも攻撃できるように相手への警戒のレベルを一段階上げる。


 ムサーナがムルノに手を伸ばした。

 そのまま攻撃が来ると思ったが、ムサーナはムルノに手を差し伸べていた。


 「私はあの力について知りたいだけ。ゼルロの味方じゃない。多分あなたもそうでしょ? ゼルロの味方じゃないっぽいよね?」

 「…………」

 「むしろ敵でしょ? 私のさがしてるキトナって人も、きっとゼルロの敵。だったら私もキトナの味方になるから、ゼルロの敵になる。だったらさ、私たち仲間じゃん」


 ムサーナの言っていることは理解できる。

 だが、本当に信用していいのかとムルノは悩んだ。


 しかし、この少女が自分たちの敵ではないと確信している。

 どこからその自信が湧き上がっているかはわからないが、なぜだかそう断言できた。


 「だからさ、しばらくここに住ませてくれないかな? 私、家なくて」

 「……うん、いいよ」


 ムルノはムサーナの手を握る。


 「それじゃ、よろしくね、ムルノ」


 ムサーナはニッコリと満面の笑みを浮かべた。

 ムルノもそれに倣い、笑った。

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