第300話 終向決戦邂逅編 〜6〜
再び血を吐くムサーナ。
セトオギロからの力を『無』にした分の代償だった。
セトオギロもムサーナも、互いに歪む視界に耐えている。
想像以上の苦痛と睡魔がセトオギロを襲っているが、自らの頬を爪で引っ掻き、眠らないようにしてる。
ここで眠ると、待っているのは死ということをわかっているからだ。
「お前……! まだ耐えるのか……!」
「まだ……死にたくないもの……!」
互いに血と汗を流す。
「――セトオギロ! そのまま!」
聞こえてきたのは、ムルノの声。
見ると、ムルノがムサーナに体当たりをしていた。
両腕を失っているムルノと目眩に襲われているムサーナ。
二人は同時に倒れ、そこから立ち上がらない。
すぐに立ち上がることなど、できなかった。
倒れたムサーナ。
これは絶好のチャンスだった。
ムサーナのところまで行き、そのまま頭を踏み潰そうとする。
そうしようと片脚を上げようとしたときだった。
心臓を握りつぶされているような感覚がセトオギロを襲った。
次の瞬間には大量の血を吐いていた。
両膝を地面につき、口と胸を手でおさえる。
これはムサーナの攻撃ではない。
セトオギロの『過去の行い』の代償だった。
セトオギロは、アシトたちと出会うまでは人の命を吸収して生きていた。
それが、死神の生きるために必要なことだった。
アシトたちと出会い、セトオギロはそれができなくなった。
今までなんも感じていなかった人の命が、大切に見えた。
そうさせたのは、アシトだった。
アシトの行動、考えが、セトオギロを勝手にそうさせていた。
タハやトルアキナ族はでは『人の命』の代わりになどならない。
主な養分である人の命を吸収しなくなったセトオギロは、いつか栄養が尽きることになっていた。
栄養が尽きる――つまり『死』である。
跪いているセトオギロを、ムサーナは蹴り飛ばす。
地面に叩きつけられる。
次には、ムサーナの刀によって腹を刺された。
大きく呼吸をしながら目を開くと、ムサーナが自身の腹を刺している。
そんなムサーナも肩で息をしている。
互いに死の一歩手前らしい。
セトオギロはそんなことを思いながら、動かない脚を動かそうとする。
「もう、いいよ、頑張らなくて。そのまま――!」
セトオギロから刀を抜き、再び刺そうとするムサーナ。
「――待って!」
背後から聞こえる声。
振り向くと、そこにはムルノが立っていた。
「最後は――」
「――私たち『無』の操者で終わりにしよう!」
年末年始ですが、作者の予定が勉強勉強勉強勉強勉強なので、少しの間投稿をお休みさせていただきます。




